高校生向けのふるさと教育な講演で全然違う話してきた
タイトルのとおり、地元の市役所に任じられて高校1年生向けに特別授業を行なってきましたのでレポート!
私は地方で教育プロジェクトやシェアハウス運営などをしているため、ふるさと教育の講演に適任ということでこのような機会をいただきました。
市役所から託されたミッションは「高校生に地元を誇りに思ってもらうこと」
さらに言えば、地元を出ても自慢のふるさとだと胸を張ってもらいたい、そしていずれUターンしてもらいたい。というのが事業の目的です。
受け入れた学校側からのミッションは「高校生の意識を地域に向けること」
両者とも明確なオーダーがあったわけではないですが、おおむねそんなところです。「まちづくりの話や体験談」というのが定番かつ求められている講演内容だと思いながら、全く違う話をしてきましたので授業内容を公開してみます。
先に、受講した女子生徒の感想を載せます。
(授業後に公共自習室に行ったらたまたま居たので、話を伺いました)
・こういう講演ではたいていちょっとは寝てたけど、全然眠くならなかった
・ハーバード大の話は難しかった。友人関係などはなるようになることだと思っていたし、この話をどう活かせば良いのかわからなかった
・自分年表ははじめての考え方なので想像しづらかった。将来何をしたいかはこれまで聞かれたりしてイメージできていたが、年代で何をするかまで想像していなかった
・自分の夢に向き合えた
・生き方が具体的になる感じがしたので、もっと頑張らなきゃって思えた
・目標に対して前向きになれた
・オススメコンテンツは「帰ってから見てみよーっと」って言ってる友達いたし、私も見る予定
・生徒「目標は医療系」→僕「ファクトフルネスは医者が書いた本だし、医療のことも載ってるから読んでみるといいよ」→生徒「まじか!読んでみる!」
・僕「AIとか最新技術については学校でどう教えられてる?」→生徒「私が疎いからなのか、あんまり言われた覚えがない。」
・私の想像が追いつかなくて難しいところもあったけど、楽しかったしタメになった
さて、授業内容に話を戻します。
高校生向けに地域の人が講演をしたり、ワークショップをする機会も全国的に増えているので、参考になればと思い資料や授業のねらいを公開します。
これをたたき台にしてさらに良い授業ができれば嬉しいです。
コメ欄、twitterなどで感想を言ってもらえると喜びます。
《授業内容ざっくり3行》
・世界ってどんどん良くなってるよね
・ところでキミはどんな人生歩みたい?
・どこで何して生きようとも、故郷はここやで
《生徒情報》
受講生徒数:100人×2コマ(高校1年全生徒)
△市の高校だが周辺市町から満遍なく生徒が通っているらしい
素朴でとても良い子達
9割程度が地域外に進学または就職
********
◇授業資料の詳細、授業で話した内容
ちなみに発表スライドには、私の情報を全く載せていません。
◆配布資料
・問題用紙(ファクトフルネスのクイズが記載された用紙)
・自分年表(16歳の2019年から90歳の2073年までどこで何してるか書けるシート)
・クイズの答えや不要部分を抜いたスライドのプリント
◆授業の流れ(カッコ内は経過時間minutes)[スライド対応ページ]
1. 自己紹介(1m)[1]
2. クイズの説明&回答(8m)[2,3] ※問題用紙使用
3. クイズの答え合わせ(12m)[4-9]
4. 思ってるより世界は良くなってるね(17m)[10-12]
5. 自分年表を書いてみよう(27m)[13,14] ※自分年表使用
6. 自分年表に親と市町の未来を追記してもらいます(30m)[15,16]
7. 何がキミの人生を楽しくさせるのか(33m)[17,18]
8. まとめ&自分語り(44m)[19]
9. オススメコンテンツの紹介(45m)[20]
↑この流れに沿って詳細や授業のねらいを書いているので大事
各項目で伝えたことを箇条書きでご紹介。
※ここ長いですm(_ _)m
1. 自己紹介(1m)[1]
・こんにちは!!!!!
・〇町から来ました
・僕「地域のこととか興味ある人いる?」→誰も手をあげない→生徒「興味があるないじゃなくて、考えたことすらない」→僕「だよね。そんなもんだと思う!いいのよー、健全健全」
2. クイズの説明&回答(8m)[2,3] ※問題用紙使用
・今日はクイズをするために来ました
・回答の際、設問に対して質問や相談はなし
・わからなくてもイメージで答えられるはずなので未回答はダメ
・8分以内でやってください→生徒の回答が早くて5分で終了
3. クイズの答え合わせ(12m)[4-9]
・答えの読み上げ
・隣近所の人と2分ほど見せ合おう。お前こんなんわからんかったん?とか言ったりしよう
・全て3択なので、サイコロ振っても平均で4問正解するよね。チンパンジーでも4問正解するってことだよね。
・5問以上正解した人手をあげて!→14%程度の手があがる
・あらら、ほとんどの人はチンパンジー以下なのね!
