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「130万円の壁」と「人手不足」。

 メディアネット「130万円の壁」が喧しい。アルバイトパートタイムで働く主婦層を中心に所得税、住民税や配偶者控除、あるいは社会保険料の免除が外れる年収基準が103万円、106万円、130万円、150万円など複数あり、特に*130万円を超えると実質手取額が減ってしまう。依って年収が130万円を超えないように ”働き止め” をする人が続出する。

 何を隠そう、昨年奥さんが働きに出た「損切丸」家はまさに「130万円の壁」に阻まれた。驚いたのが国民健康保険料のジャンプ。家計全体で見れば、計算通り ”持ち出し” になった。これは紛れもなく税制の "穴" 。

 「デフレ」で「人」が足りている間は問題が露見しなかった。やはり「インフレ」は様々な問題を顕わにする。ある番組で保育園の話をしていたが、年末が近付くとパートさんの「お休み」が急激に増えるという。それでなくても「人手不足」で苦しんでいるのにまさに ”火の車” 。良くテレビに出るスーパーの社長もこの「壁」のせいで「人繰り」が大変だと嘆いていた。

 これは国の制度が「デフレ」脱却出来ていない証でもあり、長い間この国で「お給料」が上がらなかった原因の1つと言えよう。今のままだと「賃上げ」すればするほど働き手が減る、という矛盾が起きかねない。

 こういった背景もあり、日本の「賃上げ率」は+2%程度で停滞している。「非正規労働者」の割合が37%前後で高止まりし、労働組合の加盟率が低下している影響も色濃い。

 だから「人手不足」で求人が急回復しても「実質賃金」≓「名目賃金」ー「物価上昇率」が低下するという悪循環に陥っている。

 皮肉にも「デフレ」時代に増やし過ぎた「非正規労働者」の割合が経営の足を引っ張り始めている。こうなると単純に「賃上げ」するだけでは「人手不足」は埋まらなくなり、「130万円の壁」など国の税制も含め「インフレ」型経済に抜本的な「リフォーム」が必要になる。今後「賃上げ」に二の足を踏むところは経営が厳しくなるだろう。

 こう書いてくると何だか政府が「130万円の壁」の金額を引上げそうな気がしてくるが、さてそれはどうだろうか。今でも「増税、増税」と旗を振って ”赤字” 穴埋めに躍起な現政権、財務省が徴収額を減らすような措置を施すようには思えない。むしろ現在の「壁」を引下げ、あるいは撤廃して低所得者からも税金や社会保険料を徴収する方向に向かうのでは無いか。そうすれば年収を106万円、130万円等で抑えるインセンティブは消える

 「給付金」然り「子ども手当」然り、これらは低所得生活者向けの「セーフティーネット」と「税制」をごちゃ混ぜにしたため混乱が起きている”貧しい者の味方” に聞こえる「所得制限」は政治的に受けがいいのかもしれないが、本来は失業保険や生活保護など「セーフティーネット」で賄う範疇税制はあくまで公平性を担保すべきで、このような「壁」が複数存在する事自体がおかしい「お金持ち」を叩いても何もいいことはない

 理想を言えばパートであっても**働けば働くほどメリットが増すような仕組み作りが必要で、「お金」をたくさん貰う奴が "悪” =「清貧思想」からは早く脱却すべき。筆者も経験したが、あんなに健康保険料が跳ね上がるなら働かない方がいい。相当病気にかからない限り元が取れない!(苦笑)

 **「少子化対策」としてフランスで採用された「N分N乗方式」  が議論の俎上に上がっているようだ。i.e. 年収600万円の家計:現状ー働き手(両親)に個別に課税 → 4人家族の場合年収を4(=N)で割ってそれぞれに課税。結果適用税率が下がるため税額が減る、つまり子供を産めば産むだけ税が優遇されると言う理屈。4人でホテルに泊まるなら、1人ずつ部屋代を徴求する日本方式より部屋にチャージするイギリス式の方がお得、みたいな感じか。まあこのままでは何も変えられないのだからトライしてみるのもいいだろう。最も同性婚に対し「社会が変ってしまう」と首相が "珍回答" をする政権では無理か。「社会」を変えようとしてやっているのだが...

 デフレの間は放っておけたが「雇用」が逼迫している今は待ったなし。このままでは介護事業者や保育園で廃業に追い込まれるところが続出し、社会的弊害が顕著になる。企業側に思い切った「賃上げ」を促すよう、政府の支援が不可欠だろう。

 こう書いていると益々 日本人はもっと「お金」に拘っていい。 ー 「清貧思想」の呪縛からの開放。|損切丸|note の思いが強くなる。選挙もそうだが、結局政治や世の中を変えるのは国民自身の行動が肝になる。

 マーケット的に考えると、やはり「130万円の壁」問題は「インフレ」と直結する。時代は明らかに転換した。インフレのコアは雇用コスト(人件費) > エネルギー・商品価格。|損切丸|note なので、原材料価格や「円安」「円高」に関わらず、今後かなり息の長い動きになる

 「金利」面で考えると「利上げ」を危惧する向きもあるが、増えた「お給料」に利息が付くとなれば、それも働くインセンティブになる「デフレ」時代の「ゼロ金利」とは全く ”逆” の感覚だ。

 既に税収増の傾向が出ており実は財務省にとっても悪くない物価が上がればその分消費税も増えるし「お給料」が上がれば「所得税」も増える。そんなことは賢い財務官僚は当然判っており、「増税」騒ぎはいわば "三味線" を弾いているだけ取れる所からは取っておこうとするのが彼らの習性でもあるので、納税者は目を凝らして見ていかなければならない。

 このタイミングで元・財務官の日銀総裁が交代するのはとても興味深い"時代の必然" かもしれないが、これが日本が変われるラストチャンスFRBが早期「利下げ」に追い込まれる事態にならない事を祈るのみである。


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