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2023年2月の記事一覧

『空中晩餐会』を読む。-なりかわりと直喩-

『空中晩餐会』を読む。-なりかわりと直喩-

滝口泰隆氏の歌集
『空中晩餐会』。

この歌集の大きな特徴は
・なりかわり

・直喩
にあると思う。

なりかわりとは、自分が他のモノになっている設定である。
隠喩に含んでもいいかもしれない。

・なりかわりの一例

・直喩の一例

また、
表紙に『現代短歌集』とあり
現代的な印象の一冊だった。

越智友亮句集『ふつうの未来』-親しみやすさと面白さの両立-

越智友亮句集『ふつうの未来』-親しみやすさと面白さの両立-

越智友亮氏の句集『ふつうの未来』から五句紹介。

噴水の水が落ちた直後の景を詠んでいる点が珍しい。

『体温はたましいの熱』の言い回しが面白い。
梨のみずみずしさやおいしさも感じる。

『Wi-Fiとんでない町』は田舎だと推測できる。
田舎と夏の取り合わせが爽やか。

水槽のぼんやりとした明るさと、夏風邪のぼんやりした体感が重なる。

動かない駅を『残された』とし、『悴みぬ』という擬人法で終わる。

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飯田マユミ句集『沈黙の函』ー光景と共感ー

飯田マユミ句集『沈黙の函』ー光景と共感ー

この句集は
・光景が面白い句
・読むと感覚が蘇る句
が多いと感じた。

そんな
飯田マユミ氏の句集『沈黙の函』
から五句紹介。

リフレインが効いていて、躍動感がある。

納得と共感をした。

こういった作者独特の発見の句は読者としては楽しい。

俳句という短い詩形で、広い空間が表現されている。

やわらかい柿をうっかり踏んだ時の、ぐにゃっとした不快感を巧みな比喩で表現している。

木と人の寿命の

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