PdMとデザイナーの期待値のズレを解消!プロジェクト成功に向けた役割可視化の工夫とは?
こんにちは。マネーフォワードの福岡拠点でデザイナーをしている大川です。
今回は、プロダクト開発における各プロジェクトを進行していく中でデザイナーとPdMの間で曖昧になっていたそれぞれの役割決めについて、どう対応したのかについて説明します。
マネーフォワードの開発チームでは様々なプロジェクトが進行しており、デザイナーやPdMが複数のプロジェクトを同時並行して進行していくケースがあります。
そんな中、それぞれのプロダクト開発において、お互いの「できること」と「相手に頼っていいこと」が曖昧なままプロジェクトでの役割分担をしているという事実が判明しました。
それには次のような理由がありました。
例えば、マネーフォワードのPdMは現在のポジションに至るまでのキャリアパスが人によって様々です。エンジニアリングを強みとする人もいれば、デザインプロセスに精通している人もいて、得意分野が人により異なります。
デザイナーも同じくビジュアルデザインの制作に強みのある人もいれば、リサーチなど上流の経験が豊富なデザイナーもいます。
PdMとデザイナーの仕事の領域は交わる部分も多いため、お互いにできることを細かく知らないままプロジェクトを進めると、期待値の齟齬が生じることになります。
プロジェクトを円滑に進める上で、この齟齬をなくすことが重要です。
特に齟齬が生まれやすいのは、プロダクトマネジメントトライアングルを参考にすると整理しやすくなります。
このトライアングルは、曖昧になりがちなPdMの役割を整理する上で参考になります。
トライアングルの中央に位置するのはプロダクト(PdM)です。次に開発者、顧客、ビジネスがあり、プロダクトは3つの要素全てに関わりを持ちます。PdMはこの3つの要素の関わりを機能させていくことが役割になります。
開発者と顧客を繋ぐ項目を見てみると「カスタマー/技術サポート」「データ分析」「デザイン」がありますが、PdMも同様にプロダクトと顧客を繋ぐ役割があり、この融合している部分(赤)の役割担当が曖昧になりがちです。
プロジェクトでの自分の役割は明確か
皆さんはプロジェクトを進行していく上で、何を基準に自分の役割を決めていますか?
僕は過去のプロジェクトでやっていたことや、自分ができることから自分の役割を決めていました。
過去の経験や自分が今できることをプロジェクトでやること自体は悪いことではないですが、このやり方をずっと続けていると自身のスキルアップに繋がりづらかったり、プロジェクトにおいて必要なプロセスが抜け落ちてしまったり、プロジェクト全体の品質が落ちる可能性が高くなってしまうなどのリスクがあります。
プロジェクトにも大小さまざなものが存在しますが、全て同じプロセスを踏んでいるとプロジェクトにおいて有効な情報が得られなかったり、必要以上に時間を使ってしまうことがあるので、それぞれのプロジェクトで適切なプロセスは何かを判断していくことが必要です。
この問題を解消するために、デザイナー主導で「スキルマップ」というツールを作成し、プロジェクトで必要なプロセスの可視化と役割分担を行うことにしました。
スキルマップとは?
チームでプロジェクトを進行していく場合、それぞれの職能ごとに役割があると思います。この役割の分担が曖昧になっていたり、そもそもチームメンバーがどんなスキルを持っているのかが分からず、自分でやってしまうケースがあると思います。
リソースが無限にあれば自分が全て引き受けるなどの判断はあるかもしれませんが、プロダクト開発を行なっていく上でいつまでにこの機能やサービスを世に出したいという期限はあると思います。
期限が決められているプロジェクトの中で、役割を分担をする時に活用するのが、メンバーのスキルを可視化したスキルマップです。お互いのスキルを可視化できれば「ここは相手にお願いしよう!」など役割分担をする上で参考になります。また、例えスキルを保有していなかったとしてもスキルアップのために「今回チャレンジしてみよう!」など、アクションが取りやすくなるなどのメリットもあります。
作成したスキルマップ
スキルマップではプロジェクトを通して必要なスキルを細分化しており、数が多いため全体をカテゴリ/大項目/小項目と分類しています。組織体制やプロジェクトの特性次第で必要な項目は少しずつ変わります。大項目/小項目を全て説明すると数が多いため、この記事ではカテゴリレベルでの役割分担のポイントを説明します。
プロジェクト設計
プロジェクト設計では、プロジェクトの本格開始前にメンバーの適正やスケジュールを把握した上で、プロジェクトの特性や難易度に合わせてチームを編成し、目的やゴールを共有するためのフェーズで必要なスキルをまとめています。
