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Little Trip〜神保町のJazz喫茶を訪ねて〜


 真冬の午後3時、そろそろ夕方の翳りが寒さとなって身にしみる。
お目当ての喫茶店は臨時休業の看板を出している。
こんな寒い日は一刻も早くコーヒーにありつきたい。
ふと目を遣ると扉の脇の細長い窓から小綺麗な店内が見える。
たくさんのレコードジャケット、ぽつりぽつりと映る人影、5、6席のすっきりとしたカウンターに向かい合わせの2人掛けが3席。カウンターの両側には畳半畳くらいのスピーカーが見える。
看板には『Big Boy JAZZ』。ここ神保町の一角にあるジャズ喫茶。 
寒さと初めてのジャズ喫茶を一瞬天秤にかけるが、好奇心の方が勝った。ひんやりとする金属製の取っ手を開くと大きな音が耳に飛び込む。ノリの良いJAZZだ。店内はジャズと共に暖かい空気に包まれている。
店主に促されるまま窓際の2人席を案内された。
寒さから解放され周りを見回すと数人のお客は
みな湯に浸かるように、じんわりと流れるJAZZに
身を任せている。
自然と会話しにくい空気が漂っていた。
ジャズ喫茶の作法は知らないが、とにかく私語は慎んだ方が良さそうだ。
コーヒーの注文方法が分からずうろうろしていると店主が水をテーブルまで運んでくれた。
ひとまず目的のブレンドとアメリカンを注文した。
生活音より遥かに大きな音量に慣れないながらも、何とか席に身を委ねる。暫くするとそれにも慣れ、ただただ静かに巨大なスピーカーから響く調べに耳を澄ます。ときに穏やかにときに速いテンポで奏でられるコードに現実の煩雑さを忘れた。
会計を済ませ出口へ向かうと気の良い店主がまた「おいで」と送り出してくれた。
コーヒー一杯でこんな風に別世界へ飛べるなら
気負わずに訪ねてもいいかもしれない。

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