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政策に必要なのは目的と説明、今次においてはさらに科学。緊急事態宣言にそれはあるのか?

・「緊急事態宣言」というメッセージは届いていないのでは?

 年始早々に動き出し先週に発令された緊急事態宣言。11月末からコロナの感染が拡大していることを憂慮しての発令だったわけだが、このメッセージをどれだけの国民が理解しているのだろうか。私はこの政府からのメッセージを理解している国民は多くないと考えている。

なぜなら重傷者増加の要因、そして感染者増加の要因など発令の理由が曖昧だからだ。緊急事態宣言発令以前は飲食店と若者が感染増加の主な原因であると報じられ、この両者の動きを制限することで感染が減少するという論調が多かった。

そして政府の地方へ対応を求める姿勢は経済重視とされ批判の的となったわけである。Go to事業の停止を決め、各自治体に飲食店の営業自粛を求めるように要請するも、感染は増加し連日メディアは過去最高という言葉と共に政府を批判。感染が拡大した時から一部の識者は即時緊急事態宣言の必要性があるとし、メディアを通して訴えていた。

私は緊急事態宣言の必要性を感じていなかったが結果として発令され、メディアは発令されても人の移動が起きていると報じ始めているのが現状だ。私は今回の緊急事態宣言は説明が不十分だと考えている。何を持って必要と判断したのか、効果の検証ができていたのか、緊急事態宣言という策がベストなのかなどなぜこれが必要なのかという具体的な説明が全くされていないように感じるのだ。

日本は中国ではない以上、強権的にロックダウンや人の移動の制限をかけることができない。だからこそ丁寧かつ具体的な説明が重要なのだが菅内閣がこれを行っていたとは思えないのである。支持率の低下が止まらない菅内閣に必要なのは国民と丁寧に向き合うことなのだ。でなければあらゆる政策は小さな効果で終わってしまう。

・パフォーマンスに乗るな

 最近聞くのは「変異種」という言葉だ。これが急速に利用され始めている。コロナが変化しやすいウイルスだというのは随分前から言われていたと記憶しているが、急にこの不安を煽る言葉が出始めた。

「変異種」だろうと流入させなければ関係ないし、基礎は同じなのだからワクチンも効果が期待できる。何よりも変異種だろうが、コロナはコロナだ。インフルエンザも毎年、少しずつ型が違う。同じ現象なのだ。過大評価するべきではない。

このようなメディアの過剰なパフォーマンスを真に受けてはいけないのだ。メディアの話題性を重視する絶対主義は問題である。批判する材料を常に探るハイエナのような有様はジャーナリズムの欠片もない最低な有様だ。さらにメディアパフォーマンスの一環として話題性のある急進的な意見の持ち主を出演させる。

欧州と比べて感染者が少なく、死者数、重傷者数も少ない日本にロックダウンの必要性を説く人間は私からすれば理解できない発想だ。まるでコロナを撲滅しようと言わんばかりの意見である。コロナの撲滅はありえない。目に見えない敵をどう撲滅しようというのか。撲滅ではなく、「要点を抑えた対策」被害を最小限に抑えた適切な政策の実施が必要なのだ。

・目的を明確にする

 そのため政策の目的を明確にすることが求められる。「何をどうするために何をするのか」「それはどのくらいの効果が期待できるのか」など政策を行う前に準備し考慮することは山ほどある。

高学歴の集合体である天下の霞が関でこれができないということはありえないと思うのだが、実際そうだから困る。これなら民間のコンサル会社に任せた方がよっぽどいい成果が出そうな気もしてしまう。

昨年2月の段階では対策の目的が明確化されていた。専門家会議が策定した「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」では対策の目的として「①感染拡大防止策で、まずは流行の早期終息を目指しつつ、 患者の増加のスピードを可能な限り抑制し、流行の規模 を抑える。②重症者の発生を最小限に食い止めるべく万全を尽くす。③社会・経済へのインパクトを最小限にとどめる。」と大変わかりやすい目的が設定されている。

新型コロナウイルス感染症対策の基本方針

(新型コロナウイルス感染症対策本部決定)

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000599698.pdf

今回の緊急事態宣言の場合、国民には飲食店の営業時間を短縮させて、若者を外に出さなければ感染者は減るという印象が先行しているように思われるのだ。飲食店の時短営業は緊急事態宣言以前から始まっていた。しかし、これに効果はあったのだろうか。

