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酉島伝法「るん(笑)」感想~阿保でカオスの世界になったとき、あなたならどうしますか?~

・同じ阿呆なら踊らにゃ損損

コロナ生活も三年を終えようとしている。

SARSの時のようにすぐに収束するだろうと安易に考えていたが、あっという間に世界的に大流行。
未知の感染症に怯える日々。
長引く自粛生活に、マスクをしていない人を注意し、地域以外の場所へ移動する人を見張ったりと...正義感からくる自粛警察にも怯える日々へ。

早くワクチンをー!治療薬をー!
それまでに自分たちでできることは何?

大阪知事がうがい薬がいいと発表すると買いに走り、ゴマ油をマスクに塗るといいと聞くと...ほんとうに??
眉唾もんだねー!でも試してみてもいいかもと思ってしまうわたしがいた。

今ならわかる母の「みのもんた教!?」
みのさんからバナナがいいと聞くと西へ。
みのさんからココアがいいと聞くと東へ。

「からだにいい」「癌にならない」
健康でいたい!!

踊らされているのか?
自らが躍ることを楽しんでいるのか?

躍る渦中にいると躍る楽しさで、もっともっと!もっとくださーい。
でも引いてみると阿保でカオス?

阿保でカオスの世界になったとき、あなたならどうしますか?

・<簡単あらすじ>

家畜の仔が飲む牛乳や、動物の恐怖が残留したままの未除霊の肉を食べることは野蛮だとされる世界。
逆に免疫を高める手作り水、ミカエルという希少な果物の濃縮エキスに...病気になれば何種類もの野菜と果物を煮込んで濾したものに尿を混ざた飲み物が良しとされる世界。
科学的なことは否定し、血液型や星座占いを信じ、胴体の幅三十メートル、尾の先まで全長十五メートルに及ぶ長大な龍を奉り祈ることで病気が治せると信じてる世界。

スピリチュアルと科学が逆転した三編からなる連作短編集で、
土屋の妻が物語の媒体となってつながっている。

結婚式場に勤める土屋は、38度の熱が続き、とうとう場末のヤクザイシから解熱剤を買ってしまう。
この世界では薬剤師は怪しいクスリの売人の位置づけ。
妻からは、どうして免疫力の気持ちを考えてあげれないのかと泣かれ離縁される土屋。

会社終わりのお疲れさんを、「お憑れさん」とあいさつする世界。
熱でフラフラ状態の土屋描写は、コロナ感染した人の話を聞いているようでしんどくて怖くなった。

とうとう三十八度が平熱になっちゃった世界にわたしなら耐えられるのだろうか...熱が出ると10分おきに体温を測るわたしには無理だな( ;ㅿ; )

・『るん(笑)』ってどういう意味?

土屋の元妻の母が病気になり、
「ごめんね。おかあさん、こんな病気になっちゃって」と謝る母に対し、

「だめじゃない、そんな波長の悪い言葉使っちゃ。ヤマイダレ(病)なんか取って、丙気(へいき)って言わないと。そうすれば平気になってくるでしょ。」(本文より)

「病は気から」と言われても...ぜんぜん平気になれませんよねお母さん。

だから病気の呼び方だけでもやさしく?
癌という言葉を忌嫌い、蟠にしたが、邪気を祓う力を秘めた言霊パワー「るん」と呼ぶようになる。

癌→蟠→るんから...るん(笑)
悲観スパイラルを作らないように必ず笑うをこめて『るん(笑)』

笑おう健康法ですね♪
笑おう、笑おう(≧∇≦*)
まって、まってーー!
電磁波が恐ろしいのでテレビもネットもできない世界で、生きるのに必死なな人たちから笑いをどう取り入れるのさ。

わたしなら『すん(泣)』だよーん( ;ㅿ; )

・なぜスピリチュアルと科学が逆転したのか?

住人は減り手入れされずに崩れゆくマンション。
龍が人の身代わりになった伝説。
真っ暗な道をライトをつけて登校。
朝日は昇っていかず、潰した苺みたいにばらけて消えていく。
その場所は祟られると噂され地図に載っていない秘密の場所。
そこで見つけたものはブルーシートと猫の死骸?

じわじわと襲う予感。
じわじわ明かされる不穏さは...放射能汚染された世界が描かれていたのではない?
どでがい龍は放射能に汚染された牡蠣が強大化したものなのかな。

もう踊らなにゃ損損。
危ないとわかっていても?逃げるのではなく居続けることで昇華させようとする人々の姿が、持たなくてもいい正義感のように見えてしんどい。

踊らされているのか?
自ら躍っているのか?

はぁーしんどい。
しんどいのに、ちょいちょいクスっと笑える描写はカオスか天才かー!

#読書の秋2022 #るん

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