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ザンスカール800キロ徒歩旅行

❶カシミールの旅

8/20
スリナガルのダル湖畔を7時前に出発
ロクなもの食べてないので足どりは重い
でも道を歩いてる人はみんな親切
グッモーニング」と言って握手をしてくる人も多い
さっきはパンと塩味の紅茶をご馳走になる
お金を払おうとしても受取ってくれない

8/21
スリナガルを出発して2日目
やっぱり歩いて旅するのは最高だ
昨日1日でそれまでの旅の日々の10倍くらいの価値があったように思う
牛追いの女の子と薪を担いできたおじいさんと3人で小川のある草原で一休み中
緩く流れる小川の水はとても冷たい
このまま死んでも幸せっていうくらいのシチュエーションだったけど、下痢してる以外はとても元気なので宿のある町までまた歩かなきゃ
d=(^o^)=b

8/22
3日目バルトルという村
今日は300円でテントに泊めてもらう
ここがカシミール最奥の村だ
村といっても民家はなく村の人はテントで暮らしてる
明日ゾジ・ラ(ラは峠)を越えるとチベット文化圏に入る

カシミールの旅は本当に素晴らしかった
何が素晴らしかったかと言うとカシミールの人の親切な事も嬉しかったけど、なんと言っても風景
ダイナミックな山岳風景へ一歩一歩と近づいてゆく高揚感
風景に見とれて昨日はすっかり暗くなるまで歩いた                     月明かりに照らされた紫色の雪渓や、対岸の切り立った斜面を流れるように移動してゆく羊の群れは永遠に頭の中に残りそう

でも素晴らしいことばかりじゃなかった
村を通る度に少年達がバクシーシ(施し)をねだる
無視すると指を鳴らして「パイサ!パイサ!」(お金の事)と言って後をついてきたり、小学校の前を通ったときは校庭で遊んでた子供達がいっせいにパイサコールを始めた
それでもリンゴをくれたり、チャイを飲んでいけって言ってくれる親切な人も多いのだ

ソーナーマルグにあと2キロというところで、少年が菜葉を片手に持って(夕食用だろう)土手をすごいスピードで駆け登ってくる 少年は「家によってチャイを飲め」としつこい
ここへ来るまでにこの手の少年の信用度はすっかり落ちてた 
気乗りしないまま少年の家に行く
本当はとても喉が乾いてた
家の中は真っ暗だ
その部屋の中で赤々と燃えてる薪木の明かりは訳もなく僕をジーンとさせた
チャイと上等なお皿に入れて出してくれたチャパティーを食べさせてもらったので、お礼に写真を撮ってあげた

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去り際に50パイサ渡そうとすると少年は「ノー ノー」と言う
僕は両手を合わせて「シャークリア(ありがとう)」と言う

今日は日帰りで、たくさんの巡礼者に混じってアマルナート洞窟へトレッキングしてきた
標高4100m シバ神を祀る聖地だ        初めて見た5000mの峰々は凄かった
初めてサドゥに会った

インドで最も寒い村!標高3300mで冬は-60°を記録した事があるという。世界でも人の住む所では2番目に寒いと言われてるDras村に着いた
宿の名前も「コールドランド」なんて書いてある
昨日泊めてもらったチャイ屋といい、この村の雰囲気といい、まったく夢の中を彷徨ってるみたいに美しい

8/29 スリナガルから203キロ歩いてカルギルという町についた
昨日は軍のチェックポストに泊めてもらった
と言っても建物とか無くて、警備してる人達と一緒に野宿
尾根の向こうはパキスタンなので、国境を警備してる人達だ
インドでは宗教上アルコール飲まない人もたくさんいるが、星空の下で希少だというコニャックを飲ませてくれた

❷ザンスカールの旅

カルギルからはラダックのレーに行く道と別れて
いよいよ憧れだったザンスカール地方に向かう
ザンスカールの中心パダンまでは歩いて2週間ほど

体の調子はとても良いけど、カンガンのホテルでノミにやられたらしく以来体じゅうが痒い
下痢はついに止まった!!
懐かしい硬い う◯こ
今日はお祝いにチャイニーズレストランに行こう

まだどんなことにも染まりたくない
だから今は浮いてしまう自分が惨めに見えるが
いつか自分の場所にたどり着くかもしれない
それを信じて今は歩こう

カルギルから39キロ、サンクーという村にいる
昨日もまた村の人の家に泊めてもらう
ここでも宿代とメシ代のつもりだった300円は受取ってくれなかった
昨日はあまりにも喉が乾いて「tea stallはどこー?」って叫いてたら、青年がやってきて「お前はプアか?」って聞くので、「yes」と言うと、彼は「俺もプアだ。ウチへ来いチャイ飲もう」という事になってまたまた親切が身に滲みた

