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吾輩は結婚3週間目である。実感はまだない。

約3週間前に僕は結婚をした。

3年付き合った女性と、目黒区役所に行って、婚姻届を出してきた。


「何億枚もコピーされた紙切れ一枚に人生を契約するなんて嗚呼」みたいな歌詞の曲を、去年プロポーズしようと思った時期によく聴いていたが、あれ、本当にそうなんだね。
もう手続きを担当してくれた職員の方の顔も名前も思い出せない。

それはさておき、結婚してからいろんな人に祝福の言葉をいただいた。
お祝いしてくれたみなさん、ありがとうございます。



故郷の家族、親友は僕以上に僕たちの入籍を祝ってくれたし、一緒に仕事をしているみなさんはSlackやチャットワークでお祝いの言葉とスタンプをたくさんくれた。
この頃仲良しのみなさんはTwitterのDMグループで、いつものみなさんはLINEで、どこからか記事を読んだ昔の同僚はインスタでメッセージをくれた。インターネットよ、ありがとう。

中には、それぞれの得意領域や好きなことで僕たちをお祝いしてくれる人たちもいた。

もじゃもじゃ版松尾芭蕉みたいな友達が俳句を詠んでくれた。独身最後の週末にみんなで行った海は最高だった。あの日の風景は正直思い出すだけでちょっと泣きそうになる。すなば、ありがとう。

多才な友達が曲を作ってくれた。なんだそれ。やってることがドリカム。淺野、ありがとう。

中には詩を朗読してくれる方も。彼女には一回しか会ったことないし、あの日僕はけっこう酔っ払っていたので少し恥ずかしいところもあるのだけど、すごく嬉しい。紡さん、ありがとうございます。

いつも遊びに行くスナックでは、ボトルをいただいてしまった。
「けつこん」「おめて”とう」
箕浦さん、ありがとうございます。

Twitterで知り合ったむったさんとランチに行った時には、素敵なイケウチオーガニックのタオルをプレゼントしてくださった。
むったさん、ありがとうございます。

僕たちをテーマにそれぞれの角度から大喜利をしてくれる人がいる。こんなに嬉しいことはなかなかない。それだけですごく、生きていけると思った。みなさん、本当にありがとうございます。

入籍した日、書いたnoteがTwitterのトレンド入りしたり、noteが5月度のおすすめ記事に選ばれたりと、ごく私的なことなのに、話題になってしまったみたい。なんかすんません、みなさん、本当にありがとうございます。

懐かしい人から会ったことない人まで、想像以上にいろんな人からお祝いのメッセージをいただいてしまって、嬉しさと恥ずかしさと恐れ多さとなんやらかんやらでワタワタしているあいだに結婚してから3週間が経った。

友達に会った時に「結婚おめでとう」と言われた後にほぼ間違いなく話題にあがるテーマが「結婚して何か変わった?」である。

毎回答えには悩むのだけど、何かががらりと劇的に変わった実感は正直なところあまりない。

元々一緒に住んではいたし、仕事や住む場所が変わるわけでもない。
今も僕は6時に起きて、サカナクションの新しいCDを聴きながらこれを書いているが、妻はベッドでスヤスヤ寝ては時々爆笑している寝言が聞こえる。

でも、彼女、妻宛てに届く郵便物の名字がぬるりと変わっているのを見ると、なんとも言えない気持ちになる。

名字が変わろうが変わらまいが僕と彼女の関係性は何ら変わらないとは思うが、そういう「公的な決まり」みたいなものとも向き合っていかなきゃいけないという責任感は覚えている。

結婚して「変わった」と少しずつ実感しつつあるものを挙げるとすると「社会との対峙の仕方」。これに尽きる。

それまでは、僕と彼女の間だけだった話が、一気に主語が「夫婦」というセット、ひいては「(両家の)家族」になったように思う。

こないだ、妻のおばあちゃんのお家に初めてお邪魔してきた。

初めて会った気がしないエネルギッシュでおしとやかなおばあちゃんは、いろんな話をしてくれた。
プールで800メートルを25分かけて泳ぐ話、最近ATMから振込ができるようになった話、妻が赤ちゃんの頃にお風呂場でうんちをした話、おじいちゃんに連れていってもらった社員旅行で豪遊した話。

おばあちゃんは、僕がご挨拶にいく前日から気合を入れて料理を用意してくれていたみたいで、お腹がはちきれるそうになるまでご飯をいただいた。きゅうりの漬物の塩加減は絶妙だったし、今年になって初めてのスイカはここ数年で食べた中で抜群に甘かった。

冷蔵庫の裏に蜘蛛の巣があって、それを妻がはらおうとしたら、「ちっちゃい虫をとってくれるんだからダメよ~」と言っていて、無駄に殺生をしようとしない姿勢が孫とそっくりで大笑いした。

この上なく幸せな出会いに胸がいっぱいになったが、それと同時に、いつか来るであろう別れのことを考えると、息が詰まった。

妻と、僕の知らない時代も含め、妻の歴史を作ってくれた家族。
途中参加の人間として、みんながきちんと楽しい日々をおくれるように、しかるべき時間の使い方をしていこうと思う。

