環境保護を取り巻く思想と現状
「環境保護」という問題提起はもう世界的なもので、先進国においては意識せずにいられないほどに大きな問題となってきました。
地球温暖化が進んでいるというのも、今週東京で雪が降るかもという話がありますので全然私は信じませんが、環境保護団体においては疑いようのない事実だそうです。
「人新生」という言葉も使われるようになり、環境問題は様々な他の市民運動やイデオロギーと関連し、大きな勢力になりつつあります。
特に左派勢力(共産主義勢力の残党)との連携は今後も密なものになると思います。ですが元々、環境主義とは左派よりも右派の方が熱心に活動していた経緯があり、今のようなものではありませんでした。
今回は「環境保護に乗じた資本主義的環境ビジネス」と「共産主義による資本主義打倒」それぞれの目的と問題について書いていこうと思います。
・環境保護思想誕生の経緯
今に至る環境保護が最初に意識され始めたのは欧州で1960年代以降です。元々、環境保護団体は祖国の自然を後世に残していこうというナショナリズムとして生まれ活動していました。
そこに時代と共に勢いを失ってきた共産主義者が入り込むようになり、最終的に乗っ取られた結果として今の環境主義政党などに繋がります。
環境保護以外に主張する政策が反核・反資本主義である場合は旧共産主義者が入り込んだ環境政党だという認識で問題ないと思います。
環境政党の「祖国の自然を守る」という理念は「資本主義による破壊から自然を守る」という理念に置き換わってしまいました。
・左派環境主義者が主張するいつものやつ
左派の主張はソ連崩壊以降、基本的に過去の焼き直しです。
かつて共産主義は反資本主義のために「格差」を問題にしました。資本主義社会の中で貧富の差が大きく開いてしまい、貧しい人々は富裕層に不当に搾取されているから富裕層を打倒して、自由になろうというものです。格差がなくなれば個人・社会共に豊かになると共産主義者は主張しました。
その夢はソ連という形で叶い崩壊します。結果として失敗に終わりました。その後もトマ・ピケティなどを中心に脱経済成長や格差問題を取り上げて現状の資本主義を批判する人たちはいますが、資本主義を否定するほどの主張をする人たちは少なくなりました。
しかし、共産主義者は諦めずに打倒資本主義で資本主義を批判する材料を探し、辿り着いたのが環境保護なのです。
彼らは資本主義による経済成長が地球環境を破壊し、最終的には人類と地球に甚大な影響を与えることになるから資本主義を捨てなければならないと言います。これが現代の左派環境主義者の主張です。彼らの方法は変わっていません。
社会主義:
貧富の差(問題提起)→格差是正(目的)→政府が社会に介入(手段)→体制転換(最終的に目指す結果)
環境主義:
気候変動(問題提起)→環境保護(目的)→政府が社会に介入(手段)→体制転換(最終的に目指す結果)
・経済成長はダメ?
この共産主義と結びついた環境主義者は資本主義と経済成長を攻撃します。ですが、この批判は正しいのでしょうか。
かつて日本でも経済成長による公害問題がありました。四大公害病と言われるものです。環境破壊と近隣住民に影響を与えましたが、あれは資本主義社会の中で是正されています。
政府が規制を発することで改善されましたし、現在の技術ではあのようなことは起きません。経済成長の過程で引き起こされた問題を経済成長によって克服したのです。
共産主義者の誤解として、経営者や企業が利益の為ならどんな悪いことでもするという発想があります。
現在において不正は批判の対象ですし、不誠実な企業に対しては不買運動が起きることもあるので、企業はその手のコンプライアンスに敏感になっています。いい商品の製作を常に模索している企業は利益の為なら何でもするわけではありません。
他にも経済成長の重要性については多く指摘がされています。経済成長のメリットについて、アメリカのタイム誌で「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたこともあるダンビサ・モヨはこう述べています。
経済成長は三つの方法で個人と社会の状態を改善する。第一は、最もわかりやすい直接的な形で、個人の生活をよくすることだ。(中略)第二は所得の増加は地域社会に影響を与えるということである。所得が増加した分で、人を雇ったり、投資をすれば、周りも恩恵を受けることができる。(中略)第三は、経済成長が、もう少し複雑な形で生活の質を向上させる。それは経済成長が政治の透明性を確保させるというものである。(ダンビサ・モヨ.『いまこそ経済成長を取り戻せ』.2019)
経済成長は社会全体の経済の活性化を表すので、個人の所得の増加、企業の所得の増加などに繋がります。経済成長は社会にとっていいことなのです。
また経済成長は気候変動の被害も克服してきたというデータを柿埜真吾氏は提示しています。
災害大国である日本は昔から深刻な水害に何度も見舞われてきた国だが、水害の被害額の対GDP比率や死者数は経済成長に伴って高度経済成長期以降、大幅に低下している。(柿埜真吾.『自由と成長の経済学』.2021)
経済成長は環境問題を克服するのです。
・環境保護を名目にしたビジネス
資本主義批判としての環境保護が成立しないことは明白になったと思います。そして今度は資本主義における環境ビジネスについてです。
