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暗黙のルール。


久しぶりにいく喫茶店。
三ヵ月前までは、週五で通っていた店。

色々あって、しばらく足が遠のいていた。
週五で通っていた時になんとなく暗黙のルールがあった。

アイスコーヒーを注文。
お金を払い、お釣りをもらう。その際に、レシートはつけない。
この「レシートをつけない」がルール。
店のおばちゃん店員と無言で決められた約束。

レシートがつくと、お釣りを財布に入れ、そして、レシートを「レシート不要の方はこちら」と書かれた小さな箱に捨てる。
この箱が小さいので、うまくレシートを入れられない。ペランと折れたり、はみ出たりして、ちょいイラっとする。
いつからか、おばちゃんは何も言わず、レシートを渡さないようになった。
僕も何も言わずそれを受け入れた。

そして、アイスコーヒーを手にして、隅っこの席に座る。
そこで約四十分ボケーっとする。

それが、この店と僕との日常であり、距離感。
たまに臨時のおばちゃん店員が来て、レシートを渡されるときがあると、少し落ち込む。何か悪いことが起きる予兆ではないかと心配する。
ペランペランと、レシートは箱に入らず、イラっとする。
少し、おばちゃんを見くびり、でも、知らないんだからしょうがないじゃないか、一生懸命仕事しているのだから。と、自分をなだめる時間を消費する。

むむ。

で、久々の喫茶店。
軽く緊張。けど、いつもの顔で。来てますよね、毎日。
みたいな雰囲気で入る。
で、いつものおばちゃん。
けど、三ヵ月ぶりである。日常会話はない。それもルール。
「アイスコーヒーを」
と、言う。
僕はお金をトレイに置き、
おばちゃんはお釣りをトレイに置く。
勿論、レシートはなし。
サッと出されるアイスコーヒー。

密かに心で「おおっ」と思う。が、何も言わない。
でも、会話は出来ているのである。
素晴らしい。と、心で思い、隅っこに行き、ボケーっとする。
三ヵ月か。
夏の匂いがする。


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