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日本版「DX」(デジタル・トランスフォーメーション)の行方 ー マイナンバーカード etc. etc.

 本日(9/3)、やっと「マイナポイント」を登録した。「損切丸」の場合、「マイナンバーカード」を事前に作っていたのでそれ程大変ではなかったが、それでも結構面倒くさかった。ITに疎い60代以上の方が独力で行うのはほとんど無理だろう。

 「マイナンバーカード」で思い出すのは「10万円給付金」の際のドタバタ。筆者はせっかく速やかにオンライン申請をしたのに、実際の振込は約1か月後。おまけに「10万円XXX口座に振り込みました」という返事が「お手紙」で来たのには正直呆れた何の為のオンライン化なのか

 手前味噌で恐縮だが、この手の話をしているといつも筆者が英系銀行でこなしていた資金業務のことを思い出す。筆者の肩書きは「資金証券部長」だったが部下はたった1人。だがたった2人でこなしていた業務は、日々の金繰り業務(ドル、円、ユーロ)、②BOJ NETという固有端末を使った日銀オペ、国債入札等、日銀、金融庁、財務省の連絡窓口、等等多岐に渡っていた。邦銀なら軽く20人は必要な内容だ。

 それを可能にしたのは*膨大なシステム投資、今で言うDX(デジタル・トランスフォーメーション)だ。平均的な従業員の ”質” では外銀の東京支店は邦銀本店の足元にも及ばないが、このシステム投資が業務効率で圧倒的違いを生んでいた

 ある政府系金融機関の資金繰り担当者が「損切丸」の所に研修で来た。資金繰りシステムをお見せして「ドルや円の資金繰りがこれで判るんですよ」。ボタンをポチッと押して出てきた画面を見て仰天していた。「うちはまだ紙で資金繰りしているんです」。200枚以上(1年分)の手書きの資金繰り表をめくりながら毎日の資金繰りを立てているという。しかも東京、ロンドン、NYとバラバラ。グローバルプラットフォームで情報を共有している「損切丸」の銀行とは全く状況が違っていた。「うちはこれに追いつくには20年以上はかかるでしょうね」。担当者から大きな溜息が漏れた。

 まずはコスト面から計って見よう。仮に2人の部署に20人の部署の3倍の給料を払ったとしても、6:20で人件費は大幅に減るし、その分10をシステムに投資してもまだおつりが来る。これをエコノミストがよく使う「生産性」という言葉で表せば、外資系の圧勝となる。当然1人当たりの給与も高い。どうも日本の「給料が上がらない」という不満はこの当りに原因があるのではないかと思う。労働者の質は高いのに本当にもったいない。

 スタッフが少ないことのメリットも実は多いまず揉め事が少なく、決定が早い。当然無駄な会議もない。邦銀から転職してまず感じたのがこの事。いちいち「ハンコ」がなければできなかった取引は即決だし、誰も異を唱えたりしない。報告も最小限で、とにかく儲けさえすればどこからも文句はこない。「日本方式」に慣れきっていた筆者には怖いぐらいだった。

 ここへきてやっと日本でもDXという言葉が踊るようになってきた。これも「コロナ危機」効果とでもいおうか。ただ、デジタル化=機械化と思うかもしれないが、実は大事なポイントが2つある:

 ①下部組織への権限委譲(文鎮型組織)

 ②能力型人事による適材適所

 いくらシステムにお金をかけても、取引や商売の決裁権限が現場に降りてこなければ意味が無い。いちいち「ハンコ」を貰いに行っていたのでは「生産性」は上がらない。また人数を絞る以上、そのスタッフは「優秀」でなければならない。そうなると厳しい「実力主義」が人事に必要になる。

 厳しいようだが、この2つがまさに日本の社会がこの30年余り「避けてきた事」ではないのか。特に**「前例主義」で先送りばかりしてきたお役所が最も遅れてしまっている「昭和の亡霊」に取り憑かれた「団塊の世代」がこれまで「Japan as No.1」を引きずってきたせいだろう

 **ある霞が関のお役所(財務省、金融庁以外)に行った時の事。部屋と廊下に人が溢れていてビックリした。まさに「密」「何の仕事をしているんだか...」。表面的には忙しくされているのだろうが、おそらく無駄、重複は相当なもの。人を減らせば会議も減る。ザックリだが「人を半分には減らせるはず」と確信した。

 しかし役人ばかり責めても仕方がないのかもしれない。国のトップが70代、80代に牛耳られてきた訳だから、デジタル化など進みようもない。おまけに彼らは「自分達が一番」と信じて疑わない自信家ばかりだ。

 DXは表向きの顔に過ぎず、本質は「人事・社会システムの再構築」にある。繰り返しになるが日本人のポテンシャルは高い。あとは40代以下の人々がやる気が出る仕組み” をうまく作ってあげることだろう。そうすれば「生産性」も「給料」も自然に上がってくる

 折しも自民党の総裁戦真っ只中 ...。なかなか世代交代は進まないようだ。ただ選挙権が徐々に若い世代に移るにつれ、政治・官僚の世界も少しづつ若返ってはくるだろう。今回の「コロナ危機」がいいきっかけになる事を願うが、忘れていけないのはDXは「人」あってこそ。そして機械のみならず人を含めた「システム構築」が大事だ。「日本」を諦めるのはまだまだ早い

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