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No.1054 父と共に生きる

宣伝会議賞は、月刊「宣伝会議」が主催する公募広告賞です。その歴史は古く、1962年(昭和37年)の創設だそうです。「コピーライターの登竜門」として高く評価されています。

次は有名なキャッチコピーですが、覚えておいでですか?
第28回(1990年)受賞者:鎌田 孝史さん
明日の自分に借りるのだ。
アコム アコムキャッシング

この広告賞は今も健在です。近年のいくつかのグランプリを紹介します。
第60回(2022年)受賞者:守本 悠一郎さん
「なんでお湯出ないんだよ」
「なんでお湯出ると思うんだよ」
三浦工業 暮らしを支える産業機器、その機器を支える「フィールドエンジニア」の魅力が伝わるアイデア。

第58回(2020年)受賞者:田中 貴弘さん
なかなか見どころのある
悩みをお持ちですね。
商工組合中央金庫 中小企業と商工中金のコラボにより実現できる社会についてのアイデア

第57回(2019年)受賞者:笠間 悠さん
元彼の目覚ましが、
夫を叩き起こし続ける。
パナソニック 世界No.1長もち乾電池「エボルタNEO」の魅力を伝えるアイデア

第51回(2013年)受賞者:高崎 真梨子さん
おかん、うまい。
でも、多い。
旭化成「サランラップ」

ちょっと年代が飛びますが、
第40回(2002年)受賞者:田島 洋之さん
お母さん、そのお皿の洗い方はなに?
学生援護会 西日本アルバイト発見マガジン アン

この第40回の優秀作品には、こんなのもありました。
父さん、あなたの遺伝子と1年間闘ってみます。
これは、予備校のキャッチフレーズとして使われたそうです。ちょっと哀切さもあるけれど、奮起や決意が感じられ、堂々たる浪人宣言です。むしろ清々しくさえ思われます。自分は決して一人ではない。自分の内なる父が共に闘ってくれるから…。そんな意気を感じます。

この言葉に出合うまで気づきませんでしたが、考えてみれば、48年前に54歳で急逝した父と今も一緒に生きているのかもしれません。私が考えたり決めたりしていることの中にも、父の遺伝子が関わってくれているのだなと思うと、なにか嬉しく有り難いような気持ちになりました。

「奥様は魔女」に登場する、真面目でお人好しで愛すべきコピーライターの夫・ダーリンしか知らない私から見ると、こんなに冴えわたり、気の利いた言葉を生み出すコピーライターのシナプス君はどうなっているのか、その人の頭の中を覗いてみたくなるのは、こんな時です。


※画像は、コピーライター・川中紀行さんの、タイトル「文化が生まれる瞬間を、見た。」の1葉をかたじけなくしました。お礼申します。
引き寄せられる力のあるキャッチコピーですね。