162.三題噺「一字一句、両手、裏切り」
僕の隣にはぶすっとした顔の後輩ちゃんがいる。
昨日、先輩に連行されるという形で生徒会の仕事をサボってしまったから、そのお詫びとしてお昼ご飯に誘ったのだけれど、食事が終わってもまだお怒りの様だ。
「ごめんね、後輩ちゃん」
「私がなんで怒ってるかわかってますか?」
こ、これは噂に聞くカップルや夫婦の喧嘩の時に言われるという常套句だ。一字一句違わない。
「えっと……。生徒会の仕事をサボったから、でしょうか……」
「そんなことで私は怒らないです」
「え? じゃあなんで……」
「言わないでおきます。……私よりもあの女の先輩の方に着いて行ったことに嫉妬したなんて言ってもわかってくれないでしょうし」
後輩ちゃんは何かをつぶやいた。
「今日一日、私の言うことをどんなことでも聞いてくれれば許してあげます」
「そんなことでいいなら僕はどんな命令でも聞くよ」
「言いましたね? では、さっそく腕を貸してください」
そう言って後輩ちゃんは僕の腕に抱きついてきた。
「この後はショッピングに付き合ってもらいますからね」
「イエッサー」
今日一日だけは後輩ちゃんの命令は絶対だ。
ショッピングモールについて、目に留まったお店を次々と見ていく。
インテリアショップに到着すると、後輩ちゃんは小さな観葉植物に夢中になっていた。
「満足したので次のお店に行きましょうか」
そう言う後輩ちゃんの視線は名残惜しそうにチラチラとお店の方に戻っている。
「ちょっとお手洗い行ってきていい?」
「はい。いってらっしゃいです」
僕は嘘を着いて後輩ちゃんから離れた。
バレないように移動して、目当てのそれを購入する。
元の場所に戻ると、後輩ちゃんは壁に寄りかかって休んでいた。
「これ、お詫びのプレゼント」
後輩ちゃんが見ていた観葉植物を渡すと、両手を口の前で合わせて、わぁ! と目をキラキラ輝かせた。
こういう可愛らしい一面を見ると、改めて年下の女の子って感じる。
「ありがとうございます!」
喜んでくれたみたいだし、機嫌が治ってくれてよかった。
「明日も遊んでくれますか?」
「ごめん、明日は同クラさんとの予定があるんだ」
「むぅ……裏切りです」
あれ? なんかまた不機嫌に……。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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