特に目的やゴールをチームメンバーと共有する場では、ファシリテーションのスキルが重要なのでデザイナーが深く関わる場合があります。
要求理解
要求理解では、プロジェクトで解決したい課題に対して関係者へリサーチを行うスキルや、解決アイデアを出しつつラフなプロトタイプを作成するスキルなどで構成されます。また、アイデアの有効性の検証を行うスキルも含まれます。
リサーチ方法の選定やリサーチの設計はデザイナーが行うことがほとんどですが、リサーチ結果の分析とそれによる意思決定はデザイナーがやるかPdMがやるかは、スキルの保有状況や体制によって変化します。
要件定義
要件定義では、対象のユーザーをより明確にするためにペルソナやカスタマージャーニーマップなどを作成し、要求を実現するために必要な要件を固めていくスキルをまとめています。
特に要件を固める段階で行うユーザーシナリオ、ユーザーストーリーマッピング、要件定義書の作成はPdMで担うことが多いですが、デザイナーが深く関与することもあるので明確に役割分担しつつ、互いにサポートできるとスムーズに進行しやすいです。
設計
設計では、情報構造の整理や画面フロー図の設計に必要なスキルをまとめています。
情報構造の整理はPdMが担当し、インタラクションの設計はデザイナーが担当することが多いですが、作業の境界線が曖昧なスキルなので細かいレベルで分担できるとよいです。
プロトタイピング
プロトタイピングでは、あしらいを含めた画面のデザイン制作や、画面が使いやすいものになっているかのユーザビリティテストをやる上で必要なスキルをまとめています。
プロトタイピングはデザイナーが全てを担当しますが、ユーザビリティテスト結果の評価やそれによる改善判断はPdMが実施する場合もあるため、意思決定の役割がどちらにあるかを双方で合意しておきましょう。
開発
開発では、設計内容やその背景をチームメンバーに共有したり、エンジニアの実装後に検証をするスキルをまとめています。
画面デザインに関わるところは全てデザイナーが担当しますが、設計の根底に関わる内容の場合はPdMとデザイナーでどちらが開発指示や設計変更の判断をするかを明確にしておくとエンジニアが混乱しないような進行ができるでしょう。
プロダクト外のコンテンツ制作
プロダクト外のコンテンツ制作では、プロジェクトでの機能リリースと合わせて必要になるサポートサイトの更新やウェブ接客ツールに合わせたコンテンツ制作に関するスキルをまとめています。
コンテンツ設計や作図が必要な場合はデザイナーが担当します。サポートサイトの更新は基本的にカスタマーサクセスで行うことが多いですが、掲載内容に問題がないかなどのチェックはPdM、デザイナーが行うことが多いため、どの部分をどちらがレビューするかの範囲を決めておくとよいです。
リリース後
リリース後では、操作ログの分析やユーザーリサーチを行い、改善ポイントがないかを定量/定性面で確認していくスキルをまとめています。
分析後のデザインのブラッシュアップはデザイナーが担当しますが、分析やリサーチはPdMとデザイナーで分担して進行できると、改善ポイントの洗い出しがスムーズになります。
試験的に使ってみる
作成したスキルマップを使って、実際のプロジェクトで使える内容になっているかを評価しました。試験的に使ってみると、以下のような改善点が見えてきました。
追加したほうがよさそうな項目がある
項目に対しての説明が不十分で、成果物が分かりづらいものがあり役割分担しにくい
自信のない項目に対して「スキルを保有している」と記載しづらい
役割を決めるとき、デザイナーだからPdMだからなどの「べき論」で判断してしまいがち
などなど、内容だけでなく記載する際の心構えなどもフォローしておくべきという課題が見えてきました。これからの課題を踏まえてスキルマップをブラッシュアップし、どのような性質のプロジェクトでも迷わず利用できるよう精度を高めていこうと思います。現在は試験運用の段階ですが、これからどんな効果が生まれてくるのかが楽しみです。
保有しているスキルや役割分担を見える化したことで、PdMとデザイナー双方がサポートし合える関係を築きやすくなったり、まだ経験が浅いことに対してチャレンジしてみよう!などのスキルアップのアクションに繋がってくるのではと考えています。
また、実施するプロセスを明確にしたことで、想定外の課題発見に繋がりプロジェクトの品質向上にも貢献できるのではとワクワクしています。
さいごに
いかがでしょうか。今回プロジェクトでの役割が曖昧になっているという課題から始まり、結果的に自分のスキルを見直すきっかけや新たなプロセスの発見にも繋げることができたのでスキルマップを作成して良かったと思ってます。
同じような課題を抱えている方の参考になれば嬉しいです。
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