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今日の学びは「福祉心理学」領域。

介護福祉関係の方には有名な『バイスティックの7原則』が出てきたので、自分の理解のためまとめておきます。





バイスティックの7原則とは

アメリカのケースワーカーで社会福祉学者のフェリックス・バイステックが1957年に著書『ケースワークの原則』で記したケースワークの原則である。バイステックの7原則は、現在においてケースワークの基本的な作法として認識されている。

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わたしはキャリアカウンセリングや教育の分野にいるためか、実は今日初めて知りました。今度この本を手に入れてじっくり読みたいと思っています。

「ケースワークの基本的な作法」ですので、マナーやエチケットとして紹介していますが、その内容は「援助者としてのあり方」そのものだとわたしは感じています。

これが65年後のいまでも必要とされているのは、いくら便利な時代になっても人へのかかわり方は不変であるということを物語っているのかもしれませんね。




1.個別化 (individualization)

クライエントの抱える困難や問題は、どれだけ似たようなものであっても、人それぞれの問題であり「同じ問題(ケース)は存在しない」とする考え方。この原則においてクライエントのラベリング(いわゆる人格や環境の決めつけ)やカテゴライズ(同様の問題をまとめ分類してしまい、同様の解決手法を執ろうとする事)は厳禁となる。

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「誰でもそうだから」「よくあることだよ」なんてことを口にしませんか?
これがラベリングやカテゴライズです。

個別化は、「○○さんとっての問題」とお名前を付けて考えることだとわたしは思います。これはキャリアカウンセリングにも共通します。




2.受容 (acceptance)

クライエントの考えは、そのクライエントの人生経験や必死の思考から来るものであり、クライエント自身の個性であるため「決して頭から否定せず、どうしてそういう考え方になるかを理解する」という考え方。この原則によってワーカーによるクライエントへの直接的命令や行動感情の否定が禁じられる。ただし、この受容の原則を理解する際には注意が必要である。バイステックは、人を受け入れることと道徳や社会のルールに反する行為を受け入れることは違うとし、あくまで「ケースワーカーが受けとめる対象は現実である」と述べている。そのような意味でケースワーカーはクライエントをあるがままの姿で捉えることが必要であるとバイステックは主張しているのであり、何もかもを受け入れるべきであると主張しているのではない。

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C.ロジャーズの受容(無条件の積極的関心)とほぼ同義だと思います。

まずはお話しをそのまま受け止め、この方はどんな経験をして、どんな考え方に基づき、どういう思いを込めてお話ししているのかに関心を寄せます。

ただし非人道的・反社会的な言動については、無条件に受け入れるのではなく、「なぜそう考えたのか」という相手のものの見方・捉え方・考え方に意識を向けることも必要だと、わたしは考えます。




3.意図的な感情表出 (purposeful expression of feeling)

クライエントの感情表現の自由を認める考え方。特に抑圧されやすい否定的な感情や独善的な感情などを表出させることでクライエント自身の心の枷を取り払い、逆にクライエント自身が自らを取り巻く外的・内心的状況を俯瞰しやすくする事が目的。またワーカーもクライエントに対しそれが出来るように、自らの感情表現を工夫する必要がある。

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非言語のかかわり方と、「相談者の鏡となる」という支援者の姿勢だと感じました。

支援者の態度・表情・語り方などは、相談者に大きな影響を与えます。安心して話せるような雰囲気を醸し出すことが求められるということですね。




4.統制された情緒的関与 (controlled emotional involvement)

ワーカー自身がクライエント自身の感情に呑み込まれないようにする考え方。クライエントを正確にかつ問題無くケース解決に導くため「ワーカー自身がクライエントの心を理解し、自らの感情を統制して接していく事」を要求する考え方。

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C.ロジャーズの自己一致にあたります。

共感(共感的理解)ではなく、同感(自身の体験と重ね合わせて理解する)に陥ると、支援者自身の感情が表に出てき過ぎて、一緒になって怒ったり悲しんだりしてしまいます。

自分の気持ちをコントロールしつつ、相手の感情に飲み込まれないように、自分を律することが求められているのでしょう。

ちなみにわたしは「誠実さ」を意識しています。自分の気持ちにウソをつくことや、相手の気持ちを自分の気持ちと重ねすぎてわかったつもりにならないことは、「相手に、誠実に接すること」だという感覚があるんですよね。




5.非審判的態度 (nonjudgmental attitude)

クライエントの行動や思考に対して「ワーカーは善悪を判じない」とする考え方。あくまでもワーカーは補佐であり、現実にはクライエント自身が自らのケースを解決せねばならないため、その善悪の判断もクライエント自身が行うのが理想とされる。また人間は基本的に当初において自らを否定するものは信用しないため受容の観点からも、これが要求される。

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相手の話を、自分の価値観の枠を外して聴くということです。よい・悪い、正しい・間違っているの枠があると、相手の話をそのまま素直に聴くことはできません。

相談者も、自分を否定されてしまうと安心して話すことができませんから、当然の態度だと思います。




6.利用者の自己決定 (client self-determination)

あくまでも自らの行動を決定するのはクライエントである、とする考え方。問題に対する解決の主体はクライエントであり、この事によってクライエントの成長と今後起こりうる同様のケースにおけるクライエント一人での解決を目指す。この原則によって、ワーカーによるクライエントへの命令的指示が否定される。

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特に支援者側が知識や経験を持っているような「提供:享受」のパワーバランスが存在する場合は気をつけたいですね。
職場や学校でいえば、「上司:部下」「先生-生徒」「先輩:後輩」「ベテラン:新人」などです。
カウンセリングの「支援者:相談者」、ケースワークの「援助者:利用者」も同様です。

ただし提供側が決定しなければならないこともあるので、「これは誰が決定すべきことなのか」を意識し、自己決定権を奪わないよう細心の注意が必要ですね。




7.秘密保持 (confidentiality)

クライエントの個人的情報・プライバシーは絶対に他方にもらしてはならない、とする考え方。いわゆる「個人情報保護」の原則。他方に漏れた情報が使われ方によってクライエントに害を成す可能性があるため。

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公認心理師法 第41条では、「公認心理師は、理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする」と定義されており、違反した場合の罰則は「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処せられ、さらに「公認心理師の登録取り消し」がなされます。

もちろんCDAも国家資格キャリアコンサルタントも違反については明記されていますし、倫理規定としてあらゆる職種において前提になっています。

相談業務に携わる方にとっては当然すぎることだと思います。




まとめ

バイスティックの7原則について、ひとつずつ考えてみました。

やっぱりキャリアカウンセリングにも重なる部分が多いですし、支援者・援助者と呼ばれる方には必須の原則だと感じました。と同時に、教員や年長者としても心に留めておきたいと思いますね。


対“人”支援であり、対“物”対“事”の支援ではない」

これこそが根本にあるのかな、とわたしは感じました。



明日も素敵な一日でありますように。

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