ここまで書いたところで、3週間前のことを考えてやたらと感慨深くなってきた。

結婚の前日、付き合った日に行った渋谷の魚金で飲んだ。魚金のあとは、告白をした代々木公園のベンチに行った。

「3年前のあの日はペットボトルのほうじ茶を持ってたよね」みたいな会話をしたような気もするが、お互い日本酒を飲みすぎたせいか、全然何を話したのか覚えていない。

翌朝、例によって眠りの浅かった僕は、早起きしてTwitterを開くと、彼女がnoteを開設して、結婚前の気持ちを綴っていた。

結婚前日、やれ動画制作だやれ記事編集だサイトマップだミーティングだと言っていた彼女。いったいどこにこんな文章を書く時間があったんだと驚きながら、彼女の才能と感性を改めて尊く思った。

こうしてはいられない!と僕も涙目でnoteを書いて、あれよあれよとみんなからお祝いの言葉が届いて、ひとりうるうるしていたら、さっきまでムニャムニャ言いながら寝ていた彼女がムクリと起きてきた。
少し恥ずかしがりながら「みんなから祝ってもらえて幸せだね」みたいな話をしていたら、あっという間に区役所に行く時間の1時間前に。

朝10時に届いた、通販で買った実印で婚姻届にポチッと印鑑を押して、急いでシャワーを浴びて、バスに乗って区役所へ。
バス停ではダイヤが遅れてたみたいで、「口から標識の柱が飛び出てる人」というタイトルの写真を撮りながら時間を潰した。


バスを降りたあと、昼休みに入籍する瞬間の撮影を引き受けてくれた気のいい友達、三浦くんを途中でピックアップ。

最近ものもらいをもらって腫れてる彼の左涙袋が、いつもより気持ちプルプルしていて、表向きは笑ってたけど彼もまた、多分ちょっと泣きそうだったと思う。

区役所の角のミラーで謎に写真を撮る。

三浦くんがカメラに専念するということで、手に持っていた缶コーヒーのボトルを受け取って、窓口で婚姻届を出す。

一箇所だけ「番地」と「番」を間違えていたみたいで、そこを修正して婚姻届を提出。僕たちは夫婦になった。


その後は、お昼を食べようということで、いつも行ってる中目黒のうどん屋「おにやんま」へ向かうことに。

途中でせっかくだし、Facebookとかでよく見る、婚姻届を持った「例の写真」を撮ろうということで、区役所の出口で、警備員さんに見張られながら例の写真を撮ってもらった。

アイキャッチを含めると本記事三回目の登場。
確実に、一生大事にしたい一枚。三浦、本当にありがとう。

その後は、商店街で壁にもたれてスマホを触っていた優しそうなメガネのお兄さんに三浦くんも入った写真を撮ってもらった。
お兄さん、ありがとうございます。


おにやんまについてからは、いつもは「とり天ちくわ天ぶっかけ(冷並) 490円」を頼むところ、せっかくのハレの日だからという理由で「ヒデコデラックス(冷並)730円」を3人揃って頼むことに。

味の染みたお揚げと、ホロホロの豚肉、ふわサクのとり天がコシの強いうどんに乗っかっていて、いつも以上に箸が進み、あっという間にたいらげてしまった。


謎の高級ホテルのフレンチとかもいいけど、結婚後最初のランチを、大切な友達と3人で、行きつけの立ち食いうどん屋で食べたことは、僕たち夫婦にとって最初の「この上ない選択」だったと思う。

その後は、「最高だ ビールが飲みてぇ 最高だ」と575調で言うマシーンと化した三浦くんを会社まで送った。
会社に着いてから、喫煙所に行く彼は、僕らが見えなくなるまで何回も振り返って手を振ってくれた。幸せを増幅させてくれる、最高の友達を持った。

帰り道、バスで帰るか悩んだけど、せっかくいい天気だしということで、歩いて帰ることにした。

途中、祐天寺のジェラート屋さんに寄ることにした。
ここは、かなさんという、僕らの共通の友達の、食いしん坊のお姉さんがいつも行っているお店。思えば、妻のおかげで色んな人に出会えた。


くるみ味とバジル味の二種盛りにして、ふたりで分けながら高架下を歩いた。

途中で通りかかったおばあちゃんが「今日は木曜日やね?」という質問をしてきて、ちょっとした小話をした。
(「今日は木曜日やね?」という問い、今思い返すとループもののRPGの町人っぽさがあるな…)

そんなこんなで家に帰って、家族に電話をして、ちょっと昼寝して、仕事して、夜は前にワインのワークショップでブレンドした記念のやつを飲んで、近所のスーパーで買った寿司をつまんで食べた。

昼のおにやんまに続いて、ワインとスーパーで買った寿司が初めての晩餐になるとは思ってなかったけど、3週間経っても未だに味を覚えているから不思議なものだ。



「人生最良の日」というものについて、たまに考える。

初めてホームランを打った日も、中学最後の地区大会で団体優勝した日も、モロッコの砂漠で朝焼けを見た日も、初めて売上達成したときのことも、忘れられない思い出だ。

でも、2019年5月30日はとっておきの一日になった。

年を重ねるごとに、あらゆる「瞬間」を「思い出す」ことも、「覚えている」ことも難しくなっているような気がする。
それでも、僕がいて、僕の大切な人がいて、友達がいて、迎えることができたよく晴れたあの日のことは、一生大事にしておこうと思う。


籍も入れたことだし、これからやれ式だ、家はどうするだ、資産運用がなんだという話が始まる。

何かと慌ただしい毎日だけど、やるべきことは粛々と、楽しいことはみんなで。そんな感じでやっていこうと思う。

よし、いい夏にしましょう。
それだけです。




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