見出し画像

アメリカの大学のオリエンでドラァグショーをみた話

カリフォルニア大学バークレー校に一年交換留学をしています(現在進行形)。
オリエンテーションでドラァグショーを見た経験は、私の中でmind-blowing(直訳すると、心が吹っ飛ぶって単語。すっごく印象的・刺激的って意味。)だったので、細かく書いていたらかなり長くなりました…

一応章分けしたので、気になるところだけでも読んでいってください。
ジェンダー・セクシュアリティ研究専攻の私が知識をひけらかしてるところが多々あるのですが、私的にすごく面白い話だと思って書いているので、学術的な部分もぜひ読んでみてほしいです。


①はじめに

オリエンについて

授業が始まる前に、新入生・編入生・留学生を対象としたオリエンテーションが一週間ほどあって、朝から夜までイベント盛りだくさんでした。

例えばどんなイベントがあるのかというと…
①色んな偉い人たちが挨拶する
②キャンパスツアーをしながらキャンパス内の噂を教えてもらう(ここの丘を上から下まで転がったらいい点数取れるとか、この上を踏んだらGPA4.0取れない、踏んじゃったとしても30秒以内にあそこの銅像を触れたら大丈夫、この銅像にキスしたらいい点数取れる、とか、オリエンテーションのグループリーダーによって紹介される噂は違います笑)
③Oakland Zooに行ったり、サンフランシスコの美術館に行ったり、グループによって違うけどバスで近隣のところに連れてってもらう
④学校にあるResources(カウンセリング、アカデミックアドバイジングとか)を紹介する演劇(演劇!!!)を見る
⑤企業のGiveaways(缶の飲み物もらったり、IKEAのバッグもらったり、無印のペンもらったり)に参加する
⑥ナイトプログラムとして、Improv Show(アドリブのコメディ劇みたいな感じ)を見る、皆でカラオケする、カーニバル(ロデオマシン=Mechanical Bullに乗ったりできる)にいく
…とか、もうあげたっっくさんのイベントがあります。

とにかく、ナイトプログラムのうちの一つに、Drag Showっていうのがありました。ドラァグクイーンのショーのことです。
私はICUでジェンダー・セクシュアリティ研究を専攻していて、UC BerkeleyでもGender and Women's StudiesとLGBT Studiesを勉強する予定です。
なので、ドラァグクイーンには前々からとても興味がありました。

ドラァグクイーンについて

ジェンダー系の論文でも、Dragの存在はよく登場します。
クイアカルチャーとして重要な存在で、Campと共によく紹介されます。

Campとは???っていうの、NY Timesの説明を貼っておきます↓↓

In 1964, Susan Sontag defined camp as an aesthetic “sensibility” that is plain to see but hard for most of us to explain: an intentional over-the-top-ness, a slightly (or extremely) “off” quality, bad taste as a vehicle for good art.
1964年、スーザン・ソンタグはキャンプを、目に見えはするが、ほとんどの人には説明しにくい美的「感性」と定義した。意図的な大げささ、少し(あるいは極端に)「ずれた」質、優れた芸術の手段としての悪趣味。

“Notes on ‘Camp,’” her 58-point ur-listicle, builds on that inherent sense of something being “too much,” and also fences it in. Camp is artificial, passionate, serious, Sontag writes. Camp is Art Nouveau objects, Greta Garbo, Warner Brothers musicals and Mae West. It is not premeditated — except when it is extremely premeditated.
彼女の58項目からなる「『キャンプ』についてのノート」は、何かが「やりすぎ」であるという本質的な感覚を土台とし、またそれを囲い込む。キャンプとは人工的で、情熱的で、真剣なものだ、とソンタグは書いている。キャンプとは、アール・ヌーヴォーのオブジェであり、グレタ・ガルボであり、ワーナー・ブラザーズのミュージカルであり、メイ・ウェストである。極端に計画的なものを除いては。

https://www.nytimes.com/2019/05/04/style/met-gala-what-is-camp.html

【補足2024/09/02】
日本語のwikiが丁寧でわかりやすく書いてあったので貼っておきます↓

まぁつまり、Campとは、やりすぎで大袈裟な美的表現のことを指すってことです。多分。難しくて完璧に理解できていないので、私の今後の課題です。

けど、Campとドラァグクイーンが繋がるのはなんとなくわかりますよね?
ドラァグクイーンは、女性性をやり過ぎなほど大袈裟に表現していて、もはや女性性とは??ってことで、その存在についてがジェンダー研究の学術論文とか研究書とかでよく分析されています。

