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【読書感想】あの素晴らしき七年

あの素晴らしき七年 エトガル・ケレット/秋元孝文 新潮社

帯にも裏表紙にも西加奈子が登場し、さらにはアレクサンダル・ヘモンという人(良く知らない)は「ケレットの文章には魂を癒す力が宿っている」、ニューヨークタイムズは「エトガル・ケレットは天才である。」ロサンジェルスタイムズはケレットを「名人」呼ばわり。

最初のほうを読んでいるときは、ハードルをあげすぎてしまっているかなあと肩透かしをくらうような感じがあった。他の作品を読んだことがなくてよく知らない人のエッセイの序盤で物凄い才能を感じろっていうのも難しい話だ。でもエッセイのいいところは読みすすんでいくうちに小説よりも直接的に作者の人となりに、気持ちに、おかれている状況に触れているような気にさせられるところだ。友達が最近会ったことを話してくれるみたいな、それよりは外向けの、だけどそれよりは頭の中でこねくりまわした思考をあけっぴろげにして教えてくれるような。戦争とあまりにも距離が近すぎる日常のこと、その中で子供が生まれるということ一緒に暮らすということ、生活するということ、友達がいるということ、親が老いるということ。
特に印象に残ったのは、ものを書くということについての話とケレットの父親の話でこのお父さんのことがとても好きになる。そして最後の章の一見ふざけた遊びに聞こえる「パストラミごっこ」にぎゅっとなる。私が何かを詳細に説明するより、気になる方がいれば本書を手に取って読んでほしいと思う。


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