続・「インフレ」が迫る ”強制退去” 。ー 増え過ぎた「ファミレス」も店舗整理へ。
「インフレ」が迫る ”強制退去” 。ー 「物価高」と「人手不足」の狭間で。|損切丸|note の続編。今回は倒産してしまう零細・中小企業ではなくて、「ファミレス」大手「すかいらーく」に焦点を当ててみる。
発表資料によると、従来の営業利益100億円 → 5億円、当期純損益40億円 → ▼20億円へと大幅に下方修正。この状況を重く見て、6月末に不採算店など「100店の閉店」を決断した(実際に閉店するのは約6カ月後の2023年初。全国3,088店舗 → 3,000店舗割れへ)。主因は「インフレ」であるという。
問題はその「インフレ」の中味。
ガソリン、電気等エネルギー価格の上昇や小麦など食品原材料の高騰に目を奪われがちだが、実は国際商品市況で原油、小麦 ↓ などの原材料価格は既にピークを打って下がってきている。いわゆる「コストプッシュ・インフレ」が決定的要因ではない。
日本の「インフレ」の正体。|損切丸|note や インフレのコアは雇用コスト(人件費) > エネルギー・商品価格。|損切丸|note でしつこく書いているが(苦笑)、企業経営を左右する「インフレ」は「賃金インフレ」、つまり「人手不足」が根源要因だ。
これは今に始まったことではない。"ベビーブーマー" "団塊" の引退に伴う「人口動態」に起因しており、2016年以降トレンドが世界的に変化。「コロナ危機」で包み隠されていたマグマが「正常化」とともに噴き出している。
「すかいらーく」と対照的な動きを見せたのが、価格帯の高い「ロイヤルホスト」 ↓ 。*かつて筆者の自宅近くにも3店舗あったが、数年前から閉店が続き今や1店舗のみ。商品単価も明らかに+20~30%上がったが、それでもいつも混んでいる。顧客にしてみれば行ける店舗が減った分選択肢も減る訳で、多少高くなっても店舗当りの集客力は落ちない。今では赤字も解消されつつあり、株価は上向き。
考えて見れば「デフレ」は企業経営者にとって ”天国” 。「人件費」を削れば簡単に利益が上がったのだから。一方被雇用者は勤め先が無く「安い賃金」を受け入れるしかなかった。厳しい言い方をすれば、あまり優秀でない経営者でも「デフレ」に安住できた。
だが「人手不足」で「インフレ」に大転換した今はそうはいかない。今度は労働者に就職先の選択肢が増え「お給料」も上昇傾向。「値段」を据え置けば赤字が膨らみ「人件費」を削ろうとすれば「人手不足」に陥る。
価格転嫁に値するような付加価値に欠ける企業・店舗は淘汰の波に飲み見込まれる。すかいらーくの「100店舗閉店」は象徴的出来事で、今後は「日本型」から「アメリカ型」へのモデルチェンジ ↓ が進む。
焼肉店の大量閉店や唐揚げチェーンの不振も同根であり、「日本型デフレ経営」ではもうやっていけなくなる。「人員整理」「店舗閉鎖」と聞くと暗い「不景気」を連想しそうになるが、それは「デフレ」意識が抜けきっていない証拠。「超低金利政策」や「バラマキ財政」で "ゾンビ企業" を延命させてきた日本ではむしろ「起るべき調整」。「団塊」8百万人の生活を支えるために布かれてきた政策もようやく転機を迎えつつある。
日経平均が再度@30,000円を目指し始めたのは偶然ではない。
現政権は「何もしない」「 "検討" 使」などと揶揄されているが、こうなると「何もしない」方がいいのかもしれない。大体霞ヶ関や永田町が乗り出して良かった試しがない。「XXXの宿」や「XXXミクス」が最たるもの。イライラしながらも、案外このままがベストだったりして。
最近外でご飯を食べようと思うと選択肢が随分減ってしまったことに気付く。こうなると多少高かろうが行くしかない。もっともレトルト食品の保存機能の向上で、カレーやスパゲッティなら美味しくない店に行く必然性もなくなった。「すかいらーく」や「ロイヤルホスト」など増え過ぎた「ファミレス」が整理されていくのはいわば時代の流れ。今後は「値上げ」に値するような商品開発力が問われる。そのためには一にも二にも「人」だ。
どの産業にも言える事だが、レバノンに帰ってしまった自動車産業の元・社長のような「コストカッター」が重用される時代は終わりを迎え、日本なら今の「円安」を武器に攻めに出る経営が求められる。そうすれば日経平均は@30,000円どころか@50,000円も目指せるようになる。この国も来る5年間が勝負所になるだろう。
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