4. 思ってるより世界は良くなってるね(17m)[10-12]
・実は全世界の投資機関の人や医者やら1万2000人が受けたクイズだよ
・彼らの正解数分布がこのグラフ。僕は2問正解でした。実は2問正解が平均正答数
・チンパンジーに勝ったのはグラフでは10%だから、君たちの方が投資家とかより賢いね!やるやん!
・このクイズで伝えたかったのは「正解数が低ければ低い人ほど悲観的に世界を見てしまっているということ」
・設問1を見てみてください。Aと答えた人は手をあげて→Bと答えた人→正解はCだったよね。つまりほとんどの人が、低所得国の女性の半分も初等教育を修了してないと思ってたわけ
・他の設問も、答えの方が他の選択肢より「良い」数字になってます
・つまり、僕たちが思ってるより世界良くなってるんだね
・科学技術や先人たちの作った仕組みによって、世界良くなってるんよ
・学校とかニュースでAIに仕事奪われるとかビビらされてるけど、当然のことながら世界良くなるための技術なんだよね
・そんな風に良くなってく世界でどう生きていこうかね
5. 自分年表を書いてみよう(27m)[13,14] ※自分年表使用
・世界のことはわかったので、今からギュッと焦点絞って自分のことを考えよう
・8分程度で自分年表を書きましょう
・提出したり人と見せ合わないので好きなこと書いてね。隠しながら書いても良いよ
・何歳で結婚したいとか90歳で死ぬみたいな、ブレづらいことから書いてくと良いよ
・50代の欄から書いても良いし、ありえる未来は併記して構わないよ
・薄い字でサンプルが書いてあるから参考にしてね
・キミたちの退職年齢は75歳かな。もしかしたら80かも
・自分年表書くとめっちゃ得するよ。その年齢に近づいたときに「あれ?予定厳しくね?」って修正しやすくなるからパフォーマンス上がる
6. 自分年表に親と市町の未来を追記してもらいます(30m)[15,16]
・これから言うことを右の空欄に記してください
・右欄上に「親・市町」と書いて
・2070年ころかな、親が90歳になる頃に◎書いて
・2035年に●市は人口1/3の**人減って***人になるよ。2045年には△市は1/3減って今の〇町レベルの人口になるよ
・2070年には親が死んじゃうよ。平均で言えばだけど。てことはその数年前から介護があるかもね
・キミがいつどこで何してようが、故郷がここなのは変わらない
・消滅可能性都市って数年前に流行ったよね。あれで△市も消滅するかもって言われてたけど、たぶん市としては消滅しないよ。でも、おじいちゃん家とかの小さい集落は無くなっちゃうかもね
・「とある集落の廃村」の紹介
・ショッキングなこと話したけど自分年表に何か変化ありそう?
・今日話を聞いて急に変わらないよね。大事なのは自分の人生です
7. 何がキミの人生を楽しくさせるのか(33m)[17,18]
・おもしろいハーバードの75年研究の紹介
・身近な人との関係の質が良いと、精神衛生よくなって、肉体も比較的健康で、健康だから仕事もしやすくてって感じで幸せになれるんだってさ
・別に不健康だろうが親友がいれば幸せになれるみたいよ
・どう生きれば楽しいのか追求してね。自分の人生なので
・「今居る環境を変える」のはなかなか難しいけど、「環境を移す」のは結構簡単なので、幸せになれる場所を求めて自由に動くと良いよ
8. まとめ&自分語り(44m)[19]
・複雑になってるようだけど、良くはなってる世界
・ファクトフルネスの書籍紹介
・死生観的な考え方で自分を考えてみたね。死を意識するとパフォーマンス上がるよ
・なによりもあなたの人生はあなたのものだから、楽しもうね
・どこでなにしてようとも、生まれ故郷はここです
・世界は「あなた対それ以外」というシンプルな構図
《ここから自分語り》
・僕は高校2年のときに都市部に進学することに決めました。そのとき、地元を離れたらあと親と何回会えるのか計算しました。平均して年1で2日帰省するとして、それが50年間。結果、地元を離れたら100日程度しか会えないとわかりました。外で暮らす決断した人ってすごいなーと思いました。高校生活は残り800日くらいですね。当たり前に親と過ごすけど、出てしまったらすごく貴重ですよね。
・自己紹介をあまりしなかったけど、実は塾の経営をしたりデザインしたり色々しています。Uターンした8年前はwebや情報発信のお手伝いを地域でしようと思いましたが、今は教育事業とかグッズ作ったりしています。地域にとって必要なものが変わったと思ったからで、自分が求められていることも変わったと感じたから転換しました。
