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カスタマージャーニーから紐解くNetflix「地面師たち/Tokyo Swindlers」の大ヒット

2024年夏、Netflixの日本オリジナルドラマ「地面師たち/Tokyo Swindlers」が驚異的な視聴数を記録しています。7月25日から配信開始され、最新のランキング(7月29日~8月4日)では国内1位、海外のTV Non-Englishでは3位と国内外で大きな話題を呼んでいます。

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新庄耕さんの同名の小説が原作で、2017年に実際に起きた積水ハウス地面師詐欺事件がモデルになっていると言われています。

私は昨日から見始めたところ、面白くて2日で見終えてしまいました。見始めたら止まらない、ここまで多くの人を引き付ける「地面師たち」の魅力や成功の秘密は何なのか、カスタマージャーニーの観点から考えてみたいと思います。

1. 認知段階:爆発的な関心を生み出した要因

「地面師たち」の成功は、まず「地面師」というあまり知られていない職業(ではなく犯罪です!)と、数十億という大金を大企業がだまし取られたという実際に起きた事件を題材に取り上げたことが大きな要因と思われます。これまでドラマでほとんど取り上げられたことのないこの題材は、視聴者の社会の闇への興味を刺激しました。

SNS上での口コミの連鎖も、この作品の認知度を高める大きな要因となりました。ネタバレを避けつつも興味を喚起する巧みな言及が広がり(例:人はたくさん死ぬけどネコは死なない)、自然発生的な話題性を生み出しました。Netflixが作るドラマのクオリティや出演者の演技力への信頼感も加わり、優れた作品であることへの期待が高まっていきました。

2. 興味・検討段階:期待を超える作品像の構築

予告編や初期の反響から、「地面師たち」が詐欺金額が莫大で(100億)、激しい展開を見せる作品であることが示唆されました。社会派要素と娯楽性の絶妙なバランスは、幅広い層の興味を引きつけました。さらに、豊川悦司さん、綾野剛さん、山本耕史さん、小池栄子さん、リリー・フランキーさん、ピエール瀧さん等豪華キャストや意外な出演者(染谷将太さん ←「ブラッシュアップライフ」の福ちゃん!)の組み合わせも大きな話題となりました。実力派俳優たちの化学反応や、地上波では見られない俳優の起用は、視聴者の期待を一層高めることとなりました。

3. 視聴決定と初期体験:即座の没入感がもたらす衝撃

視聴を開始した瞬間から、「地面師たち」は視聴者を強烈に引き込んでいきます。冒頭のハンティングシーンは、「あれ? 見るドラマを間違えちゃったかな?」と一瞬意外に思うものの、予想を超える衝撃的な導入となります。豊川悦司さん扮するベテラン地面師ハリソン山中が綾野剛さん扮する辻本拓海を地面師に勧誘するシーンから、詐欺が進行していくシーンなど、中だるみのない息をのむような展開が、視聴者を離さない要因となっています。

4. 視聴継続:止められない没入感の連鎖

「ノンストップで1日で見た」「一気に見た」という声が多いのも「地面師たち」の特徴です。このドラマの魅力は、予測不可能なストーリー展開にあります。毎回の予想を覆す大胆なプロット転換は、視聴者をハラハラさせ、画面から目を離せなくさせます。

キャラクターの描写も秀逸。主人公の辻本拓海が抱える過去や闇、ハリソン山中との関係性などへの好奇心は、視聴者を引き付けて離しません。ドラマの中の地面師たちは人を地獄に陥れる大きな犯罪を犯す犯罪者でありながら、なぜか彼らが追いつめられると応援したくなるという矛盾した感情を抱かせられるキャラクター設定も、この作品の大きな魅力の一つです。

さらに、五感を刺激するような圧倒的なクオリティも見逃せません。緻密に張り巡らされた伏線、そして何より、石野卓球さんが手がける音楽がドラマにぴったりと合っていて、スリルを掻き立てます。緊張感を増幅させる音楽と繊細な音響効果は、視聴者を作品世界に引き込む重要な要素となっています。

連日の猛暑が続く中、「地面師たち」が描き出す気味の悪い怖さは、ゾッとする涼しさをもたらしているのかもしれません。この「怖さ」による「涼しさ」が、暑いこの夏にぴったりのコンテンツだったともいえるでしょう。

5. 視聴後:社会現象化を促す共有と共感の連鎖

「地面師たち」の影響力は、視聴後も続きます。SNSで共有したくなるような印象的なセリフ(「もうええでしょう」)やシーン、突っ込みどころの多いベッドシーン(なぜ服を着たまま!?)なども、自然な口コミ拡散を促しているようです。観た後に何か語りたくなる、そんな魅力もあります。

「地面師たち」の成功は、Netflixの高品質なコンテンツ制作とプラットフォーム特性、そして視聴者の自然な反応が複雑に絡み合った結果といえそうです。「もうええでしょう」が話題になるとすぐに上記のようなまとめ動画を作ってXにアップするNetflixのソーシャルマーケティングも動きが早くていいですね!

「地面師たち」は全7話と短く、見ようと思えば週末などに一気見できるため、全話一括配信した戦略もこのドラマの魅力を最大限に引き出したと言えるでしょう。自分のペースで物語に没頭でき、緊張感あふれる展開を途切れることなく楽しむことができました。この「止まらない」視聴体験が、短期間での視聴完了や口コミの急速な広がりにつながったのではないかと思います。

「地面師たち」の原作小説は、2024年7月に既に続編「地面師たち ファイナル・ベッツ」が出版されています。ドラマ版の続編制作はまだ発表されていませんが、今回の大ヒットを考えれば、続編への期待は大いに高まっています。原作の続編がどのようにドラマ化されるのか、どんな新たな展開が待っているのか、今から待ち遠しいです!

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