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9/2
今日はパキスタンをトレッキングしてきた日本人と一緒に歩いてる
パキスタンで南京虫にやられて坊主頭にしたという
峠に着いたら不意に「ヌン・クン」が姿を見せた
初めて見た7000m峰だ            高さだけじゃなく、容姿が名峰だと思う    この感動は言葉や映像では伝えられない
すっごい!」としか言葉が出てこない
彼はパキスタンで8000mを見てきてるが、感想は「怖い」だったと言う
わかる気がした
宇宙に神の気配を感じるように、この景色の中にはやはり神が棲んでる気がした

昨日はタシケントという村に一泊して今日はペンシ・ラ(4400m)を越える。ここから先はいよいよラダック地方とは別の、もう一つのチベット文化圏のザンスカール地方だ
でも、山や氷河にも慣れてきてやや感動に欠けるダラダラした峠越えだ
というか今日は体調が最悪なのだ
景色どころではなく、午前中は吐き気がしてあんまり気分が悪かったので羊飼いの人のテントに無断で1時間くらい寝かせてもらった
高山病の症状だ
横を向くと羊の頭がゴロリと転がってた
峠を越えると、マーモットがちょこんと立ち上がってキョロキョロしてた
ヒマラヤの青いケシとも呼ばれるブルーポピーの花も初めて見た

ザンスカールの中心地 パダンに着いた!
夕食はプリー?(ジャガイモの料理)
フランスの家庭料理なのかな
なんでフランスかと言うと、ザンスカール地方はフランス人のトレッカーが結構いるのだ
僕のことをジャーマンか?って聞くくらいでトレッキングでフランス人じゃなければドイツ人って思うらしいw
それから今日は高所用にダウンジャケットと帽子を買って鏡を見せてもらったら顔が真っ黒だった 高地なので日焼けがすごいのだ。たぶん目もやられてると思う 欧米人はみんなサングラスしてる衣類もトレッキング用具も売ってるが、みんな旅行者が残してったものだ。佐川の軍手もあった

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パダンでは村の若者が、旅行者に教わったり、要望を受けたりしながら食堂や宿をOPENしていて、その経営感覚がシンプルで素朴で、とてもいい

パルリという村の宿に泊まってる
今日はサンフランシスコの大学生と教授のグループと同宿
ワンタンスープをご馳走になった

ザンスカールの美しさは言葉にできない    胸をジーンとさせる何かがある
ザンスカーリーやチベッタンはインド人よりも日本人みたいに感じる時がある
顔もよく似てるし、日本の漬物みたいな食べ物もある

カルギャックというザンスカール最奥の村
また村の人が「泊めてやる ウチに来い」っていうのでついて行く
やっぱりごはんは「サンバ(麦粉)」と「グルグル茶(バター茶)」かなぁ 
とびっきり美味いものを食べたいなぁ
こんなところを旅してると食欲!これが全てのエネルギーとなってこの徒歩旅行を支えている
今日バテなかったのは香港で美味しい中華食べるシミュレーションばかりしてたからだ

昨日は4500mでビバーク           死ぬほど寒かった
今日は4000m辺りで、あれ?この辺に地図にpeoples hotel って書いてあるので宿があるはずなのに。でもどこにもなく日も落ちて暗くなったので、自然の岩陰を利用して仮泊できそうな場所を見つけ、そこでまたビバークしたのだが、翌朝 岩を見たら、ペンキででっかくpeoples hotel って書いてあった

カルギャックで固形燃料とコッヘルみたいな鍋を手に入れたので昨日から自炊してる
インド製のインスタントラーメンとホットレモン
めちゃくちゃ美味い
今回の旅の最高地点シンゴ・ラ5100mを越えて少しは一人旅の緊張も解けてきた
それにしても渡渉箇所が多い
深いところは腰まであった
氷河から流れ出たばかりの水だから冷たい
流れも強い 踏ん張っても身体ごとずるずる流されそうになるのは だいぶビビった (((;꒪ꈊ꒪;)))

ドルチェという町に到着
今日は標高差1000m下ってここは3300m
途中一箇所 最悪の渡渉箇所があった
チャパティと野菜ダルの夕食をとって150円のホテルに泊まってる
まだ交通不便な場所なので物価が高いと聞いたので、最も一般的なメニューにしたのだ
トマトおまけでくれたのが嬉しかった
下痢がおさまって、ここのところやたらと食欲がある
食べる事と旅のプランを考えてるとほとんど疲れを感じない
昨日は岩小屋で色々プラン考えてたら寝られなくなってしまった

