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『天国へ届け、この歌を』スマホ版

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#スマホ小説

短編小説『美しさが理性を封じ込める』

激しくなった雨に耐え切れなくなり、私たちはエデンの園を追われるアダムとイブのように、あの…

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短編小説『一人ぼっちの寂しい帰り道』

オトーサンに会えない。 オトーサンは本当のお父さんではありません。 本当のオトーサンは、…

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短編小説『アダムとイブの食事の風景』

哲学者が本を読んでいるときの顔って、こんな顔なのだろうと思う。 オトーサンは、気難しい顔…

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短編小説『内なる悪を打ち消してくれるもの』

それにしても、香田さんの作った料理はおいしい。 お箸とお茶碗の重量感がいい。この重量感が…

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短編小説『今のワタシを見て欲しい』

ご飯と味噌汁、冷奴、いんげんの胡麻和え、そして鯖の煮付け。 こうやって料理を並べてみると…

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短編小説『おいしいよりも美しい』

明かりを消すと、キャンドルの光に命が宿った。 「頂きます」 生成り色のリネンのテーブルク…

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短編小説『暗闇の中で浮かび上がる幻』

私は、涙を流す香田さんの姿が美しいと感じた。 何の理由もなしに、美しいと感じた。純粋、無垢なものが、ただ単に美を認識ように、美しいと感じた。 以前にも、彼女の涙のあふれている瞳をどこかで見たことがあるような気がする。それがどこか、思い出せない。そんなことは、あるはずがないのに私の記憶の中に残っている。でも思い出せない。遠く離れた処から見ているのだが、記憶には目の前で涙を流している香田さんがいる。 確かに、目の前で涙を流している香田さんがいる。 いったい私は何処に行った

短編小説『涙の中に見出したもの』

ご飯と味噌汁、冷奴、いんげんの胡麻和え、そして鯖の煮付け。久々の食事らしい食事。 私は、…

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短編小説『わたしを包んでくれる人』

部屋の中に、あのお父さんの懐かしい匂いが満ちてきた。 ワタシは今、すごく幸せを感じる。 …

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短編小説『宴のしたく 後編』

香田さんの歌が終わった。終わると同時にレンジのスイッチを切った。 彼女は、何事もなかった…

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短編小説『宴のしたく 前編』

「優しいね」 私のテーブルクロスが上になるように重ねてくれた礼を言った。 「狭くって、す…

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短編小説『涙と鯖の煮付け』

娘のカンナは、お友達と食事をして帰るので今日は遅くなるという。 今夜は一人きりので過ごさ…

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短編小説『タータンチェックのスリッパ』

「お父さん、ただいま」 声には出さないけれど、いつもそんな気持ちでインターフォンを押す。…

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短編小説『ただいま,お父さん 』

ずっとオトーサンとこうやって一緒に歩いていたかった。 幻想を打ち消すように古い町並みがとだえてきて、現実の世界が近づいてくる。 ワタシの住むマンションも見えてきた。 あたりに漂っていたセピア色の光も、まぶしいくらいの人工的な光に変わってきた。 ふと、オトーサンという存在があれば、もう過去は振り返らなくてもいいのかなと思った。 ワタシはもう後ろを振り向かない。前を向いて生きてゆこう。 気がつくとワタシが住むマンションの前に来ていた。 「こちらです」 セピア色の世