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「トランプ2.0」の衝撃

 「トランプ元大統領が狙撃され負傷」

 3連休(7/13~15)で東京を離れていたらとんでもないニュースが飛び込んで来た。これで「米大統領選の勝敗は決した」と感じたのは「損切丸」だけではあるまい。マーケットは「トランプ2.0」に向けて動き出している

 まずは米国債を中心とした金利市場

 イギリスに続いて2年債と30年債の名目金利が並んで話題になっているが「減税」を標榜している氏の事、おまけに「トランプ1.0」の記憶を辿ればFRBに「利下げ」圧力を掛けてくるのは確実。 ”トランプトレード” と呼ばれているようだが、筆者が現役の米国債トレーダーでも「2年買い+30年売り」でポジションを取る。デルタ(リスク量)を単純調整するなら、30年債100億円のショート(売り)に対して15倍=1,500億円2年債を買えばいい

 「インフレが当局目標の2%に向かって低下しているとの自信」

 当時 "首" になりかけたパウエル議長も "覚悟" を決めたのか、こんな発言をしてマーケットは「9月利下げ」に向けて走り出している。1年以内の米国債金利が低下しているのでかなり現実的

 3年程前に ”金利が上がれば上がるほど下がる” 米国債金利。|損切丸 (note.com) なんてnote. を書いたが、今度は差し詰め ”金利が下がれば下がるほど上がる”「利下げ」が早過ぎれば景気過熱・インフレを招くわけで実はそれ程不思議な事ではないのだが、これに「大型減税」が加わればまさに ”火に油”「インフレには利下げ」のトルコもそうだったが "ポピュリスト" が国のトップになると起り易い現象ではある

 問題は「株」と「FX」(外国為替)。特に後者は複雑だ

 「米国債売り(金利上昇)」≓「ドル買い」

 ここ数年を振り返れば金利差を主軸とした「キャリートレード」が主戦場だったFXではこれが "必勝の法則" 。確かに「円売り」はまさに「黄金トレード」であり、いい思いをした投資家・トレーダーは多い。だから「黄金トレード」に群がるのも無理はない

 だが筆者のようなオールドタイマーの認識は全く逆

 「米国債売り」≓「ドル売り」

 1兆ドルを超える「キャリートレード」を10年以上保持している財務省の外貨準備 ↓ で考えてみると分かり易い

 筆者の記憶では平均@107円程度で「ドル」を仕込んでいるので@157円だと単純計算で+50円、MTM(時価評価)で50兆円 "勝っている" 。加えてバカにならないのが「金利収入」平均@3%で10年回せばそれだけで+3,000億ドル≓+47兆円、合計+97兆円の儲けで、ここまで巨額の利益を上げているファンドはない。まさに ”世界最大のファンド” なのである

 財務省は10年超の米国債をほとんど持っていないはずだが、例えば直利志向の強い人民銀行なら20~30年債をしこたま買い込んでいる可能性が高い。仮に30年を@3%で10兆円を買っていてこれが@6%まで上昇したらそれだけで▼9兆円の「損」。場合によってはFXの儲けを吹き飛ばして「損切り」に追い込まれる。「金利」は時に「為替」より怖ろしい|損切丸 (note.com)

 だから「為替ヘッジ付き外債投資」でやられたN中金は地銀は悲惨だったわけだが、「ドル高」メリットを享受している欧州投資家等も「トランプ2.0」でFXの利益が吹き飛んでは堪らない "必勝の法則"「米国債売り」≓「ドル売り」に変わる可能性は大いにある

 FXは「多数決」なので「買い」が続くうちは「キャリートレード」も続く。7/11に続いて7/12,7/15も財務省による「ドル売り介入」があったのかもしれないが、あれらは長期投資の「利益確定」=売り切り。直近の「介入」で20兆円近い "荷物" をマーケットは背負い込んでいる訳で、冷や酒のように「需給」に影響してくる。ここ2年のトレンドから1兆ドル単位の「黄金トレード」が積上がっているのは確実で、端から見ているとまるで「風船ゲーム」のよう。あとはどこで破裂するかの勝負に突入している

 本邦企業による第1次所得収支 ≓ 月+4兆円>貿易収支▼2兆円など 「円高」のマグマ|損切丸 (note.com) も海外に蓄積している。商社や製造業などの財務部では今頃「トランプ2.0」対策を練っているのは確実で "流れ" が変化するかどうか、息を潜めて見つめているだろう。一方方向に傾き易い日本人だけに一度堰を切ると "決壊" するリスクも高い

 株は単純に「トランプ2.0」を歓迎して上がっているが、「米国債売り(金利上昇)」→「ドル売り」に転換したらもうわからない。特に米国株は:

 「利下げ」vs 「新NISA」

 月+2,000億円とも言われる「新NISA」が今の米株高を支えているのは疑いの余地はなく、仮に「円高」反転した場合 "逆流" が怖い。GAFAや「マグニフィセント7」などハイテク銘柄の比率も高いだけに、製造業に焦点を当てたトランプ氏に変われば買いの対象もグロース株に移行するだろう(実際そういう "流れ" も見えてきている)。思わぬ「損切り」に見舞われるリスクもあるだけに、そこはFRBによる「利下げ」とのせめぎ合いになる

 ちなみに…圧力はFRBだけでなく日銀・財務省にも向かうはず「超低金利で円安誘導している!」。いわゆる「近隣国窮乏化策」批判は確実でこちらも戦々恐々。ガラリと風景が変わる可能性もある

 とにかく3~4年前に「トランプ1.0」を経験した立場で言うと、まともじゃない ー 最後は「信用」|損切丸 (note.com) 特に「インフレ」に突入入した今マーケットが滅茶苦茶になる可能性は高く「トランプ2.0」の衝撃は「ディスインフレ」だった前回の比ではない。中東や東欧の状況も流動化は必至で、氏ヘの弾が逸れた事が後に「歴史の必然」となる気がしている。悪い ”胸騒ぎ” |損切丸 (note.com) が止まらないのは筆者だけではなかろう

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