明日の朝食は今日食べたレストラン行ってチャパティを食べよう
お昼はインスタントラーメン
ビスケットも買ったので明日は景色の良いところでティーブレイクをとろう

キーロンはどんな町かなあ
果物と玉子をパダン以来全然食べてないので村へ入る時はこの二つがまず頭に浮かぶ
肉と魚も2週間前に羊のスープをご馳走になった以外はもう1か月以上食べてない
少しベジタリアンの体質になってるかも

9/19
キーロンにて
600円の宿に泊まってる
この辺りはV字谷ではるか上の方まで段々畑が連なってる                   
スケールはこっちの方が全然上だけど、四国の祖谷地方にちょっと似てると思う

ザンスカールの旅では、景色の美しいこと、食べ物のこと、下痢のことで頭がいっぱいだったけど
今日は余裕が出たためか こんな事考えてた
マナリー〜レー道路は軍用道路でそのためか道路工事の人をいたるところで見かける
一般道路より大事なのだ
働いてる人はネパーリーが多く、彼らの顔つきは日本人とちょっと似てるかも
その彼らを見て、彼らは遊んでいるって思ったんだ
彼らは道路を整備したい国の偉い人にために働いてる 
だけどその偉い人は働いているというより。。
世界で偉い人達が過去にやってきた事を思えば、それは仕事というよりは彼らの遊びと言った方が近いんじゃないかな
人や動物や自然を喜ばせる遊びならいいけど、酷い場合は遊びというより人のエゴイズムそのものの場合もあると思う
工事人夫の彼らは、そんな偉い人の遊びのために働いてる                  僕は今、こうして自分自身のために遊んでる事は、ラッキーな境遇だから感謝しないといけないが、誰かの遊びのためじゃなく自分自身のために遊んでる事は恥ずかしい事じゃない気がした

9/19                                                                      キーロン
ラマユルレストランで朝食
今日はsisuまで28キロの予定
この調子ならゴールのマナリーへは4日の行程だ
キーロンに美味いチャイ屋を見つけたので今朝も早起きして7時前にチャイ屋に行く
50パイサの揚げパンも美味しい
世界中の簡単なローカルフードを食べ歩きたい

9/20
シスにて
150円のホテルでビスケットとパンとチャイの朝食
今日の予定はたった15キロ
今日から1日の出費を600円に抑えよう
これまでは600円すらなかなか使えなかったけど、だんだん大きな町に近づいてゆくので粗食の反動が出ないよう注意するのだ

朝食 ビスケット 60円
サモサとチャイ、飴 60円 (お釣りがなくて飴もらう)

9/20
シスから2キロ地点で紅茶沸かしてる
ビスケットの包み紙と乾いた牛のウンチ(車で轢かれてペシャンコになったやつが具合いい)を燃やすと紅茶くらいはすぐ沸く
芝生のような草原の上でヒマラヤを見ながら紅茶飲むなんて、日本での生活から比べると最高に贅沢なんだけどちょっとこの景色にも飽きてきた
マナリーの町に着いたらひとまずバンコクへ帰ろうかな 喧騒の街がちょっと恋しくなってきた

コスタにて
今日は390円のレストハウス
本日の出費(チャイ屋を3軒はしご)
チャイとベジタブルダルとライス 150円
チャイとローカルブレッドとゆでたまご 90円
ミントチャイとモモ(羊の餃子)スープ 90円

9/21 深夜
このところ眠れない夜が多い
カシミールではノミ(南京虫?)に喰われて寝られなかったけど、ザンスカールを歩き終えてからは他人から見たら訳の分からないプランをあれもしたいけどこれもしたいといった調子で迷い果ててる

今回の徒歩旅行はマナリーで終わるけど、カイラスの巡礼ルートの入口がアルモーラーという所らしい
地図見るとナンダデビィー(7817m)近くの峠を越えて行くみたい
歩いて往復すると1か月半くらいだと思う
ボーダーの問題がなければなぁ
巡礼の人に混じっちゃう手もあるかもw
とにかくどー考えても素晴らしいルートだ!  行きたい!!

