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桐野夏生「真珠とダイヤモンド」感想~狂熱、悶絶、そして呆然、からのなりたい自分~

・お金って怖いわー

朝ドラ「舞いあがれ」では、悠人兄ちゃん(横山裕)はリーマンショックを予知し一躍天才投資家と呼ばれるようになるが...

インサイダー取引を行ってしまい逮捕されてしまう。
株=お金って怖いわーー!(ll゚Д゚)怖ァ・・


ドラマの世界だけではなく、バブルが弾ける以前の日本で本当にあった話。

好景気で株式投資がブームになり個人が株の売買を始めるようになる。
うんうん、それまでは素人が手を出しては危ないイメージがあった。
得をしても損をするはずがない、イケイケの時代だ。
普通の会社員だった親戚のおじさんもNTT株を買うと勇んでいたもの。

負け知らずの時代に現れたのが、「兜町の風雲児」と呼ばれた男。
イケイケだった男は、毎夜、銀座の高級クラブでお金を湯水のように使っていたが違法な資金を集めて逮捕され、そして最期は六畳一間のアパートの火災で死んだ。
株=お金って怖いわーー!(ll゚Д゚)怖ァ・・


本書は、バルブの時代に投資と野望と金に踊らされた若者たちの物語。

・<簡単あらすじ>

1986年春。二人の女が福岡の証券会社で出会った。一人は短大卒の小島佳那(かな)、もう一人は高卒の伊東水矢子(みやこ)。貧しい家庭に生まれ育った二人は、それぞれ2年後に東京に出ていく夢を温めていた。野心を隠さず、なりふり構わずふるまう同期、望月昭平に見込まれた佳那は、ある出来事を契機に彼と結託し、マネーゲームの渦に身を投じていく。  
その後、バブルに陰りが見え始めた頃、若者たちの運命が狂い出す……。

・日曜劇場でドラマ化希望

面白かったーー!
つづきが気になって気になってーー!
上下巻だったにもかかわらずイッキ読みしちゃった。

「半沢直樹」などが放送された日曜劇場でドラマ化📺してほしい熱量だった。

好景気で株式投資がブームになり個人が株の売買を始めるようになった話と、まだまだ家庭も社会も店も学校も、男が上で女を見下していた時代が鮮やかに描かれていた。

・バブル終幕間近だったころの、私の会社体験談

バブル真っ只中ではなかったが、新社会人となった私の最初の仕事は、課員の湯飲みを覚えることだった。

うそでしょー!若い方は信じられないでしょうね。
今思えば馬鹿らしいけど、私は疑うこともなく指示に従ってた。
仕事のひとつだと思い込んでいたから。

また女子社員は、男性社員のお嫁さん候補も暗黙の了解だったわね。
そして男は、体育会系の組織についていけないものはいじめられる。

・バブルの申し子だった本書の登場人物たち


証券会社に勤める貧しい家に育った二人の女。
佳那はお金を稼ぎたい。
水矢子は大学に行きたい。

佳那は、がむしゃらに働くのに枕営業だといわれ成果を認めてくれない。
水矢子は自分を利用しようとする毒親から逃れるためにお金を貯めたい。

そしてもう一人の重要な登場人物の望月は、顔色ひとつ変えず嘘をつけ空気を読まず、野心も隠さない。

この望月って男が嫌なやつでねー。
桐野さん、キィィー!となる、ほんといやらしい人間を描くのが上手いわ。

利己的で思いやりのない礼儀知らずの無礼な男なのに、暴走という名の行動力に惹かれ、仕事を続けたかったのに佳那は望月と結婚し専業主婦になる。

女性が働き続けるのはまだまだむずかしい時代。
なので私も佳那のように、結婚を機に退職。

バブルで仕事が上手くまわるにまわる。
仕事も私生活もイケイケな望月と佳那。

「兜町の風雲児」と呼ばれた男がモデル?「兜町の幸運児」とも出会い、ますますイケイケ生活へ。

でも、祭りは永遠には続かない。
バブルが弾け、祭は終わる...。

三人の行く末を見守り思う。

信頼を失うことは、孤独の淵に追いやられることでもある。(本文より)

・これからの私

本書を読み、信頼を寄せ噛みあうことのむずかしさを知った。

一度は退職したが、再就職し正社員として今の会社に20年あまりの私。
本書の中に登場するような、家庭も社会も店も学校も、男が上で女を見下していた時代からは緩くはなってきた。
でも、正直まだまだなところもある。
働きながらの子育て、介護に孤独を抱える人もいるだろう。
今までの築いてきた信頼を、結婚、子育て、介護等で失ってしまうのではなかと不安な人もいるだろう。

だが、けっしてひとりにはさせないために、私はサポートを惜しみたくない。
孤独にさせないためのサポートが、私なりの今後の課題。

#わたしのキャリア


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