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story 決別

年末から年明けはずっと鑑別所で過ごしてもうすっかり1月半ばだ。金髪スパイラルパーマにしてたけど髪色がプリン状態になってしまいみすぼらしい。出所翌日最初に向かったのは近所の床屋。髪をバッサリ切って懲りずにまたパンチパーマにした。笑 髪色も黒染めした。何故か出所するとパンチをあてたくなってしまう。笑       その後は彼女のサヤとあって1か月ぶりのエッチをした。「やっと帰ってきた〜」と言ってくっついてくる。髪型も変えたしとりあえずイオンに行きプリクラを撮ってフードコートでスパゲティを食べた。 捕まってる間は大して食べる事が出来ないから物凄く美味く感じる。         サヤはもう少しで受験だから夕方から塾に行くという事で夜は成塚と合流してまた焼肉を食べた。久しぶりのシャバを満喫しようと仕事は1週間後から行く事にした。俺が捕まってる間の初日の出暴走なんかの写真を自慢気に見せてきた。笑 一個上の先輩達は初日の出の集会を最後に引退をして新しい代になったみたいだ。総長は高橋で副総長は少年院に入ってる秀人に決定したらしい。新たな代の隣町の暴走族は同い年のメンバーが成塚含めて7人しかいないみたいで暴走族も人手不足が深刻みたい。笑 成塚は夜中からは集会があるみたいだったからこの日は早めに帰宅して家で飯を食った。母親も出所してきて嬉しそうな顔をしてくれる。出所してから1週間はまた好きなものをたらふく食って隣町の天野先輩が大好物の焼肉をご馳走してくれたりした。地元の尾島先輩は未だ連絡がつかない。なんかあったのかな?      逮捕される原因となった同級生の竹田の家の前を単車で流すともう既に引っ越していた。あんな事あればそりゃ引っ越すよな。。なんだか少し寂しい気持ち。

                      出所後まもなく1週間というところ、隣町の安田からいきなり電話がかかって来た。時間は深夜2時だ。                   「龍二!成塚と川野が事故った!川野も成塚も意識不明だって!」それを聞いた俺は飛び起きてすぐに隣町の市民病院に向かった。安田も暴走族を抜けて気まずさもあるだろうが駆けつけていた。リョウもこの日が鑑別所から出てきた日だったが急いで駆けつけてきた。みんな仲間思いな奴らだ。病院の待合室には隣町の先輩達や現役の高橋だったりが大勢いた。成塚と川野の両親も心配そうな顔で駆けつけていた。どうやら集会中に単車で大型トラックの横をすり抜けようとした所を巻き込まれて2人ともガードレールに挟まれる形になってしまったらしい。集中治療室の前で2人の無事をみんな固唾を呑んで待ってる。みんな「アイツらがこんなんで死ぬわけねぇよ」と口々に言ってる。                    到着から2時間後、ドクターがやってきて俺達にこう言った。                 「川野さんに関してなんですが、1月23日午前3時57分。息を引き取りました。」それを聞いてみんな「なんとかできねーのかよ!」とドクターに詰め寄るが「最善は尽くしましたが。。」と言い川野の両親は泣き崩れている。続けてこう話した。「もう1名の成塚さんに関しても意識はありますが非常に厳しい状態が続いています。もし無事だとしても後遺症が残る可能性も考えられます」これを聞いて成塚の親も泣いている。成塚は結局朝まで意識が戻らず成塚の親に帰るよう話され無事を祈り一旦みんな帰宅する事になった。居ても立ってもいられず俺はそれから毎日病院に朝から顔を出した。安田や高橋とかも何人か来ていた。  3日後の朝、成塚の親から連絡が来た。意識が戻ったみたいだ。それを聞いた俺は嬉しくて飛び起きて再び病院に向かう。病室に入ると仲間達に囲まれた笑顔の成塚の姿があった。それを見て本当にホッとして安堵のため息が出た。元気そうないつもの成塚。親もニコニコしてるし周りの仲間もみんな笑顔。成塚は後遺症の心配もなくリハビリをすれば退院できそう。みんな嬉しくて病院だと言うのにでかい声で話してる。少し経って成塚の親が川野の事を説明した。みんな一気に静かになりそれを聞いて成塚もボロボロ涙を流した。それに釣られて俺や先輩達もみんな我慢してた涙がボロボロ溢れ出した。

成塚と川野は幼稚園からずっと一緒で幼馴染だ。俺も成塚と仲良くなってからはよく一緒に遊んだりしたけどこの2人は本当に仲良し。かなりヤンチャな奴だけど。隣町のみんなと夜中にプールに侵入した時に焚き火をしようと言って物に火をつけて大騒ぎになった時もいつも1番最初に手を出してた。そしてめちゃくちゃ喧嘩っ早い。でもめちゃくちゃ仲間思い。みんな悲しんでるけどきっと成塚は誰よりも感じる事があるんだろうな。みんな多くは語らずただただ涙を流してた。     それから何日かして俺はリョウと一緒に事故現場に花を置きに行き、川野に向かって手を合わせた。道路沿いに既に花とかタバコが沢山ある。 地元に戻る途中、家の近くの川っぺりに停車した。夕日が沈む高速下でリョウと缶コーヒー片手にタバコ吸いながらこんな話をした      「なんかさ、呆気ないな。」俺が言うと「そうだな」とリョウは返事した。          俺はリョウに「お前絶対死ぬんじゃねーぞ」と肩を突っついて川に落とそうとしたらよろけながら「死ぬわけねーだろ」なんて突っつき返してきた。                    葬儀は成塚の退院後に執り行われた。みんなもう沢山泣き切って笑顔だ。           「みんなで笑顔で送ってやろうぜ」と式に参列した。両親はやっぱり涙してる。式が終わりその日はみんなで川野の遺影を持って昼から隣町を流して花を手向けた。成塚は沢山考えてこの日で暴走族を引退する事に決めたらしい。理由を聞くと「このままじゃお父さんとお母さんが可哀想」と言ってる。見かけによらない事を言い出すやつだ。笑                   現役のメンバーやOBの先輩達で成塚を非難する人間は1人もいなかった。最後の走り、成塚はすごく楽しそうに青のRZ250で風を切ってたな。

今、俺達はこうして笑ってる。けど仲間は同じ17歳の若さにしてあっちに行ってしまった。なんとも言えない初めて味わう感情。なんでアイツじゃなきゃいけなかったんだろう。暴走族って本当に怖い。暴走族だけに限った事じゃないけどバイクに乗って危険な運転したり暴走するってのは常に死と隣り合わせだ。ついこないだまで一緒に笑ってた奴が突然いなくなる。そして仲間や家族、関わった沢山の人を悲しませるんだよな。    あっちでも元気でやれよ。お前の分まで俺達は一生懸命生きるから👍

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