国際社会において環境を問題視した代表的なものとしてローマクラブの報告書(『成長の限界』という本が代表的)や国連の組織として創設されたIPCCがあります。
これらは先に挙げた共産主義的な環境保護ではなく、資本主義を維持したまま環境保護を行う目的を掲げているようです(ローマクラブは共産主義系かも)。SDGsなどはそれを象徴するスローガンだと思います。
こちら側の思想は進歩主義に影響されているようで、政治的に意識高い系の産物だと思っています。
ですが、中央政府が意識高い系にかぶれて政策を実現しようとすると補助金が出るので一部企業がすり寄ってきます。日本でも太陽光パネル詐欺に一部政治家が関係していることが明らかになりました。
ですが、国際社会がこの潮流に本格的に乗り出すと莫大なマネーが動きます。この資本主義下における環境ビジネスの潮流は綺麗事の環境保護の裏側です。その例としてアメリカの電力会社であるネクステラがあります。
1992年にブッシュ(父)政権で風力発電への助成が始まっていたが、2000年代に入ると、各州が地元の電力会社に再生可能エネルギーの使用を義務付けるようになる。すでに風力発電へと進出していたネクステラは、規模の経済で他者より発電機を安く購入し、安定的な建設と運用を実現していく。(森川潤.『グリーン・ジャイアント』.2021)
このように政府の方針をうまく活用することで企業は成長するのです。これが環境ビジネスです。
海外の投資家が環境保護を重視し始めたことで、環境ビジネスの流れがより進んでいくことが予想されます。日本企業だと三菱がベトナムに火力発電所を建設する計画があったのですが、海外投資家の圧力によって潰されています。
日本の火力発電所は他の国の火力発電所よりも排出するCO2の値が少ないのに、「脱石炭」というスローガンだけで潰されてしまうのです。この環境ビジネスの動きは日本企業にとっても深刻な問題だと言えます。
・環境保護圧力が生み出す新たな可能性
このように国際社会、特にお金を持つ先進国が環境保護を名目に脱石炭・脱石油などを進めることで、企業は倫理観重視の姿勢による投資誘因や政府からの補助金などを得るために活動しています。
そして新たなイノベーションも生まれています。テスラの電気自動車は有名ですが、他にも石炭の代わりに水素を使って製鉄を行う技術の開発や空気中から二酸化炭素を抽出しようという技術開発も現在進行形で行われています。
政府からの補助金目当てで活動している人がいる一方で自発的に意識高い系として環境問題に取り組もうというミレニアル世代もいることがこのようなイノベーションに繋がっています。
これらの最新技術の開発はおもしろいですよね。
・環境保護を利用する縁故資本主義と共産主義、そして純粋な意識高い系
政治が話題にする環境保護は信用に足るものではありません。なぜなら政府活動として税金を投じて環境問題に対処するのは政府の横暴だと考えているからです。
補助金によるバラマキは政治家にとって選挙の票集めと密接に関係していますので、個人の活動として環境問題に取り組む方が健全です。
さらに言えば政府の都合で環境問題に対処されると余計な政策を行い、国民生活に大きな影響を与えることは間違いないのも事実です。
レジ袋有料化なんて特にそうですし、炭素税導入の議論も最悪です。ですから政府はこの問題に触れるのは基本的に避けてもらいたいです。
権力を持つ政治が特定の事案を問題化する時には必ずと言っていいほど、特別な利権が存在します。日本の二酸化炭素の排出量は世界で比較しても特別高くないので、そんなに積極的に行動する必要を感じません。
さらに言えば地球温暖化という問題提起自体にも疑問です。やりたい人がやればいいのです。それこそ意識高い系の人たちに任せておけばいいと思います。政府に強制される筋合いはありません。
またこれを機に資本主義打倒を目指す共産主義者の執念には恐れ入りますが、やはり論拠不足なのでご撤退願いたいところです。
経済成長は社会問題を解決する需要に応えてきました。貧困・飢餓・自然災害の被害、これら全ての問題は経済成長によって時代を経るごとに被害が減少しています。経済成長はいいことなのです。
環境問題も意識高い系のイノベーションによって是正される日が来ると思います。だからこそ、現在、環境保護を問題化して煽っている人たちの思想にはうんざりするのです。
日本の産業構造を見るに急激な環境保護路線は政治・社会両方に大きな負担を強いることが予想されます。ですから、基本的には市場に任せて政府は西洋の下らない圧力をうまく受け流すことにしておくことがいいのです。
世界に合わせて無理して傷つくよりも、日本社会を構成する日本人の自由な意識に任せるべきです。もともとSDGsの要素を古くから持っている国だと思いますしね。
・引用した本と興味のある人向けのBook Guide
1.『いまこそ経済成長を取り戻せ』ダンビサ・モヨ(著)
2.『自由と成長の経済学』柿埜真吾(著)
3.『グリーン・ジャイアント』森川潤(著)
4.『人新生の「資本論」』斉藤幸平(著)
5.『「脱炭素」は嘘だらけ』杉山大志(著)
6.『SDGsの不都合な真実「脱炭素」が世界を救うの大嘘』川口マーン恵美/掛谷英紀/有馬純(共著)/杉山大志(編集)
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