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「大人になったらなりたいもの」第1位「会社員」。 ー 「投資採算」も検証してみる。

 「大人になったらなりたいもの」第1位「会社員」

(第一生命保険:第 32 回「大人になったらなりたいもの」アンケート調査結果より。対象:全国の小学生・中学生・高校生 計 3,000 人を対象)

 「会社員?ずいぶん ”ざっくり” だなあ」

 ヘッドラインを見た時の正直な感想。解説に曰く、親の在宅ワークが増えて「会社員」が身近になったからだとか...。う~ん。

 昔から似たような調査はあったが、筆者の学生時代は*「プロ野球選手」「歌手」など「夢」「憧れ」の対象が選ばれていた。随分 ”現実的” になったものだがこれも時代か...。「会社員」小学生男子(標題添付)に加え、中高生は男女とも1位だ。↓ 

大人になったらなりたいもの 中高生

 ちなみに筆者の「大人になったら一番なりたくないもの」1位は「銀行員」だった。コテコテのポマードで固めた「七三分け」(死語?)、ゴキブリのように黒光りした革靴多い転勤厳しいノルマ etc. etc...。何を取っても嫌なものばかり。それが東上野の支店で大きなかご付の黒い自転車に乗って営業に回るようになったのだから皮肉と言えば皮肉(笑)。もっともその後進んだ道は「銀行員」とはかけ離れた職業だったが。

 「損切丸」の娘が今年大学受験だったことは何度か note. したが、AO入試とか「センター併用」とか仕組みも複雑化しており、筆者の「共通1次テスト」の頃とは比較にならない程大変になっている。受験生も難関大学を目指すなら「1日10時間」の学習を強いられ、こんなに苦労するのにその帰結が「会社員」というのも「何だかなあ」と思う。

 東京にいれば T大(国立)、K大W大(私立)は別格。競争は熾烈を極め、私立なら倍率が5~10倍なんてところもある。確かに経済界を見渡せば主要企業のトップはこの3つで占められているし、霞ヶ関も同様**多くの人が企業・組織内での ”出世” を目標としているのだろう。

 **「偉くなりたくてこの銀行に入ったんだろう?」。筆者が某大手邦銀を辞めると告げた時の先輩行員(国立難関・K大卒)が投げかけた言葉だ。そこが自分のいる場所ではないと確信した瞬間でもある。アジアの主要拠点だったその支店のメンバーは蒼々たる学歴。能力もかなり高いのに毎日やっている事は「仕事の押し付け合い」賢いだけに質が悪い(苦笑)。人事考課が「減点主義」なのだから必然こうなる仕事を減らせばそれだけ「失敗」が減るわけだから

 難関大を目指す人は「人脈」や「前例踏襲」を狙っているはず。「大手企業就職先」が志望校を決める指標にもなっている。だがふと思う:

 こんな事を繰り返していたから日本は衰退してしまったのではないのか

 もちろん大学の学習・研究環境を否定するわけではない。だがともすれば「就職予備校」と化してしまう現状ではイノベーションは生まれにくい。気が付けば世界はGAFAに支配され、急成長する中国やアジア諸国に様々な面で追い抜かれてしまった。

 前向きな変化がないわけではない。大学も「産学共同事業」など "ベンチャー支援" を強化しており、実際起業する学生達なども目立ってきている。遅ればせながら***欧米を追いかける動き。思えばトヨタパナソニックも元は町工場から出発している "ベンチャー" だ。

 ***筆者の20年来の盟友で3歳年下のイギリス人は大学を出ていない「高卒」。だがそれで大手英銀の役員まで上り詰めた。彼曰く「大学で4年間過ごすよりも早く現場で鍛えたかった」。そうして大手米投資銀行に就職した彼は底辺からたたき上げ、最後は東京支店のトップにまでなった。当然仕事はもの凄くできるし頭の回転も早い完全な「実力主義」である。しかし大手邦銀で「高卒」が役員になるなんてあり得るだろうか? こういう点で日本はまだまだ遅れている。「現状維持」は "毒" になる。

 ここで「損切丸」らしく「受験」の「投資採算」を検証してみたい。

 リターン:「会社員」生涯賃金 2億円(40年間)

 コスト: 計 ▼1.7億円~▼1.8億円 ↓

 ①学費:国立▼250百万円(4年)▼350万円(理系6年)、私立▼500百万円(4年)▼600万円(理系6年)

 ②仕送り、生活費:▼400万円(4年)、▼600万円(理系6年)

 ③塾、その他:▼600万円(中高6年間)

 ④「会社員」租税、社会保障費:▼6,000万円

 ⑤「会社員」住居費、生活費:▼1億円  ≓(持家、住宅ローン利息)

 利回り:@0.25%~0.38%(年率)

 思いつくところざっくり計算してみたが、やはりネット「利回り」は驚くほど低い。最近では大手企業でも50代で「出向」して年収半減なんていうのもザラなので、生涯賃金2億円が確保できるのかさえ怪しい。下手をすれば****「元本割れ」である。

 ****仮に ”種銭” が2億円手元にあれば、「教育」に投資するよりも30年国債@0.60%=税引後@0.45%の方がリターンが大きいことになる。

 何とも割りの悪い「投資」である。塾産業に煽られて「教育投資」にのめり込む前に冷静に考えた方が良い近年異常に過熱している医学部などは私立に行けば▼2億円かかるといわれるが、本当にペイするのか? ブレークイーブンの生涯賃金6億円というのは結構ハードルが高そう。なぜなら国は「お金」がなくなって「薬価差益」等の公金支払をどんどん削っているから。医療費の自己負担がどんどん上がっているのも状況は一緒だ。

 根本的な事を言えば、戦後日本の製造業が勃興したようなイノベーションを経て日本がもっと稼ぐようになり「賃金」が上がる必要がある。そのためのベンチャー起業であり「会社員」が1位では困る(苦笑)。おそらく為替株価はそういう変化を織り込んで動いていくことになる。

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