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ボルシチを知らずに彼は死ぬでしょう

2024年5月なかば

「あれって女の子の店でしょ」と、夫が言った。

スープストックトウキョウの好きなスープを聞いた時だ。
「行ったこと無い」という夫に最初に思ったのは、へ?(スープストック)東京なのに?店名に東京ついちゃってるし、あなたは東京出身なのに?で、「女の子の店でしょ」と言われてまた、へ?っと思った。

けれど確かにあの店で男性1人客に出会ったことが無い。かも…いや…今日いた…あれは…あれは…モデルみたいな外国人男性!

夫と付き合って16年、今となっては同じ人間なんでは?ってぐらいに同じものを見て同じ場所で同じ空気を吸って生きている様に思っていた。
ここには愛も恋も存在せずに、実はおんなじ個体じゃなかろうか!と思ってた。のに。
こんなにも生きてる場所が違うとおどろく。

スープストックトウキョウに行か(け)ない夫は、それ以上におしゃれっぽい店にもたぶんいけないし、私は夫以外(友達)とおしゃれっぽい店にいくし(その方が楽しいから)、だからたぶん、ボルシチもガスパチョもスリランカカレーも夫は食べないで死ぬ。彼は知らずに死んでしまう。(すごい偏見)

女性の進出が進んでいるからか、世の風潮か…いや、たぶん女の方が圧倒的に図々しいのだと思うのだけれど、若い頃に感じていた様な「こりゃ1人じゃ入れないな」という店がほぼ無くなったように感じる。
…禁煙が進んだってのもあるかなぁ。と、昔都庁の1階にあったタバコもくもくのカウンターだけの狭い喫茶店を思い出しながら考えた。(あそこ入れなかったなぁ)

おやじギャルとか山ガールとかおっさん女子とか、ギャルとかガールとか耳障りの良い言葉をひっつけて、じわじわと女は生きる範囲を広げている。あまつさえ、おじさんしか居なかった様な居酒屋に入る事が『おしゃれ』と主張し、おっさん女子を『モテ』につなげる。付加価値まで付けて(まじで図々しく)女(おばさん含む)は生きる範囲をじわじわと広げてつづけて…ブラックホールみたいだな(なんか壮大)。

反対に『おじさん』には『入れない場所』がいまだ存在する上に、こちらも世に『おしゃれ』という価値が根付けば根付くほど、その範囲はじわじわと広がっていくみたい。オゾンホールかよ。…温暖化とかの話だっけ?

夫の見ている景色を私は全然見えてなかったんだなぁ。が、先週の話。

ボルシチもスリランカカレーもガスパチョさえも食べた事無い夫は、週末、ひとりでラーメン屋に行った後に新しいバイクを買ってきた。
「これだよ」見せてくれたバイクの良さは、全然、これっぽっちも、ちっとも、わからなくって。あ、私たち断然1の個体じゃ無いじゃん。と思う。
私たち!それぞれ!別の!人間だった。

スリランカカレーにハマって、今日もスープストックトウキョウに来た。…店内に男性はいない。
(私が行ってる新宿店だけかもしれないです)

ボルシチを知らずに彼は死ぬでしょうラーメン二郎を知らない私と

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