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秘密結社の会合から漂う地元感

(2020/06/16 思い出し日記)

私がオーストラリアで生活し、約10ヶ月が過ぎた頃の話。

仕事終わりに同僚のイアン(70歳)から「これから街で集会があるから行くか?」と誘われた。周囲は木々とカリフラワーしかないこの場所で仕事の後の楽しみはお酒を飲むことぐらいしかない。

私は二つ返事で「もちろん」といい、同僚たちと共にマンジマップ向けて出発した。日が傾いていた。

薄暗い森の中、カンガルーに警戒をしながら車を飛ばしマンジマップに入ると車は街の公民館前で止まった。

公民館前には数台の車が止まっており、中に入ると平均年齢70歳は超えているであろう老人たちが集まっていた。え?老人ホームか?とも思ったが中には若い40代くらいの人も1人だけいた。(若い?)

イアンの姿はなく、老人会にそっと合流すると、優しい笑顔のおばあさんたちが「どこから来たのか」「イアンと働いているのか」などを訪ねてきた。

なんだか地元に戻ったような匂いがした。

そんなことで少しお喋りをしていると、「みんな手伝って」と手招きをされ、併設されたキッチンに呼ばれた。中にはオードブルとケーキ、そしてワインがあった。

それらをテーブルに運び、終わった頃には別部屋の扉が開き、中からボブ(ファームオーナーの父)、イアン、その他重鎮感漂う面々が出てきた。

イアンは正装に着替えており、スーツに水色の袖、襟、エプロンのような衣装を身につけていた。

そういえばなんの集会なのか知らない。
何の集まりか聞いた所「フリーメイソンの集会」とのこと。

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フリーメイソンといえば日本にいるとき度々テレビで「信じるか信じないかはあなた次第です」の人が特集していた秘密結社とか言われていた組織である。

都市伝説とかは興味ないが、さすがに聞いたことあったし、周囲に所属者がいなかったため「へ〜」と思った。
いや、てか普通に「おいでよ」とか言われてるし。

確かにイアンたちが出てきた部屋は「秘密結社」っぽい儀式室がだった。
壁には歴代の役員名の書かれた名簿が貼られており、白黒の集合写真などもあった。

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てか、儀式は見ちゃダメなのに部屋はいいのかよ。白黒の裁判所って感じ。

儀式の内容は役員交代だったらしく、
就任の発表が行われ、拍手。みんなでグラスを持って「チアーズ」と乾杯をして食事会が始まった。


イアンも何かの役職だったらしい。ちなみに前の会長?はボブらしい。
具体的に何をやっているのか聞いたら慈善事業と言っていた。具体的な内容は忘れたが、
イベントの手伝いや清掃活動だったと思う。


食事会が始まって少し経つと一人のおじいちゃんがみんなの前に立ち、いろんなものを並べ、話し始めた。

イアンに聞くと「これからオークションが始まるんだ。わくわくするだろ?ヘッヘッヘッ。」とのこと。

いや、関心は無である。


私の頭はご飯をもっと食べるかどうかで一杯である。
そはいえ何を競るのか見ていると、手編みのマフラーと手編みのブランケットだった。

さすが地元老人会。
まさか知らないおばあちゃんの手編みのマフラーを競るオークションを見る日が来ようとは。
確かにマフラーもブランケットもかなり良い出来だった。ブランケットは私の目からしても数ヶ月はかかるであろう対策であった。編み物をするものとして尊敬する。

進行役おじいちゃんがマシンガントークを始めた。
それは築地でマグロをさばく売り子のごとき勢い。そう、公民館は築地となったのだ。
マシンガントークにびっくりしていると数人が手を挙げ、落とし始める。
それをおじさんが指差し確認。「$30! 現在$30! 他にはいませんか?いないんですか!」みたいな。たぶん
結局、ボブがブランケット落札し、拍手と共に短いオークションが終了した。

ブランケットは今もボブがひざ掛けに使っている。

私なんかにサポートする意味があるのかは不明ですが、 してくれたらあなたの脳内で土下座します。 焼きじゃない方の。