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「かがみの孤城」

誰にも「孤城」があれば。


辻村深月の「かがみの孤城」が、2018年に本屋大賞を取ったことは、当時から知っていて読みたいと思っていたが、実際に読んだのは2021年。

あちこちで紹介されたのでご存知の方も多いかと思うが…。

ザックリあらすじ:中学一年生のこころは、エグいクラスメイトから、一方的な男子絡みの思い込みでいじめの標的にされる。
仲良くなれると思った転校生にも態度を変えられて、心折れたこころは不登校に。
そんなある日、部屋の姿見が光って、鏡を抜けるとそこには同じ年ごろで学校に行けない子たちがいた。
そこに、狼の仮面をかぶった女の子が現れて、来年の3月期限で、この城に隠された鍵を見つけたら、その人が一つだけ願いをかなえることができると言う。ただし、それを使うとここでの思い出はすべて消えると。
いつしか、それぞれの悩みや問題を抱えたこころたちの居場所になっていたお城。その選択は…。

というお話。


ミステリ的要素が話を引っ張りつつ、奇をてらうことのない心理描写もリアルで繊細でぐっとくる
人と人とのつながり、めぐり合わせがどれだけ人生に大きな影響を与えるかを思い出しながら、どう決着するのか?と久々に一気読みに近い状態。
自分の中でも、様々な気持ちと照らし合わせながらの読書となった。

同じ年ごろの子をもつ母親になった今、母の立場から。
(→娘の不登校に歯がゆさを感じ、そうしてはいけないとわかりつつも責めるようなことを言ってしまう姿がわかる。お母さんも、立場は違うけど、かなり苦しいんだよね)

学校、友達、母親との関係など自分の記憶に残っている中学時代を思い出して。
(→学校という閉鎖空間の息苦しさ。何かを楽しみや、支えにして耐えるという状況は誰もが中学時代経験するかと。クラス替えの無常さ、その中でどこかのグループにはいなきゃというプレッシャー。自分によい距離感さがし)

そして、わたしとは違う時代、人生を生きる今の娘を見て、娘ならという想像まで。


その後、過去の辻村深月さんのインタビューなども読んで、いい作家さんだなあと思った。
強い思いがあって、それを表現する言葉を生み出す力を持っている。
そして届けたい相手がいる。
最強だ。

その後、しばらく深月ブームが続いたが、やっぱり孤城がダントツ感。

昨年、中学生になった娘にも勧めて、娘も夢中になって読んだ。
その後、昨年末にアニメ映画が公開されると知り、娘は見に行きたいと。

ということで、遅ればせながら春休みも終わりに久々の映画館へ。
(ちなみに前回の映画館は「呪術廻戦」、その前は「鬼滅の刃」。)


結論から言うと、面白かった。
正直原作の細かい部分は忘れていたのだが、原作に忠実で、誠実。
うまくまとまっていて、お城がビジュアルとして見られるのも楽しかった。

こころちゃん役の声優さんは、オーディションで抜擢された新人さん。
初々しく上手だったが、わたしのイメージだと、もう少~し芯のある声だったかな。好みの問題だが。
オオカミさまの芦田愛菜は、さすがというか印象に残る演技。

ちなみに娘とわたしの一番の泣きポイント。

娘→こころちゃんが、不登校のきっかけになった出来事をはじめてお城で口にすることが出来た時。
わたし→オオカミさまの病室シーン。

映画のエンディングに、登場人物たちのその後の姿のイラストが流れるのも温かい気持ちになる。

「大丈夫だから、大人になって」

「かがみの孤城」


子供たちが、その言葉を信じられるような世界でありたい…。


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