・僕のは小さな話だけど、世界の変化も同じだと思います。技術の進歩やばいし、10年後は正直どうなってるのかわからない。20年後なんて尚更。だから、夢や目標はザックリが良いと思う。「〇〇な医者」ではなく「超命を救う人」くらいな。その時そのときの今を邁進し続けることが大事。
・医者や学校の先生の役割や理想像が変わってきています。△市も日本で先進的な医療を取り入れてますよ。今後もっともっと変化が早くなるでしょう。どの職業も変わります。だから職業を目標にせず、自分は何をしたら嬉しいのかを見つめて進んでほしいです。
・パワードスーツや自動運転とかが普及して、逆に集落が残ってたりするかもね
9. オススメコンテンツの紹介(45m)[20]
・今日の内容関係ないコンテンツの紹介
・いろいろ多感な時期、他の同世代の正直な気持ちとか統計を見れるよ
・勉強の合間に息抜きで見てみてね
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◇授業で目指したこと・意図
《したかったこと》
・実は世界は良くなっていることを知ってほしかった
・「死ぬまで」という長いスパンで人生を捉えてほしかった
・地元を考えることは人生に必須ではないが、心に留めるキッカケにしたかった
・あなたの人生と地域を結びつけたかった
・あなたの人生はあなたのものと伝えたかった
・世界やあなたが変わろうとも、故郷がここなのは不変だと言いたかった
・激動の時代には激動の時代なりの目標設定の仕方があることを示したかった
《なぜ定番の授業をしなかったか》
ふるさと教育的な特別授業でよくあるのは以下のタイプ
①立派な講師が体験談を語る
②データを用いて危機感を煽る講演
③地域課題に対する対策を考えるワークショップ
④地域の資源を見つけるワークショップ
正直、市からの要望も①④のイメージが共有されていました。
でも、目的から考えたときに、普通にやっても絶対に生徒の心に残らないなと思ったので今回のスタイルを提案しました。
いや、①④でも地域に関心のある3%くらいの生徒には響くと思います。事実、僕は地域のことを探求する授業でまちづくりに関心が向いた人ですので、響く人はいます。
とはいえ、せっかく機会で3%(なんの根拠もない数字だが)はあまりに少ない。特別授業なので半数程度には響かせたいと考えました。
彼らの関心が向いているのは、自分の今・将来&友人。
だから、なるべくそこに寄せていきたくて、ライフデザインを取り入れました。
いきなりライフデザインに取り組んでも身が入らないだろうし、ましてや地域の事を言っても耳にすら届かないでしょう。
だから、まずは楽しくて学びになるクイズで導入。
すべては、「地元」というワードを今後の人生で引っかかるために。
そして、この地域で育った子が納得のいく人生を送れるために。
地域の大人として旗を振る機会にしたかったのです。
《各項目のねらい》
1. 自己紹介(1m)[1]
・僕は大物ではないので、生徒の興味を引けない中途半端な自己紹介で時間を使わない
・大きめの挨拶とにこやかな表情で堅くない人アピール
2. クイズの説明&回答(8m)[2,3] ※問題用紙使用
・テストではなくクイズなので気軽に授業参加できる
・クイズ中に一部生徒に「お、模範解答やな」など茶々を入れて、ゆるい空気感に
3. クイズの答え合わせ(12m)[4-9]
・簡単そうで全然正解できないクイズで友人同士盛り上がる
・チンパンジーにも勝てない悲しい状態を煽り、場が和む
4. 思ってるより世界は良くなってるね(17m)[10-12]
・過疎化する地域のまちづくり的な講義だと思ってたら、まさかの明るい世界の事実の話で脳みそリセット
・アイスブレイク終了
・生徒の僕への認識が「○町の知らないおじさん」から「愉快に意外な事実を告げるおじさん」へ
5. 自分年表を書いてみよう(27m)[13,14] ※自分年表使用
・動→静。一人ひとりのワークショップ
・話を聞くだけの講演会ムードがリセットされているので、自分にも向き合いやすい
・何を書いても良いしサンプルもあるので、書けることだけ最低限書ける
・同級生が書いている様子が横目で見えるので、ライフデザインを意識せざるを得ない
6. 自分年表に親と市町の未来を追記してもらいます(30m)[15,16]
