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NHK「VRおじさんの初恋」が照らすもの

好きなドラマについての長い話。


終わらせたくないな、大事に見たいな~と思って、タイミングを選んでいたが、とうとうNHK「VRおじさんの初恋」を見終えた。
わたしの思い入れは、結構な長さの文章になってしまったが、読んでもらえたら嬉しい…。(ストーリー最後まで触れてます)

↓のnoteは1ヶ月以上前なのに自分で驚いた…
というか、今年も半年過ぎてるって怖ろしすぎる…↓

↑で、穂波が3か月の余命宣告を受け、5~6年?話をしていない彼と娘の関係にフォーカスされていくところまで書いたが、VR世界から現実世界の比重が増え直樹のリアルも動き出す。


野間口徹が引き続き癒し声で、淡々と冴えないおじさん…からの目覚めを魅せる。
そして、坂東彌十郎も負けじと昭和の親父っぽい風情を漂わせつつ、ひとりぼっちに浸って魅せる。


孫の葵が穂波のアバター(ホナミ)で勝手にVR世界に入ったことを知った穂波は激怒し、周囲と断絶上等状態に。


大切な世界に勝手に踏み込まれたことに加えて、秘密を知られたバツの悪さがあったとしてもtoo muchな怒りに思えなくもない。

素直でひねたところのない葵に悪意がないのは明らかで、あのアバターやナオキとのキス(未遂)で知ったおじいちゃんの意外な面も受け入れ、心から謝っているし。

まあ、引くに引けなくなるのは、わかるが。

で、殻に入ったそんな穂波を直樹はあきらめない。

なんとかVR世界でホナミと再会し、思いのたけをぶつけるのだが、「VR世界は暇つぶし」、「自分は死にかけの男だからかまうな」と、穂波、ハードツンデレ化。

「何か言いたいことがあるはずだ!」の叫びも届かず、直樹はゴーグルの下から涙をながす


で、そんな直樹にもらい泣き。


してたんだが、急転直下、テレビに映り込む自分の歪んだ泣き顔に全部吹き飛ばされるの巻。

夜中にテレビ消したら、消えた画面に自分が現れるアレが放送中の暗い画面で起こるパターン…。
無意識に焦点合っちゃうやつ。

ここで? ここの場面で自分のヤバい顏に向き合うってなんの罰?!と変な笑い声まで出る始末で、つい、ここに記す…。


…気をとりなおして。


VR世界でホナミと気持ちがすれ違い落ち込んだ直樹だが、初恋万歳!
ブラボー、ねばぎば!

ってことで、衝動に正直に会社を休んじゃって穂波に会いに行く。
いいぞ、いいぞ!



そこでの再会の彌十郎の表情が最高すぎた。

心を動かされるドラマはいくつもあるが、「ああ、これは……」と自分の古い記憶、その時の気持ちが立ち上がり重なることは珍しい。

「わかる~」というより「同じだ…」って感覚。

まさに、「さびしさの世界は住めば安全な世界」(直樹のセリフ)とばかり、空虚な不可侵領域を守ろうとしていた穂波は、同時に誰かが自分に寄り添ってくれないかと思い続けている。

そこに現れたのが白馬の王子こと野間口徹、いや、直樹だ。

考えるより行動で!
行動してこそ相手の心も動く。

結局、穂波と直樹はお互いがお互いの白馬の王子になっているのだ。
もちろんそれは二人が男性だから、ではなく、互いに助け助けられることで人生は満たされ、関係は強くなる。


ここまで来てくれてありがとう。
父娘の話から最後の二話についてまで書きたいことたくさん。
是非最後までご一緒に!


娘、飛鳥の物語

ドラマの後半で物語をつくるのは、穂波とその娘飛鳥だ。

母の浮気による両親の離婚後、穂波と暮らす小学校3年生くらい?の飛鳥が、穂波に教えられながら一人で作ったシュークリームの皮が失敗(「教えてはくれる」けど、一切「手は出さない」穂波)。
それを見た料理上手な穂波は「お父さんがおいしいのつくってやるぞ~」とはりきって新しいのを作るのだが、失敗した自分のものを食べてみたい飛鳥(わかるよ~その気持ちも大事)。
夜中にキッチンに来て自分のシュークリームを探し、ゴミ箱に捨てられてるのを見つけてショックを受ける(そりゃそうだ)。

簡単に食べ物捨てすぎじゃん(食べられないほどの状態じゃないし)との思いと同時に穂波がコレするかなというひっかかりも…。(ドラマの性格設定的に)
これはわたしの感覚だが、料理好きな人なら尚更、抵抗あるんじゃないかと。


とかツッコんでみたが、父娘2人の微妙な疎遠っぷりのきっかけとしては、絶妙な塩梅のエピソードで、個人的に刺さる

とにかく、その出来事をきっかけに飛鳥の心は離れていく。(つまり小学生時分からだ)



