「人の死に携わる仕事にスポットライトを」日本で唯一の納棺師育成学校『おくりびとアカデミー』を直撃
”いいお別れ”が増えたら、残されたご遺族の未来が変わる。
教育を通して、質の高い納棺師を増やし、納棺師の可能性を広げていきたい。そんな想いを胸に創立された、日本で唯一の納棺師専門学校である、おくりびとアカデミー。
今回はおくりびとアカデミーとは一体どんな学校なのか?
当社で広報を担当されている近藤さんにお話を伺ってきました! 設立者 木村光希さんへのインタビューはこちら!:https://note.com/okuribitoacademy/n/n732a3f8f7912
ー 今日はよろしくお願いします。早速ですが、改めておくりびとアカデミーの創設に至るまでの背景を教えてください!
おくりびとアカデミーは、2つの想いから創設されました。1つは、代表の木村が以前より抱いていた納棺師教育への課題感。
幼い頃から木村は、納棺師である父とそのお弟子さん方々を見ていました。納棺師は師匠弟子制度が踏襲されている職業であり、”作法も、マインドも見て学べ”という教育は実践的ですが、誰でもそれで全てが身につく訳ではない。
故人様との別れを悼み悲しむご遺族方々にとって一度きりであるその場を、バラバラなスキルと心構えで臨む人材育成の仕方に課題を感じ、一定以上の技術と知識を習得できる体系的な教育を通して、いいお別れができる納棺師を増やしたいという想いを持っていました。
もう1つは、人の死に携わる仕事をタブーなものとするのではなく、むしろスポットライトを当てていきたいという想いからでした。昔は卑しい仕事と見なされていた死と向き合う仕事。そんなイメージは木村代表の父が納棺師としての職業を確立する中で確実に変化していきました。その立場を教育を通して守っていきたいという想いがあります。
ー質の高い納棺師教育を広めていくという創設の想いがあったんですね。おくりびとアカデミーはどのような授業を行っているのですか?
日本で唯一の納棺師育成学校ということもあり、他では学ぶことの出来ない技術の1つとしてお着せ替えの授業に一番力を入れています。やはり当学校の目玉は、日本舞踊などの動き取り入れ、所作や姿勢、目線などにも心を配っている特別なお着せ替えの授業ですね。
月2回、オープンキャンパスを行っているのですが、このお着せ替えの手技「納棺の儀」の実演を見て頂いたことがきっかけとなり、納棺師に興味を持っていただくことも多いです。
オープンキャンパスの情報はこちら:https://okuribito-academy.com/category/event/
ー お着せ替えについて、私も映画『おくりびと』で初めて知りましたが、やはり長い歴史があるものなのでしょうか?
納棺師の仕事は、歴史的にいつから成り立った職業であるのか、史実でもはっきりとは分からないようです。昔は、遺族が弔う中でお身体を拭き取るような簡単なものでしたが、感染症の懸念など様々な理由で葬儀社や納棺湯灌他専門業者ができ、納棺式は現在のような形で納棺師が行うようになったのでは、と推測されます。
例えば、海難事故や火災、震災など、病気や寿命以外でも亡くなる方はおり、それぞれ環境は異なります。それらの場合を含め、故人の方の尊厳も考慮して、所作にもこだわりながら体系的に納棺師としての役割を確立したいと、木村の父の師匠であった遠山さんが中心となり、徐々にそれらが広まっていきました。
例えば、お身体に傷や血糊がついているままだと、ご遺族に与える影響がかなり大きいですよね。そのような故人様をはじめ、どんなご状態の場合にも、ご遺族のご要望に応じて多様な処置ができる納棺師を増やすために、おくりびとアカデミーでは特殊処置の授業も提供しています。
開講科目情報:
https://okuribito-academy.com/noukan/
ー故人様の尊厳や、残されたご遺族の気持ちを考慮して生まれたのが納棺師のお仕事だったんですね。お着せ替えの他にはどのような授業が開講されているのですか?
