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【古陶磁の逸話⑥:荒木村重と備前焼】荒木村重(摂州)が、茶会で使った備前焼を徹底検証!安土・桃山時代の古備前焼の逸話を古陶磁鑑定美術館が解説!

古備前研究・鑑定の古陶磁鑑定美術館です。

古備前焼の年代鑑定 古陶磁鑑定美術館

古陶磁鑑定美術館では、古備前焼を中心とした日本の古陶磁器の研究・調査・鑑定・評価・蒐集・保存・継承の事業を行っています。

みなさんは、『古美術品』という言葉を聞いた時に、どんなことをイメージしますか?

古い壺や掛け軸や茶道具などを大金で取引しているような風景を想像される方もいるでしょうし、美術館や博物館に陳列されている優雅な屏風や襖などをイメージされる方もいるでしょう。

それらの古美術品に共通することが、作品の『時代背景』です。

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もちろん、作品によって、作られた時代や産地や用途が異なりますので、それぞれの時代背景は別々なものですが、どんなものであっても、『作られた当時』の景色を面影として残しているという点では、古美術品は同じと言えます。

そして、この「時代背景を愉しむ」ことこそ、古美術品の醍醐味であり、数寄の真髄なのです。

なぜなら、古美術品を通して「悠久の時間を超えて歴史の当時に思いを馳せられる」ことこそが、数寄者の最大の面白みであり、悦びだからです。

とは言え、それを言葉で説明してもイメージが湧きにくいかと思います。そのため、このコラムシリーズにて、古美術品が「現役」で使われていた時代の風景を紹介して参ります。

具体的には、主に「戦国時代(安土・桃山時代~江戸時代)」にかけての、茶の湯や茶会の記録や、大名や武将の逸話をベースに、当時の古陶磁や古備前焼についてのエピソードを解説します。

古美術品や骨董品に興味がある方は、ぜひこのコラムで、歴史の面影を感じてみましょう。

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今回ピックアップする逸話は、「荒木村重(摂州)と備前焼」です。

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【コラム①:「豊臣秀吉と備前焼」を読んでいない方はこちら

【コラム②:「千利休と備前焼」を読んでいない方はこちら

【コラム③:「明智光秀と備前焼」を読んでいない方はこちら

【コラム④:「古田織部と備前焼」を読んでいない方はこちら

【コラム⑤:「小堀遠州と備前焼」を読んでいない方はこちら

荒木村重は、足利義昭・織田信長に仕えた武将で、一時は高山右近や中川清秀を従え、信長の重臣として摂津一国を与えられるほど重用されましたが、最終的には信長に謀反して立場を追われてしまいます。

そんな荒木村重は、室町時代末期から安土・桃山時代にかけての茶の湯に逸話が多い人物でもあります。

荒木村重の茶会の様子は、当時の茶会記に記録が残っているため、どんな茶道具を使って茶を点てていたのかを知ることができます。

今回は、その中から荒木村重が使った「備前焼」をピックアップしてみましたので、当時の荒木村重と備前焼との関係性を考察してみましょう。

古備前種壺 古備前壺 古備前波状文壺 古備前窯印壺

荒木村重が茶会で使用した備前焼一覧(茶会記より)

【建水】
1577年10月 京都 備前水下
1578年10月 京都 備前水下

【水指】
1585年 2月    備前水指
1586年 4月 堺  備前水指

【茶碗】
1578年10月 京都 備前茶碗

茶会記の記録を見ると、荒木村重は、1577年から1586年までの約10年間で5回、備前焼を茶会で使っていたことが分かります。

茶道具の種別では、「建水」「水指」「茶碗」を用いています。

備前焼の「茶碗」は、茶会記上では非常に珍しい存在です。

備前焼と言えば、ガリっとした無釉の焼け肌が魅力の焼き物ですが、ざらついた器表は、茶筅が折れたり、傷ついたりしてしまうことから、抹茶を点てる茶碗としては不向きであると考えられてきました。

そのため、「備前茶碗」は、茶会でほとんど使われることがないのですが、それを荒木村重が採用していたことは、特筆すべき記録と言えます。

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当時の天下統一の第一候補であった信長を裏切って、自らの信念を貫いた男。

その逆張りの姿勢が、備前焼茶碗のチョイスにも表れていたのかもしれません。

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このような「時代背景」を知っていると、当時の大名や武将を身近に感じたり、歴史の遺物(伝来品)に愛着を感じたりできるようになります。

そんな、安土・桃山時代の備前焼を通じて、荒木村重が生きた戦国時代に思いを馳せて見ませんか?

古陶磁鑑定美術館のホームページでは、書籍「古備前焼の年代鑑定」の出版記念展覧会として、荒木村重が生きた安土・桃山時代から江戸時代にかけての古備前焼の名品を、オンラインで特別に公開中です。

戦国時代の茶人や大名は、一体どんな備前焼茶道具を使って、茶の湯を行っていたのか?

その答えを、実際の「伝来品」を通じてみることができます。

表紙(フチなし)

ぜひ、ホームページをご覧ください。また、書籍「古備前焼の年代鑑定」を宜しくお願い致します。


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