一方、直樹は5年前、疎遠になったままの母親を亡くしていた。

封筒に入っていた病院のメモ用紙に書かれた、

直樹へ 
  もう一度あなたと話したかった  母より

の文字を見て、トイレの個室で声を殺し泣く直樹。

その経験を無駄にはしまい、同じ思いを父娘にさせまいとばかりに直樹は動き、親子が話す機会を実現させる。


そして実現した親子の対面。

会って早々の穂波の謝罪に、「謝って欲しいわけじゃない」って飛鳥のセリフ、自分史とシンクロ率100%(ウチは母娘だが)。あと、「今更どうでもいいでしょ」とかさ、なんか聞いたことあるわ~みたいな…。

飛鳥の気持ちを受け止めながら、穂波は飛鳥の心の奥に届けようと言葉を重ねる。

飛鳥は
「(シュークリームが捨てられた)その時、自分もいつか簡単に捨てられてしまうのではないかと思った」
「離婚する前に話して欲しかった。シュークリームを捨てる前に伝えて欲しかった。だって、親子でしょう」
「一緒に悩んで必要とされたかった」と涙ながらに語る。

それを聞いた穂波も涙を流しながら真摯に謝罪する。


そのあたりからの、2人の会話と、それに伴う穂波こと彌十郎の表情の流れがもう、たまらん。

彌十郎の瞼が腫れぼったいこともあって(しかも、演出か?顔色悪いし)、常に切実な泣き顔と複雑な笑い顔が同居しているように見えるのだ。
そして、その中でさらに繊細に表情を変える彌十郎の名人芸

久方ぶりに「お父さん」と呼ばれて感無量の穂波の表情。

なっちゃんこと(→古い…)田中麗奈も、負けじとよい演技で、過去を笑いながら涙が頬を伝う様子に、こちらも胸がいっぱい。


スッキリした飛鳥は言う。
隙のある美少女(ホナミのアバター)のお父さん見たから、暗黒の思い出が冗談みたいに思えてきた」と。
だよね。
あの姿はリスキーなショック療法とも言えるな。

そんなこんなで和解。


しばしの穏やかな時間のあと、直樹はホスピスに入った穂波とVR世界で最後の旅をして、約束を交わす。

「わたしのこと、忘れないで下さいね」

「忘れないよ」

「絶対ですよ」

「絶対だ」


ホナミに指輪をはめるナオキと、その後の二人のウェディングドレスがまたかわいい~。
演出上、ドレスのデザインがちゃんと見えないのが残念だったけど、お互いの王子様だった二人はお互いのお姫様でもあったのだと思える、短くも素敵な場面だった。

その後、病室で静かにゴーグルを外した穂波は、万感込めて「ありがとう ナオキ」と呟く。



亡くなった穂波は直樹と飛鳥に手紙を残し、その後、直樹は希望を出した花形部署への異動となり、飛鳥(の会社)はサービスを終えたVR世界「twilight」を「daylight」として復活させる。

「daylight」には、ナオキとホナミがトワイライトで過ごした日々の動画が残っておりそれを見ながら、「…ありがとう…」と呟くVRゴーグルをつけた直樹の姿でドラマは終わる。

この物語に相応しい終わりだとしみじみ。


さて、最後の二話では、穂波とホナミ、直樹とナオキが対面対話するレアなシーンがある。
特に直樹とナオキは、それまで、表情も喋り方も声質も呼応して違和感がないと思っていたので、その二人が一緒のところが見れられるとは…と感慨深かった。

四人芝居(二人は同一人物だから二人芝居か?)とも言えるこのドラマ、役者さんが表情豊か、大切にお芝居をしているのが伝わって来た。

ベテラン二人は言わずもがなだが、若手二人、倉沢杏菜、井桁弘恵はこれからが楽しみで、そのうち朝ドラに主演しても驚かない。


最終回視聴に至るまで、後半の回は何度か見返しているが、このドラマはファンタジー的側面もあるし、キャストや演出で印象がかなり変わりそう。
見終わった今も、彌十郎のキャスティングは思いきった感がある。


また、原作にどのくらい沿っているか不明だが脚本もよかったなあ…。

ここでは触れなかったが、直樹の会社でのエピソード(元四季の堀内敬子の歌やギョウザ!!)や飛鳥のおとぼけ秘書、葵の学校生活やブルース・リー名言集や白鳥を踊る彌十郎の手の美しさなど、語りたい場面はまだあるが抑えておこう。

好きになるには様々な理由があるだろうが、自分の凸凹にハマる何かというのは単なる好きを越えたものになる。

「VRおじさんの初恋」は、わたしにとって、そんなドラマの一つだった。

ということで、ながながとわたしの思い入れに付き合い、ここまで来てくれてありがとうございました!


最初に書いたもの↓


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