なので、ジェンダー研究を専攻している私は、ドラァグショーをいつか一度はみてみたいと以前から思っていました。

だからオリエンで、今日はドラァグショーがあるよってリーダーが教えてくれた時は、いつもの12倍くらい(リアルな数字)の声量で、「I'm down!!!!!!!!(行く!って意味。このフレーズ知らないと、Downって行かない感じかなって思っちゃうよね)」って言いました。
これまでは、毎日朝8時半くらいからオリエンの活動が始まるので、もう夜には疲れていて、夜は早く帰りたいタイプで、全くナイトプログラムには参加していませんでした。だけどこんなチャンス、逃すわけには行かない!

②初めてのドラッグショー

始まるまでの苦労…

オリエンのグループでご飯を食べ終わって、7時半すぎくらいに会場に行くと、もうすでに長蛇の列がありました。8時半開場、9時スタートなのに。結局この日は、収容人数600人くらいのホールなのに、入れませんでした。

ちなみに、このホールは学校の施設で、普段からドラァグショーを行っているところではありません。あくまでも学校のイベントとして、ドラッグの人を呼んだだけです。

ドラァグショーは二日連続あるようだったので、この日は代わりにImprov Showにいきました。
そして二日目。7時くらいに行って、長ーいこと待って、入れました。この日も、並んでいた人たちの半分くらいは入れなかったようです。

なんでこんなに長々と、入れるまでを書いているかというと、ドラァグショーがすごく人気あったんだよってことを伝えたかったからです。
学校のイベントで無料だとしても、こんなに並んでるのすごくないですか???

9時から始まる予定だったけど、実際始まったのは9時15分くらいでした。まぁもう慣れたけど、大体どこもこんな感じです。ルームメイトが、「パーティはいつもちょっと遅れて始まるから、時間通りに行っちゃダメだよ」って教えてくれましたが、どこでもそうです。バスもイベントもパーティもグループとの集合時間も、皆、全部ちょっと遅れてる。😠

4人のドラァグクイーンたち

まぁとにかくショーは始まって、ドラァグクイーンが一人ずつ出てきて、それぞれ2、3曲踊って、インスタを告知して、次のドラッグの人が出てきて…って感じでした。衣装替えもして、2パターンずつ見せてくれました。

場を仕切ってるのは、Carnie Asadaさん。名前的に、ルーツが日本系なのかなと思ったら、メキシコ料理のCarne Asada(カルネ・アサーダ)から来てるらしいです。初耳の料理名。盛り上げ方が上手で、我々客は皆、フーーーー⤴︎⤴︎⤴︎って感じでした。

次に出てきたのがHera Wynnさん。黒髪が靡くのが美しくて、ガチ恋案件でした。私はHeraさん推しです。Truly an entertainer…って私は思いました。みんなからもらったチップを曲の最後に全部ブワって撒き散らしたり、コインを渡してきた人に対して🤨って顔で見つめた後に持ってたチップのうちの一枚を返したり(札を持ってないと思ったのかな笑)、面白い人でした。

3人目が、Mojo Carterさん。キレッキレのダンスがかっこよかったです。全身オレンジだったり、全身ピンクだったり、服もすごく可愛かったです。アメリカはどんな服でもプラスサイズが売ってるし、当たり前に体型も多様だよねって感じがとても好きです。

4人目が、Teresa Giudcoochieさん。Carnie Asadaさんが一人前のドラァグクイーンに育てたらしく、mother/daughter呼びしてました。2つ目の衣装のでっっかい胸がすごかったです笑

すっごい。

③驚いたこと

生徒がチップを渡す!?

