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【okidesign作品集】夢咲くら館のサウンドマスキングとサウンドスケープデザイン

皆様お世話になっております、株式会社okidesignの沖田純之介です。
私の自己紹介は以下にリンクしてあります。


夢咲くら館

千葉県佐倉市に新しくできました「夢咲くら館」。複合施設との事で託児所、図書館、地域の歴史展示、カフェコーナー、ライブが行えるステージ、大きなプロジェクターとスクリーンが備え付けられた施設です。さらに駐車場も3時間まで無料、高速WiFi完備、トイレも広くて綺麗。このなんでもある施設ですが、従来の静かな図書館とは違い、「賑わいを作りたい」との事。託児所と図書館が同じフロアにあり壁も無い上、床が絨毯では無い為に、子供の声が図書館側へ響いてしまいます。私は子供が好きなので声は気になりませんが、嫌な方も多いと思います。そこで静かに利用したい読者の妨げにならないようにサウンドマスキングを導入させて頂きました。

2023年3月オープンの夢咲くら館

サウンドマスキングとは

サウンドマスキングとは、不快音に対して、別の音を当て、音を気にならなくする技術でトイレの「音姫」と同じです。音姫は流水音を使って不快音をかき消してますが、図書館ではどんな音を使えば使用者の音を消せるでしょうか。実際にノイズキャンセルをゼロにする事は不可能と考えており「気にならない程度まで緩和する」という考えを前提にサウンドマスキングを設定させていただきました。

図書館っぽくなくて良いですね。

マスキングはBGMではダメ?

一般的なサウンドマスキングは音楽で行うことが多いですね、カフェでBGMが流れているのと同じ考えです。でもこの音楽の場合は好き嫌いが発生する分野なので選択に注意が必要です。読書用音楽といいながら主張の強いものもありますよね、気になって読書どころではありません。
以前、ピアノ生演奏のあるレストランに行きましたが、学生レベルの演奏で気になる点が沢山ありました。そこに著名ピアニストが食事に行ってしまったのですがイライラして食事どころではなかったそうです。また、近くの図書館で「読書の為の音楽会」というのがありましたが、演奏が下手で読書どころではなく、すぐ帰宅した事もありました。
このように音楽は趣味趣向と完成度が関係するのでとても注意が必要です。
では完成度の高い音楽ならよいかというと、選曲には深い意味が出て来ます。そこを深掘りしていったりすると、やはり読書どころではなくなってしまうので、利用者が何も考えなくて済む様に、自然環境音が有効と考えております。

自然音録音準備。

自然環境音ならどんなのでもよいのか?

自然環境音の場合「その地域にある自然環境音が重要」だと考えております。佐倉市は子供が少ないのでどこも静か、森も整備されていないので野鳥が少なくとても寂しい音がします。その辺りのことは以下でインタビュー形式でお答えしておりますので、見て頂けますと幸いです。

地域により野鳥の種類や数も変わってきます、佐倉市は静かですから、「図書館に入ったら野鳥が鳴きまくってる」だとおかしい訳ですよね。
このような事から、よく売ってる「環境音CD」を流すととても違和感を感じるのです。「そんな鳥、ここには居ないよ」となってしまいます。JVCさんから環境音をハイレゾで流す装置が販売されてますが、導入した施設に問い合わせると「苦情が入り音を消した」という施設がとても多いのが現状で、聞ける箇所が全くありませんでした。
佐倉市の図書館でも同じような事があり、環境音CDを実験で流していたのです。「佐倉の森はこんなに豊かな音はしない」と感じたので、実際に録音した佐倉市の環境音を流すべきと考えております。