Go toも人の移動を助長し感染拡大の要因になっているとの批判を受け停止したが、これも効果があるのか科学的な証拠があるわけではない。Go toトラベルやイートをやっておいて感染拡大の理由は飲食店だと急に舵を切るのは疑問を持つ人もいるのではないだろうか。

全てちぐはぐに映ってしまっている。これも全てパフォーマンス重視の論調と説明不足が要因だ。目的を明確にし、しっかり説明する。でなければだらだらと現状を長引かせるだけだということに気づいてもらいたい。

・何をすべきか

 感染者を抑えるのであれば、どの程度の感染者を抑えるのかを明確にした方がよい。なぜならばそれによって必要となる政策が違うからだ。

もし感染の全体数を減らすのであれば緊急事態宣言もやむなしだろう。だとしたらしっかりその旨を伝えるべきだ。そして全面的に自粛ムードにするのであれば、十分な休業補償を行うべきだろう。その期間、儲けが減少する店が多いわけだから減少分に匹敵するだけの保障を行い十分な形で自粛ムードを迎えるべきだ。

次に重傷者数、死亡者数を減らすのであれば、緊急事態宣言でなくてもいいように思える。重症化しやすいケースはある程度明確なわけだからそこに対する規制をかければいい。高齢者や持病のある人の移動を制限するなどだ。テレワークにするなり、自粛してもらうなりすれば飲食店の過度な営業時間短縮や極端な移動の制限を求める必要はないように思われる。

昨年2月の目的に照らし合わせれば、重傷者の現象と経済への影響を最低限に抑えるのが目的だった。であるならば、医療従事者への支援や重傷者病床数の増加、そして重傷者になりやすい人の移動の制限などを中心にした対策を講じれば最低限の経済への影響で済むと考える。あくまで大雑把なものだが、何を目的にするかで対応は大きく変わるということを理解してもらえばありがたい。

・目的を決めたら説明

 民主主義において最も権力を有しているのは主権者たる国民だ。すなわち国民になぜその政策を実施するのかということを説明しなければならない。支持率が下がっているということは現状の政策は理解されていないということだ。

もし現在の政策がベストな政策だというのであれば、それを積極的に国民にプレゼンしないといけない。これができないと国民との距離ができてしまい、政権への信頼がなくなってしまう。

こうなるとあちらこちらから権力を求める敵が現れ、より政局が混乱する。なぜするのか。そして批判に対して対抗する。この両方に対する説明・対策を行わないと国民との距離は縮まらない。

パフォーマンスで攻めてくる相手には政権側も冷静な形で対処しないとやられっぱなしという印象を与えかねない。政権は「様」が大事なのだ。

自信を持って行う政策ならばその理由を説明しなければ理解されない。黙ってて理解してくれる人など一部の熱狂的なファンしかいないのだ。そんな一部からの支持では政権は持たない。広く支持を受けるために万全な説明、実直かつ丁寧な対応、これらが大変重要なのである。

・菅政権に足りないのは敵を叩ける人材

 支持率低下の影響からか野党や自民党からも批判の声が漏れ始め、通常国会開会前から菅政権には暗雲を立ち込めている。このままでは菅政権は大きな成果もなく退陣となってしまう恐れがあるのだ。

これは個人的にいいことではない。確かに現在の菅政権を擁護することは難しいが、私は菅氏の「自助」を中心にした考え方には賛同できる。規制緩和などの政策はより実現にしてほしいものだし、できることなら減税もしてもらいたい。

しかし、菅首相のやりたい政策もここまで向かい風が強いと何もできないだろう。だからこそ現状回避するためにあらゆる攻撃に論理的に対応できる人材の登用が望まれるのだ。

非論理的や感情的、急進的な意見でもって政権批判をする人々に論理的に対応できる人材さえ登用できれば、菅政権は現状を徐々に打破できると考える。必要な人材の確保、目的の明確化、そして国民への丁寧な説明。この基礎的なことから始めれば十分に巻き返しが図れるだろう。

小泉環境相を通じて炭素税なる不愉快極まりない税の徴収を画策する財務省が動いているように感じる。日本に必要な政策が何かということを冷静に考えれば、このような税金が生まれることはないのだろうが、心配は絶えない。菅政権が道を誤り続けないことを祈って。


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