学校のイベントとしてやっているショーで、チップを渡すんだ!?っていうのに驚きました。Bay Area育ちのアメリカ人の友達も驚いていたので、カルチャーショックとかではないようです。
10ドル札を渡してる人がいて、「1ドルとかでいいのよ」ってドラァグクイーンも言ってました笑

学校でドラァグショーを開催する!?

これは多分、このnoteの記事タイトルを読んだときに皆思ったと思います。
けど、「こんなことは他のどこの大学でもやってない」ってみんな(オリエンのリーダーや編入生の生徒たち)が言ってました。
カリフォルニア大学はいろんなキャンパスがあるんですが、ショーとか好きそうなLAでさえやらないそうです。
ちなみに、サンフランシスコは、「ゲイの首都」とも呼ばれてるくらい、LGBTQIA+フレンドリーな場所です。そんなベイエリアにあるバークレー校だからなのかもしれません。

また、バークレー校は、Gender and Women's Studies と LGBT+ Studiesどちらも持っていて、あのジュディス・バトラー(この界隈で知らない人はいないくらいのレジェンド)がいる大学(教えてるのは文学科だけど…)で、ジェンダー・セクシュアリティ研究界隈の最先端のを走っています。
そんな大学だからこそ、ドラァグショーを開催することは、意味があるんだと思います。ドラァグクイーンたちを含めたLGBTQIA+の人たちに対する肯定的な姿勢を示しているように思えました。

また、ドラァグクイーンの方たちが、「この学校にいるクィアの人たち、なんか相談があったら、インスタからDMしてね‼︎」と言っていました。生徒の支援にもなっているなんて、なんて素敵なイベント🥺と思いました。

ドラッグクイーンのジェンダーについて

一応明記しておきたいのは、【ドラァグクイーン=ゲイ】ではないです。全てのドラァグクイーンに共通しているのは、仕事として女性らしくドレスアップして踊ってるってことだけ。
ドラァグショーはゲイのクラブが発祥なので、ゲイの方も多いでしょうが、ドラァグクイーンには様々なジェンダーとセクシュアリティの人がいるっていう認識が正しいと思います。

また、ドラァグクイーンたちは、このようなセクシーでときに卑猥なドラァグショーを、必ずしもアイデンティティの表現として行なっているわけではないと思います。もちろん、この仕事に誇りを持ち、楽しんでやっているでしょうが、あくまでも仕事としてのスタイルだと思います。ここら辺は当人ではないので勝手に私の考えを書いているのですが、知り合いに「存在は認めるけど表現方法はこれでいいのかわからない…」と言われたので、それに対する返答として書いています。

私は、ドラァグショーを見る前は、ドラァグクイーンたちは、多少Transvestite要素も持ってる人たちなのかな、とは思っていましたが、日常から女性の格好をする人たちではない、というイメージがありました。
Transvestite(トランスヴェスタイト)は、異性装を好む人のことです。
ジェンダー・セクシュアリティ研究を詳しく学んでいると、LGBTQIA+の「T」は「Transgender」、「Transsexual」、「Transvestite」、「Two Spirits」の4つが出てきます。(知らないのあったら調べてみてね、面白いので)

だけど、Heraさんが、「私今ホルモン治療6ヶ月目なのー!」って言っていて、トランスの方もいるんだ!って気がつきました。最高だったのは、Heraさんがそう言った後に、オーディエンスの皆が、フーーーー⤴︎⤴︎⤴︎👏👏ってなったところです。皆が心から応援しているのが伝わってきました。

このとき私は泣きそうになっていました。トランスの人たちは、生まれながらに、シスジェンダーだったら経験しなくていい壁を乗り越えなくてはなりません。手術やホルモン注射を長期間続けるなんて、お金と時間と身体的・精神的苦痛など、色々とあるでしょう。そんなことを考えていたら、尊敬と感動とか色々な気持ちが溢れて、泣きそうになっていました。


私の初めてのドラァグショーはこんな感じでした。
ほんとに楽しかったです。

いつか、本場のドラァグショーにも行ってみたいと思っています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?