ああ、日経平均...。
このところ「日経平均の1人負け」が続いている。
2月までは "@30,000円超え" など順調だったが、昨日(8/16)も▼$200以上下げた後+$110ドルまで急速に戻した "力強いNYダウ" ↓ と比べてもその差は歴然。
一体どうしたのか?
「損切丸」的視点から明らかなのは日銀とFRBの金融政策の差。アメリカでは今 "テーパリング" 開始の時期を巡って米国債市場が上下に激しく変動しているが、実は日本では意外? ↓ (4/7)にも「お先に!」 ↓ (6/30)もう相当 "テーパリング" が進んでいる。
事実上マーケットへ追加の「資金供給」はストップ。*「日銀バランスシート」 ↓ を見ても3月末以降ほとんど増えていない。未だに「資産買入」を続けているFRBとの差は歴然である。
*7月末で3月比+8.7兆円。その殆どが「貸出」+5.7兆円で、 "借り手" は調達した「お金」を「当座預金」(+16.3兆円)に溜め込んでいるだけ。簡単に言えば政府 → 個人・企業に渡った「お金」は銀行に滞留しているだけでマーケット=経済活動には廻っていない。これでは株価は上がらない。
そして株価に直接的影響があったのが実質「株・ETFの買入停止」。株をやっている人のほとんどが認識しているが、「公的マネーが大株主 8割」- 日銀・GPIFによる「株買い占め」。 ↓ が今の日本の株式市場の現状であり、大きな ”歪み” が生じている。
いくら日銀が「資金供給」しても民間が「預金」を溜め込むだけで経済に廻らないのだから、「公的資金による株の買い支え」が途切れれば日経平均が下がるのはある意味自然な動き。株式市場関係者の受け止めは冷静だ。
日銀にも ”事情” がある ー 実は「お金」が足りない。
30~80兆円もの「資金繰り支援」を財務省=「政府預金」=短期国債発行から受けている現状ではもう日銀に振る袖は無い。そうなると「資金繰り対策」として償還期日のない「株」は真っ先に買入停止をせざるを得ない。「量的緩和」の枠組みは日本ではもう「限界」に達しているのである。
更に問題なのは、なぜ日本人がそんなに「お金」ばかり溜め込むのか?
最大の要因は「リーマンショック」「東北大震災」「コロナ危機」と相次ぐ経済危機で消費心理が萎縮し「お金」を使えなくなっていること。これは個人も企業も同様。
そしてもう一つ深刻なのは「政府に対する信頼の欠如」。今の感染対策が代表例の1つだが、国民全般が将来を見通せないため「お金」を気軽に使うことが出来なくなっている。原発事故も消費税増税も何の説明もないままに「エネルギー賦課金」が課せられたり、増税分が違う事に使われらたり。年金・健康保険等の社会保障費もどうなるかわからないのに、選挙の度に不要な「お金」だけばら撒かれても財布の紐は緩まない。
「デフレは大変だった」
こう言う方が多いかもしれないが、筆者の意見はちょっと違う。「生活コスト」を考えると「デフレ」ではない今の方が大変ではないか。↑ のような細かい公費負担の増加は「可処分所得」をじわじわと削っている。加えて昨今の「値上げ」の嵐。鶏肉、卵、食用油、木材、ガソリン、etc.. 値段が下がっている物を探す方が難しい。
そう、明らかに「インフレ」は始まっている。
「預金大国・日本」としては、実は「デフレ」の方が楽だったはず。ここからは通常の税金以外にも「インフレ税」の徴収も始まる。共に1,000兆円を超える「国家債務」と「預金」だが「インフレ」の恩恵が前者にあるのは明らか。苦しむのは国民、というカラクリだ。
ここで興味深いのはアメリカ人は「貯金大好き」になったのか? ↓ (6/4)という疑問。深刻な「コロナ危機」がアメリカ人の消費マインドに変化をもたらしたのか、「預金溜め込み」の前兆が窺える。パウエル議長をはじめとしたFRBも認識しており、今後の金融政策の材料となりそうだ。
ただ「お金」>「物」の需給要因主導で物価は上昇傾向にあり、日本が20年以上も経験した「デフレ」にはなりそうもない。起こるとすれば "スタグフレーション" だろう。
一方今の「低すぎる米国債金利」が示唆しているのは、「例え "スタグフレーション" になってもFRBが利上げしないかもしれない」という "怖れ" 。 "経済理論" に反して物価が上昇しても金利を上げなければ、これは「シン・預金税」とも呼ぶべき新たな「増税」だ。
確かにそれ程の「巨額債務」であり、国家が本来「金利」が持つ「所得分配機能」を放棄して「債務回収」を優先する可能性もあると筆者は踏んでいる。「低すぎる米国債金利」の意味するところは「アメリカ人の預金溜め込み」+「シン・預金税」なのかもしれない。まるで「日本化」である。
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