9/21
チャイ、ゆでたまご、ローカルブレッド、サモサの朝食で70円とは安い!
それにとても美味しい
このプレーンサモサなら東京のパン屋さんに50円で並べても全然見劣りしない
体調バッチリでマナリーに着きたいのでコクサレストハウスにもう一泊
食べ物が美味くて安い
僕にとっては天国みたいな環境だ

紅茶を美味しく飲むためにマナリー着いたらカップを買いたい(ナベで飲んでる)それから砂糖
日本では紅茶に砂糖なんて入れないけどこちらのリプトンティーの茶葉を煮詰めると味が濃くて砂糖が欲しくなる
だからチャイによくマッチするんだなぁ

今思うとカシミールとザンスカールの旅は素晴らしかったけどきつかった           フィリピンのバナウェイに行ったとき、2週間前にアメリカ人女性が子ども達から投石に遭って頭に当たって亡くなったそうで、村の人にガイド頼むか迷った事があったけど、今回この旅で 初めて僕も投石に遭った
それに比べるとこの辺りの旅はラクだ
カシミールの人達は旅行者にムキになって接してくる
それは商売に長けているカシミールの人達の特性かもしれない
ザンスカールの人達はもっと素朴に旅行者を見てる
それはよそ者に対する好奇の目でもある
これは人間の本能的なものだと思う
大人はそれをコントロールすることもできるけど、子供達はまともにその目を向けてきた
その中に自分を見る思いがしたし、石を投げられた恐怖と悔しさに中で、これは貴重な経験だという事だけがわかった
大人になるとはどういう事なんだろう
親切にしてくれた人と同じくらい石を投げてきた子供たちの気持ちにも同調するのは、今もどこかで彼らの気持ちが残ってる事かもしれないって思う

9/21
マナリーに近づくと、道行く人からガンジャを勧められる事が多くなった
畑仕事してるおっちゃんがチャイ一杯、煙草一本と同じ感覚で勧めてくる 風邪とかで弱ってる時にも元気が出るんよって言ってた 

コクサで2泊したけど今日はまたポクポク歩いてる
なんだかこの旅は馬みたいだな
ロータンパスはこの旅 最後の峠        いったいいくつ峠越えたんだろう
ザンスカールから比べるとずいぶん平地に近づいた気がしてたけどまだ3000mある
その手前の滝で水浴びしてる

9/22
マリのホテルにて
ロータンパス(3955m)を越えて、あとは馬の歩く山道を明日1日かけてくだれば今回の徒歩旅行のゴール地点 マナリーに着く
今 お湯を沸かしてチャイを飲んでる
5000m級の山並みが逆光に鈍く光ってかっこいい    

本日の出費
◯朝食 チャイ2杯 30円
オムレツ 90円
サモサ 15円
峠のチャイ屋 チャイ2杯 60円
ゆでたまご2コ 60円
パコラ(野菜の天ぷら)30円
◯昼食
ベジタブルダルとライス 150円
チャイ 20円
フルーツマサラ 90円
◯3時のお茶休憩
チャイ 20円
み夕食 ツゥクパ(ラーメン)90円
◯ホテル 150円

9/22
宿のオーナーがウォークマンとディパックを
セットで12000円で買ってくれた
ダウンジャケットももう要らないので3000円くらいで売れるといいな
どんどん荷物が減る♪

❹マナリー到着!

9/23
マナリーの町は思ったより大きかった
野菜も果物もアイスクリームもなんでもある
今日の夕食くらい豪華にと思ってフィッシュカレートマトサンド食べてからバナナシェイクも飲んだけど、
結局そのあと飲んだ一杯のチャイが一番美味かった
どこでもそうだけど、その土地で一番みんなが食べたり飲んだりしてるものがやっぱり一番美味い

9/25
マナリーはとても落ち着ける町だ インドの旅行者の間では有名な沈没地
あちこちでいい匂いが漂ってる
焼き栗のシーズンなのだ
バシシトという温泉が出る村に住んでる日本人と本を交換した
横尾忠則の「インドへ」
読んだらやっぱりタジマハールとか行きたくなった
ヌンクンを見てからどーしてもこれは8000mもみておきたい気持ちもある           こちらはもうすぐ雨季が開けようとしている


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東京へ帰ってきて2日目
「宇宙からの帰還」という映画を観た
アポロ宇宙船の飛行士が、月面でゴルフしたりピョンピョン飛び跳ねてカンガルーみたいだ!って言ってるのを見て、なぜか彼という人間が月へ行けたことの必然性みたいな事を感じた
日本のロケットがあまり上手くいかないのは、技術やお金の問題だけではなくて、なにかもっと他の事のような気がした
三島由紀夫は「インドには行ける人と行けない人がいる。誰でもその時期がくれば自然と行く事ができるけど、無理に行こうとしても行く事ができない」って言ってた
それはインドじゃなくてもどこだっていいけど
そういう感じで月にも行ける人と行けない人があるように思う
それはやっぱり神様が気まぐれで選んだ人だという気がする
僕をザンスカールに呼んでくれた神様に感謝!


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ずっと昔の旅行の記録です。現地の状況はもうあまり参考にならないかもしれませんが、コロナで外出自粛のひまつぶしに忘備録として書き残しました                                     またみんなが自由に旅に出れる日を楽しみにして            今は STAY HOME 😊🏡 












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