見出し画像

あんぱんのヒーローに郷愁を誘われるという話

例えば祝日で休みの金曜日。
つけっぱなしになっていたテレビからアンパンマンのOPが流れてくる。
そうすると、私の感覚は一気に小学生の頃に戻ってしまう。

小学生の私は時々、学校に行くのが嫌で、嫌すぎて、本当にお腹や頭が痛くなるような子供だった。
別にいじめられていたとかではなくて、この授業どうしても受けたくないなみたいな、大人になった今思い返すとただの我が儘、当時の私からしたらそれなりに切実な理由だった気がする。
(ほかにもその時々で何かあったはずだが思い出せない)
(あと念のため弁明しておくのだけど、本当に発熱や腹痛でどうしようもない日もそれなりにあった)

母親も(そしてもしかしたら先生も)私のそうした甘えを察していたと思うのだが、母親はそういうとき、あっさりと休ませてくれるひとだった。
ありがたいことである。

めでたく一日休みを手に入れた私は安堵からか大抵の場合少し元気になって、でも子供なりの後ろめたさから大人しくリビングのソファでぐったりと寝転がっていた。
賑やかしにテレビがついていて、教育テレビの人形劇なんかをぼんやり見て過ごす。
午前中はそうやって怠惰に過ごし、午後の長い時間をどうやって消費していたのかは残念ながら覚えていない。
録画したアニメを見ていたかもしれないし、本とか漫画を読んでいたかもしれないし、単純に寝ていたかもしれない。
(今の私からしたら羨ましいこと限りない)

ところで、私が子供の頃のアンパンマンは夕方に放送していたはずだ。
現在の午前中に放送時間が移ったときにはもう、私はアンパンマンを見なくなっていた。
テレビで流れていたら目が行くけど、録画したり、放送時間になったらテレビをつけるような見方はしなくなっていたのだ。
そもそも、アンパンマンが午前中に放送するようになったと知ったのも大学生になってからのことである。

つけっぱなしになっていたテレビから唐突に流れる『アンパンマンのマーチ』。
映像は多少変わっているはずだが、雰囲気と曲は昔から変わらぬまま。
そうするともう、小学生のとき、学校を休んでぼんやりとソファに転がっていた頃がよみがえる。
そして、もう二度と戻れない過去の懐かしさと寂しさでいっぱいになってしまう。
(休みの日にだけアンパンマンを見ていたわけではないはずなのだが、記憶の回路がそこに繋がってしまっているらしい)

今や『アンパンマンのマーチ』や『アンパンマンたいそう』で情緒がくちゃくちゃになったり、多少体調がよろしくなくても、嫌なことがたんまりあっても這うようにして仕事に行くようになったり、随分と遠くまで来てしまった。
変わらないのは彼らの絵柄と敵キャラの異様な怖さだけではないだろうか。


普段は小説書いてます。
懐かしさや寂しさが漂う作品もありますので、もし興味とお時間ありましたら、以下からぜひ。

https://sutekibungei.com/users/oknm3

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?