360度マイクやいろいろなマイクを使い録音する。
野鳥の森での録音
ヒヨドリ坂での録音

サウンドマスキングの準備

佐倉の環境音を作るにあたり、弊社で事前録音してあった、佐倉城址公園、佐倉市野鳥の森、佐倉市民の森、ヒヨドリ坂の音をブレンドし、マスキングサウンドに適した音作りを行いました。弊社スタジオは天井にもスピーカーがあるドルビーアトモス対応ですので、天井から音を再生し、読書をしてみて、気にならない音を作ります。
ブレンド具合は、野鳥が鳴くタイミングを調整し、身の回りの不快音があっても直ぐに野鳥の声に癒されるようなタイミングで作ってみました。
予算が許せば館内にマイクを設置し、設定入力を超えたら追加で野鳥が鳴くようなシステムにしたかったのですが、予算の関係で不可能でした。
館内の音の狙いは「窓が開いていてうっすらと外の音が漏れ聞こえる」という想定を作りました。これを夢咲くら館内の外音が届かない、地下1階の相談デスクからのあたりに聞こえるように、天井にスピーカーを数十個配置して、さり気なく佐倉の自然音が流れるようにしております。画像の赤丸のあたりの天井にスピーカーが埋め込まれてます。
また、テラス側は全面ガラスになっており、自然に外の音が入るようになっているのでサウンドマスキングは必要無し。さらに無音がよいという方の為にサイレントルームも用意されております。もっと静かな場所が欲しい方は2階の勉強自習スペースもあります。

サウンドマスキングは赤丸の中
この天井に数十個のスピーカーが隠されてます。
この通路にもスピーカーが隠されてます。

マスキング実行

現在のマスキング音は午前9〜11時が「佐倉の4月の朝方の音」、11〜17時が「佐倉の4月の午後の音」、17〜20時までが「佐倉の4月の夕方の音」。というように切り替わっております。
開館してからも何度も通い、音量設定を細かく行なっておりますが、託児所やお話広場の音が聞こえていても、勉強机では佐倉の自然音でマスキングされるように設定をしております。(土日の賑やかな時間に狙いを定めて設定してます。)
さらに建物外の通路にもスピーカーを隠して入れてあるので、そこでも自然音を流しており、この周辺に以前あった大きな木の雰囲気を再現しております。

他の階では定時になると、ヒヨドリ坂のヒヨドリが鳴きます。

マスキング後

このマスキングサウンドを導入してわかったことですが、地下1階のデスク周りで勉強なさっている使用者は誰もイヤホンで耳を塞いでいないのです。マスキングがさり気なく聞いている証拠だと思います。
対してマスキングを行ってないない2階フロア「佐倉を学ぶフロア」で勉強なさってる方は、殆どの方がイヤホンを使用されてます。このフロアは静か過ぎるのでプライバシー侵害になっているのですね。

自社スタジオで、天井から音を出して自然音をブレンド。

再調整は続く

何度か通って理解した事ですが、17時以降の館内は静かになるだろうと考え小さな音に切り替えていたのですが、実際はまだ騒がしくマスキングサウンドの調整が必要になりました。
さらに現在全館で流れている時報ですが、この周辺のお寺の鐘の音をうっすら流したらよいと考えて、午の九つ暮れ六つの鐘を鳴らしております。これは図書館近所の「教安寺」で実際に録音した音を使っております。教安寺の情報は以下にございます。この鐘の音を聴いてランチに向かう方も多かったので、時報は役にたったなと感じております。

施設の場所

そんな千葉県佐倉市の夢咲くら館、是非足を運んでみて「サウンドマスキング」を体感されてくださいませ!

複合施設 夢咲くら館
住所・電話番号
〒285-0023 千葉県佐倉市新町40の1
電話:043-485-0106
利用時間;午前9時から午後8時
休館日;毎週月曜日 ※第一火曜日 ※ ※祝日の場合は翌平日休館。年末年始、特別整理期間。

荻野目洋子さんの時報

こちらの施設では時報も提案させて頂き採用いただきました。観光大使の荻野目洋子さんにお願いできまして、開館から閉館までの時報を作っております。詳細は以下のリンクをご覧ください!

選書コーナー設置

この図書館にはなんと弊社の選書コーナーもございます。音に関する本の展示なのですが、昨年までは臼井図書館にて設置されておりましたが、2024年度から夢咲くら館に移動になりました。これからも増えて行く予定でありますので、こちらでサウンドマスキングを体験しながら音の本を楽しんでください!


本日はここまでとなります!
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