・事実っぽい未来を告げられて若干ショックを与える
・自分を少し拡張させた程度の「知ってる集落」の未来を想像させて、人口減少や地域の変化を身近に感じてもらう
・地域の話題を振ってきておきながら、あなたの人生だと諭して、あくまで地域志向を強制しない
・あくまで事実(推計)や事例のみを提供するだけで、説教はしない
7. 何がキミの人生を楽しくさせるのか(33m)[17,18]
・楽しい人生の参考になりそうな情報提供
8. まとめ&自分語り(44m)[19]
・本日の内容をまとめてあげて、世界と自分を俯瞰させる
・世界と自分という繋がりが難しそうなことを、シンプルな構図に落とし込む
・あくまで自分が大事という一貫したメッセージ
・故郷はここであることは不変という一貫したメッセージ
・様々な事実を知り、自分と向き合ってまとまりきらない脳みそに講師の自分語りという温度のある話を注入
・未来の考え方とライフプランを重ね合わせてもらう
9. オススメコンテンツの紹介(45m)[20]
・気になるワードが散りばめられた資料でワクワク
・授業資料を自宅でも開いてもらうキッカケづくり
・学校では得られないしネットでも得づらい情報へリンクできるコンテンツの提供
********
◇参加者の感想
《聴講した知り合いのまちづくり団体代表の感想》
・教師が言わないようなことなので良かった
・シリーズ化して継続的に生徒と関われると良い
・岡坂くんの素性をほとんど出さなかったので、疑問に思っている子がいると思う。関わりを継続できれば、岡坂くんを通じてより地域に関心が向くと思う
・導入で△市の人口問題に触れなかったのが良かった
・教育の根底にあるのは人格形成。その意味でハーバード大の研究の話を出したのはすごく良かった
・いつでも故郷はここであることを伝えたのが良かった
・地元を出たら親と会えるのは100日程度という話はハッとした子もいると思う
・教師にも聞いてもらいたかった
・ネガティブじゃなかったのがおもしろい。△市は消滅可能性都市であっても消滅しないと言っちゃうとか
《僕の感想》
・寝てる生徒もいなかったし、うつむいてる子も見当たらなかったのでよかった
・校長先生や教師の正直な評価を知りたい
・ファクトフルネスクイズが思ってた以上に盛り上がってよかった
・自分年表に「20歳 大坂でたこやき食べまくる」「40歳 部活で甲子園に連れてく」「90歳 めっちゃ健康」みたいな感じで自由に記入してくれてて嬉しかった
・授業時間が短かくて、生徒とやりとりする余裕がなかった
・この授業を僕がやる理由が薄かったので、もっと個性を入れればよかった
・「子供の未来を第一に考える地域こそ帰ってきたくなる地域」という哲学を持っているが、一度の授業で地域力を高めた自信はない
・3%の確度を超絶高めるのが良いのか、50%にジワジワと効くのが良いのか答えは出ていない
・日常的に触れるキーワードを何個か入れて、今後想起させる仕掛けを作るべきだった
・「地域には活躍できるフィールドが意外とある」「地元離れても結構盛り上げたりできる時代になった」といったフォローを3%の子のために伝えるべきだったかも
・「あなた対それ以外の構図」というより「あなたが世界をどう見るか」の方がわかりやすい
・生徒は興味があるとかないとかではなく考えたことすらないからどちらとも言えないケースが多いので、挙手式アンケートは聞き方を再考する必要あり
・最新技術について学校での教え方は先生によって個人差がありすぎるので共通認識を持ちづらい
・オススメコンテンツとして提示した「なにジェネ?」は先生の好き嫌いが分かれそうなのでリスクがある
・僕は△市出身在住ではないので地域資源を正確に生徒に伝えられないが、個人的に△市周辺の好きなところを伝えれば心の距離が縮まったかも
・チェックイン、チェックアウトを入れても良かったかも
と、つらつらと書いてみました。
45分という短い時間なので、反省点をすべて詰め込むのはどうかと思いますが、まだまだ改善していきたいです。
教育に関するイベントや授業など、さらに力を入れて取り組んでいきたいのでお仕事をお待ちしております。
いろいろな地域のお手伝いをしたいです!
この授業をたたき台として、高校生向けワークショップが加速すれば嬉しいのでコメ欄、twitterなどで感想を言ってもらえるとありがたいです。
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