台湾のパンダ事情

台北市立動物園ではパンダ館を設けており、館内に4頭のパンダの親子がいる。台湾のパンダの歴史は2008年に中国から寄贈された団団(トゥアントゥアン)と円円(ユエンユエン)のつがいから始まる。当時、台湾は国民党・馬英九政権の親中政策に基づき、同12月に受け入れた。

中国が台湾へ団団と円円を寄贈する決定には象徴的な意図が込められていた。2頭の名前を組み合わせた「団円」という中国語には、家族睦まじく一家団らんの様子を言い表す意味が込められている。中国と台湾は仲のよい家族だという算段があったのだ。中国主導の台湾統一プロパガンダであるとして、台湾独立派からは反対の声が多かった。

しかし、09年の一般公開後は、またたくま動物園の人気者になり、台湾ではパンダ・フィーバーが起こった。パンダを目当てに、動物園の来場者数は多い時で、1日およそ2万人に及んだという。その後、人工授精で、円円は13年7月に第1子の円仔(ユエンザイ)、20年6月には第2子の円宝(ユエンバオ)を出産した。

中国政府は、希少動物を保護するワシントン条約を基に、通常パンダを他国に送る際、貸し出しのみを行っており、貸出先で生まれたパンダは中国に返還する必要がある。だが、団団と円円は例外だ。中国から贈り物として台湾にやってきたため、生まれた円仔も円宝も台湾に残ることが出来たという。こうして、動物園のパンダは4頭になったのである。

さる8月下旬、団団に異常行動や食欲の減退が見られた。精密検査の結果、脳に障害を負っていることが判明したという。18歳の団団は人間の年齢に換算すると60歳近いことから、病状が悪化すると命にかかわる危険もある。園側は、08年当時から、中国側のパンダ専門家と連絡を取り合い、長年にわたってパンダの成長を見守ってきた。今回もビデオ会議などを通じて意見交換しながら、団団の病状を食い止める努力をしている。

台北市立動物園は、台北捷運(MRT)文湖線終点・動物園駅すぐの場所にある。敷地面積は上野動物園の約12倍だ。パンダの見学は上野より手軽にできる。先日、2年7カ月ぶりに那覇と台湾を結ぶ国際線が再開した。次回帰省する際は円宝に会いに行く予定だ。

パンダほど政治力の持つ動物はいないと思う。皆さまも台北へ旅行する機会があれば、動物園まで足を延ばし、人気者で愛くるしいパンダに会ってみてはいかが。(辺野喜 陳 宝来)

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