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初めて会う

2003年12月

クリスマスでも大晦日でもない、なんでもない日に私たち6人家族は1つの家で暮らすようになった。

まだ3才になりたてほやほやの私は、これから共に暮らす祖父母のことなど赤の他人だと思い込み、持前の人見知りも発揮し、ずっと母の後ろに隠れていた。


弟が今年5月に生まれ、タイミングもよく皆で暮らすことが決まったのだ。どうせ引っ越してくる前は記憶に残るような仲の良い友達はいなかったし、このタイミングでこっちへ来ても問題ないと両親は思ったのだろう。父も仕事を早々と見つけ、勢いよく母の地元にやってきた。

大人の都合で住む場所が変わるなんてありえないわ、そんなこと思うわけもない3才の私と、人を人だと認識していないであろう弟は、大人より大人しくしながら車に揺られ、疲れ、泣き、見覚えのない祖父母と会った。

その時の祖父母の印象など覚えていない。ただ、まだ家族じゃない他人であるという心の1枚壁は確かにあった。その日の夜は初めて見る祖母の手料理も並んでいた。もちろん、味など覚えていない。

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