138.三題噺「万札、攻撃、応援」
生徒会選挙最終日の今日、朝のHRが始まる前に僕と後輩ちゃんは、生徒会室にいた。
もうできる事はないし、待つしかないけど、後輩ちゃんはそうでもないみたいで……。
「万札で、こう……ほっぺを往復ビンタすれば財力の力で屈服させて投票してもらえますかね?」
「それは買収とか賄賂って言うんじゃないかな。よくないね」
「それじゃあ、直接拳で攻撃するとか?」
「うん。やめようか。今日の後輩ちゃんの発想、物騒だよ」
「だ、だって! 不安じゃないですか! 今からでもできることないかなって、時間があるときは絶対考えちゃうほどなんですよ」
「切羽詰まってるね」
「はい。不安すぎて夜しか眠れないです」
「うん、健康だね。よかった」
「先輩は不安じゃないんですか?」
「不安はあるけど、後輩ちゃんほどではないかな。もうできることないしね」
「それはそうですけどぉ……」
後輩ちゃんは机に突っ伏してほっぺたを歪ませた。
「早く解放されたいよぉ……。落選はやだけど……。先輩と一緒の生徒会に入ってもっと一緒にいたいけど……。でも、プレッシャーがきついよぉ……」
後輩ちゃんは不安で幼児退行しかけていた。
「よしよし……あっ」
つい反射で頭を撫でてしまったけど、意外なことに嫌がられなかった。
もっともっとと手に頭を押し付けてくるほど気が滅入っているみたいだ。
これ以上はなんかまずい。
ズブズブに甘やかしてしまいそうな魔力を感じた僕はパッと手を離した。
後輩ちゃんは潤んだ瞳で僕を見た。
「先輩に見捨てられた……。私を捨てないでよ。一生先輩に面倒を見てもらいたいのに」
「はいはい。面倒見てあげるから、いつもの後輩ちゃんに戻ろうね」
「今のは冗談じゃなくて本音だったのに、受け流された……。先輩は生徒会と私、どっちが大事なんですか?」
「え? そんなの愚問じゃない?」
「……え?」
「後輩ちゃんに決まってるじゃない」
責任とか立場とかあるだろうけど、人の方が大切だ。
「緊急事態、いや、きゅん急事態です。きゅん死しそうなほど苦しいです」
「大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
後輩ちゃんはテンションを戻すため、こほんと咳払いをひとつ。
「い、色々冗談言いましたが、先輩のこと、本気で応援してるんですからね?」
「僕も後輩ちゃんのこと応援してるよ」
一緒に生徒会の仕事、できるといいな。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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