ふと。
彼女が親指を立て、人差し指を僕に向け、
「バーン」
と、言った。
僕は、
「ウッ」
と、撃たれた振りをする。
雨がやんだり、降ったりする。
彼女が僕に傘を持ってきてと頼んだときには土砂降りだった。
僕が彼女に会う頃には、青空すら見えた。
路面には雨が降った名残があるが、それはもう、過ぎた話。
僕が、ここにいる理由も、過ぎた話。
だけれど、帰ることなく彼女を待つ。
彼女からの連絡の続きはなく、僕も特にメッセージを送ることなく、傘を二つ持ち、駅前のベンチで、通り過ぎていく人たちを見送っている。
蒸し暑さ。
僕はふと、寂しくなり、目をつぶる。
その寂しさが通り過ぎるのをジッと待つ。
目を開けると、彼女が立っていた。
「……」
彼女が親指を立て、人差し指を僕に向け、
「バーン」
と、言った。
僕は、
「ウッ」
と、撃たれた振りをする。
僕の寂しさは、どこかへ消えた。
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