見出し画像

トレイルランニングのマネージメント

おおよそ一般のランナーにとって「トレイルランニング」というのは「ランニング」と必ずしも同義とは言えない。何故なら急こう配の登り下りなどを含む道のりを駆けるにはそれ相応(それ相当)の体力が必要となるからだ。

本日3月6日は東では東京マラソン、地元では初開催となる西尾マラソンが開催された。地元の西尾マラソンには何人かの友人も参加した。そんな一日、私は愛知県民の森の中にいた。今月末に開催される伝統のOSJ新城トレイル2022/11㎞の部へ参加する友人より「試走がしたい」という依頼を受けたからだ。

OSJ新城トレイルが開催される愛知県民の森のそのコースはお世辞にも「走れる」とは無縁のコースだ。11㎞のコースで言えばスタートし緩やかに登る広いジープ道を約3km、仮にその区間をジョグする速度を1㎞/7分と仮定しよう。3㎞進み約20分、林道は終焉を迎え、そこからは「がつん」と音が聞こえそうな登りが始まり、自然は優しく美しくも、非情に厳しい様相を呈す。繰り返すアップダウン、急登、直下の繰り返す。

「本番の制限時間は4時間なので、今日は余裕を持って3時間半くらいで帰ってきましょうか」とスタート時、友人に伝えた。友人は少し怪訝な顔をして頭の片隅に「?」をいつくつか付けたようだった。先に言ってしまうとゴールまでに要した時間は約3時間20分だった。先ほども言ったように最初の3㎞を約20分でこなしたわけだから、残りの8㎞を進むのに3時間を要したことになる。ざっくり言えば1㎞進むのに約25分。これはけしてコースが全て登りではないので、下りを含んだトータルでの時間だ。そして決して長い時間とどまって休憩したわけではない。出だしの3㎞を20分でこなし残りの8㎞を3時間でこなす。そこにあるのは走ることもできず、かといって途中で投げ出すこともできない。極端に言えばトレイルライニングとはそういう一面を持ち合わせた性質のものだ。それが進む道であり、そこを走ると決めたのは自分なのだから、責任を持ってその行程を安全にこなすマネージメント、または目標のタイムに向かい、安全性との両立を図った努力、またはプッシュを続ける。そのトータルで自分自身を安全性とともにマネージメントしていくことがこのトレイルランニングという行為を自己完結させ、自分自身への充足感、自信、満足感を自然を相手に行うことが自己責任ということだろう。自然の中における自己責任は「(自己責任だから)何をしても良い」「(自己責任だし)速ければいい」ではない。きちんとセルフマネージメントできることを前提として、自然環境下で走るという行為を通じ、どんな自分を見つけ、見つめなおすのかがこのスポーツの醍醐味のように私には思える。

そう思うと「今日は3時間半で帰ってきましょう」と、相手の体力、経験値、コースレイアウトに天気などを鑑みて決めた3時間半という目標に対し、怪我することなく、楽しく3時間20分で帰ってきた結果は誰かと比べ「速い」「遅い」ではなく「自分の目標に対し如何に忠実にあれたか」というマネージメントの観点において100点満点に近い結果であったと思う。

他の人は知らない、けれど私はレースにしてもそうでなくても、このようにトレイルラニングを楽しんでいる。そう思うと同じ「ランニング」と言ってもいわゆる「ロードランニング」のそれとは本質的にことなる世界観がそこにはあるような気がしてならないのだ。「速く走る」ではなくまずはその本質の違いを探しに山に森に適切な装備、適切な行程でアプローチしてみてはどうだろうか。

この記事が参加している募集

#とは

57,836件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?