例えば、グリーフサポートという授業があります。グリーフとは、日本語で”悲嘆”の意。
大切な方を亡くし、悲しみにくれた方々をどのように支えるか、その心理状態などを含めた精神理論を勉強する授業です。この授業は、遺体衛生保全同様に、アメリカのエンバーマーライセンス保持者などご遺体の処置に関する人材育成を行っている会社から専任の先生をお招きし、授業を行っています。
例えば、自分が赤が好きだからといって、他も皆、全員赤が好きとは限らないですよね。それと同じように、「悲しいから泣く」という理論は全員に当てはまるものではないんです。人それぞれ悲しみ方が違う。
納棺師がお葬式に関わるのは60~90分間という短い時間ですが、その中では特に、式全体の空気を作る大切な存在です。
また、日頃から死に向き合うお仕事なので、自分の死に対する意識を学んで、自分の気持ちを強く持つ方法も学んで頂いています。
ー悲しみ方は人それぞれ違う、そのような十人十色の悲しみに寄り添うことも、納棺師の重要な役割なんですね。
そうなんです。例えば以前、当校講師でもある現役納棺師に話を聞く機会がありました。
幼いお子様が2人いらっしゃる若い奥様でしたが、バイク事故でその旦那様を亡くされたご家族様のお式を担当されたそうです。実は、旦那様が亡くなってから遠方の親族が集まるお葬式まで1週間と長い時間がありました。
様態悪化を防ぐために、ご遺体を冷凍庫でご安置していました。その葬儀社へ奥様とお子様は毎日お弁当を持って通い、レジャーシートをそばに敷いて、ピクニックでもするように笑って話しかけている様子は、周囲の人たちには、かなり不思議に見えたと聞きました。
お葬式当日となり、最後に納棺師さんが「奥様と旦那様との時間を設けましょうか。」と尋ねたところ、徐に断り、その代わり「いいこいいこしてほしい。頭を撫でて欲しい。」とおっしゃったそうなんです。納棺師さんは旦那様の手をとって、奥様の頭を優しく撫でました。
その時に奥様が「これからも頑張っていくからね。」と話しながら涙を流されたそうです。実は亡くなってから涙を流されたのはこの時が初めてでした。お子様も式の最後に、納棺師さんの頭を撫でて「綺麗にしてくれてありがとう。」と伝えてくれたそうです。
この奥様のように、悲しみの感情が一定期間経過してからやってくる方もいます。
残されたご遺族一人一人の気持ちに寄り添い、サポートしていく、そんな姿勢も納棺師として働く上でとても大切なことなのです。
ー納棺師として、本当の意味でご遺族、故人様に寄り添うということをすごく感じました。他にはどのような授業を行っているのでしょうか?時間割についても教えてください!
お着せ替えや、グリーフサポートに加えて行っているのは、ビューティメークもさることながら、その方らしさを引き立てる死化粧の施し方や、宗教学、弁護士の方を講師に招いての納棺師関連法の授業など、幅広い知識を実践的に身につけていただく環境を整えています。
当校は6ヶ月間通っていただくカリキュラムで(木・金曜10:00~13:00、土曜10:00~17:00)に授業を開講しています。(第8期の場合)
また、空いた時間でも積極的に実践の知識をつけていただくために、湯灌や実際のご葬儀の設営に携わることができるアルバイトなども紹介しています。
コース情報:https://okuribito-academy.com/noukan/
ー18~20歳くらいの若い生徒さんも多いようですが、大学進学なども選択肢にある中で、彼らに納棺師としてのキャリアをおすすめするのはどうしてですか?
もちろん、本人の意思が第一である上で、いくつか理由はありますが、大きくは2つです。まず一番大きいと思うのは、今後AIなどが台頭し、淘汰される職業が出てくる、と言われている中で、故人様の旅立ちをお手伝いする納棺師という職業は機械技術に代えがたく、なくならないと考えているからです。専門職として、知識を習得し、その後のキャリアプランも立てやすいことが利点かなと思います。
また、もう1つの理由としては、自立心がある若い方にとっては、それが叶いやすい道だと考えているからです(例えば早く家から独り立ちしたいとか、目的なく進学するよりも、まずは就職して一社会人として働きたいなど)。特に、高校を卒業してすぐに働くとなれば低賃金で得られる職も限りがあるかと思いますが、短期間で技術・知識を得て、技術職としても活躍できることを考えると、納棺師はそれらの希望に適ったキャリアなのではないかなと考えていますね。
ーおくりびとアカデミーを卒業した後のキャリアについて教えてください!
納棺師として就職先を探されるにあたり、以下2通りの選択を検討される方が多いかと思います。
①納棺湯灌専門会社
②葬儀会社
納棺・湯灌専門会社に入社することが一番、現場経験値積むことができるでしょう。葬儀社内で納棺師として働く方もいらっしゃいます。
在学中、上記会社に属する提携会社と合同企業説明会を開催し、ご縁の場としてそちらに就職する生徒さんもいます。もともと看護師や介護士として働いていらっしゃる方は、本業でそちらを続けながら、フリーランスとして納棺師のお仕事を請け負ってる方もいますよ。
ー様々な働き方があるのですね!最後におくりびとアカデミーへの入学を悩んでいる方に対して一言お願いします!
肉親やご兄弟を亡くされた喪失体験がある方や、ご実家が葬儀会社を営まれている方、故人様の旅立ちの知識を身につけたいと来られるお坊さんや、施設で亡くなる方の旅立ちを支援したいと考える介護士の方など…
本当に様々なバックグラウンドの方が、当校の門を叩きにいらっしゃいます。
納棺師に興味を持つ理由やきっかけは人それぞれですが、みなさんの温かな想いを叶える場所となっていると確信しています。
興味を持った方は一度、いらっしゃってみてくださいね。
https://okuribito-academy.com/
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