見出し画像

通り雨。


彼女が不機嫌に見える。
マスクをしているからなのだろうか?
夏バテ。
って、ことなのだろうか?

いや、もう、なんかただただ嫌になっているだけなのだろうか?
分からないけれど、バテーッって感じ。

「……」
僕は、なにか特別な思い出でも作りたいと思っているのだけれど、まあ、
「暑いよね」
「暑い……」

ということで、カフェで涼む。

僕と彼女はアイスティーを飲みながら、窓の外を眺める。
「……」
「……」

しばらくして、突然の雨。
通り雨。
「凄いね」
と、彼女が言った。
雨足の強さ。

「タイミングよかったね」
と、僕が言った。
「……」
彼女が黙っている。
雨に見とれているのだろうか?
不機嫌なのか。
夏バテか。
「……」
僕は発言が怖くて黙っていると、彼女が、
「凄い、雨」
と、言った。

雨に見とれていたんだ。
僕は、少しホッとして、アイスティーを静かに飲んだ。

雨は十分ほどで止み、
「タイミングよかったね」
と、彼女が言った。

僕は
「凄いね」
と言って、にっこりと笑った。



よろしければサポートお願いします。大切に使わせていただきます。