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"財源" は「国債」? ー ”借金” の基本。

 「車を買いたいのでローンを組みたい。お金は ”借金” して返します」

 皆さんが車のディーラーで顧客がこう言ってきたらローンを組んで車を売るだろうか。「損切丸」ならこんな人には絶対に売らない「お金」が返ってくるか不安だからだ。

 「防衛費増額の "財源" は国債で」

 ??? 本気でこんな事を議論しているのだろうか「借金」をしたことがないか、あるいは悪質なレトリック(詭弁)だ。とにかく「お金」についてあまりにも無知

 「車」を「戦車」「ミサイル」に代えて「ローン」を「国債」に言い換えれば個人も国も理屈は同じ危なっかしくて「お金」など貸せない

 この話は ”借金” の基本をはき違えている

 「商業手形」を使った一般の商取引を例にご説明しよう 

 通常「商売」をする時に商品や原料を仕入れるために「お金」が必要になる。出来上がった製品を売るために時間がかかるため、代金回収までの間「資金繰り」を回すために考えられたのが「商業手形」だ。

 例えば製品売却に3ヶ月(90日)かかると見込めば、販売業者は3ヶ月の「商業手形」を振り出す。製造業者はこれを銀行に持込み「お金」に代え、また製造に使う。例えば1,000万円の「商取引」だと:

 ①B社がA社から製品1,000万円分買取
 ②B社が3ヶ月1,000万円の「手形」をA社宛振り出し
 ③A社はB社「手形」を銀行で「割引」。995万円受取(金利@2%)
 90日後:
 ④B社が売却金1,100万円で「手形」1,000万円決済(粗利+100万円)
 ⑤A社のメインバンクが1,000万円の「手形」決済。「貸出」回収。
 ⑥A社の利益:1,000万円ー原材料費900万円ー利息5万円=+95万円

 多少の差はあれ”借金” の基本はこれ。「借入元金」は商品や原材料の売買で支払われ、収支は「利益」ー「利息」で決する「利益」<「利息」の状況が続けば、それは事業として「赤字」。その状況が続けば最悪「債務超過」に陥って「倒産」だ。商品自体が売れ残れば事態の悪化が早くなる。

 個人で代表的なのは今 「固定金利」か「変動金利」か。ー 「銀行」の立場から考えて見る。|損切丸|note で話題の「住宅ローン」

 なぜ銀行は変動金利@0.40%なんて破格の低金利で貸してくれるのか

 1.「お給料」という安定収入=「返済原資」が見込めるから
 2.自宅(不動産)という担保=「返済原資」があるから

 だから「リストラ」になって「お給料」が途絶えて返済が滞ると銀行は容赦なく「借金」返済を迫る。最終的には担保物件=自宅の「競売」だ。

 ではの場合はどうか。最大の「返済原資」は「税収」。ところが現在の「日本株式会社」の収支はざっくり年間+600兆円の収入に対して▼1,000兆円の支出。▼400兆円もの「穴」が開いている。これを「国債」という「借金」で賄っている。

 さてここで「防衛費増額」の話。2023年度から5年間で▼43兆円も増やすという。今でも「資金繰り」に「穴」が開いているのだから、その追加の「お金」をどうするのか、が「財源論」の主題。

 国が財源として見做せるのは2つ

 1.税収
 2.国有資産

 残念ながら期限が来れば返さなければならない「国債」はまさに「借金」=Debt であり「返済原資」=repayment にはなり得ない。その「国債」=「借金」をどの「お金」で返すのか、という議論に戻ってくる。結局  の2つに帰結する。

 特に「防衛費」の場合は今後も恒久化する可能性が高く、2.国有資産の売却では賄えない。方法としては2つ ↓

 A.増税
 B.(他の)支出削減

 *MMT(現代貨幣論)支持者の肩を持てば、確かに国は「国債」を発行し続けられる。だから「資金繰り」は破綻しないかもしれない。だが、その代償として起きるのが「インフレ」=貨幣価値の下落だ「円安」やJGB(日本国債)金利の上昇が起きているのはその端緒であり、続ければ事態はもっと悪化する自社株を発行し続ければ「利益の希薄化」で株価が下落する現象と酷似している。

 何度か書いてきたが、そもそもMMTに「インフレにならなければ」なんて前提条件が付くこと自体理論として破綻している問題の根源は「インフレになるかどうか」なのだから。「預金大国」日本で余りにも長い間「低金利」が続いたため "錯覚" が起きたのだろう。だがその終わりは近い。

 "財源" は「国債」なんて話を見ると想い出すのは「融通手形」 ↓ 。商取引の実体がないのに「手形」を切り合って「資金繰り」を回す ”インチキ” だが、「借金」を「借金」で返そうとする今の日本政府のやり口はこれに近い。早く修正をかけないと取り返しがつかないことになる。

(参照) 銀行、出番ですよ。-「貸さぬも融資」ノウハウは残っているのか?|損切丸|note

 これでは日銀新総裁が何人にも断られるはずである。誰がやっても ”茨の道”。冗談で無く「預金封鎖」とか「資産税」なんて悪夢が蘇りそう。結末は「超円安」「金利急騰」か、はたまた「大増税」か。いずれにしろ誰かがケツを拭かなければなるまい。できれば儲かる方に廻りたいものだが、「大増税」では生活民は打つ手無し。それでもトルコレバノンの惨状を鑑みれば「ハイパーインフレ」よりマシかもしれない。

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