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痛み。


痛みを感じたときに、痛みを感じていなかった頃のことを思ったりする。
痛みを感じなくなるといいなぁなんて思うのだけれど、きっと痛みを感じなくなったら、痛みを感じなくなったらいいなぁなんて思いもしないのだろう。

だけど、たぶんそれでいい。

雅人はただ、痛みについて心配されたことについて考えることがあった。
それも女の子だったから嬉しかった。
女の子が、痛みについて、一緒に考え、解決策を考えてくれたこと。

雅人は痛みで動けず、その場でジッとしていた。
そこに女の子が来て、
「大丈夫ですか?」
と尋ねた。
「大丈夫です」
と雅人が答えると、しばらく考え事をするような表情を浮かべ、
痛みに手をしばらく当ててくれたこと。

雅人は一瞬痛みがなくなった気がした。
だけど、やっぱり痛みはあった。

「ありがとう」

記憶はまばらで、いつのことで、何の痛みで、その後、どうなったのかすら思い出せない。
ただ、痛みを心配されたことがあった。
そして心配してくれたのは女の子だった。

その漠然とした記憶が少しだけ、雅人の痛みを和らげる。
痛みを感じている間だけ。




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