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"壮絶" な「サバイバルゲーム」に備えてⅢ ー 気になる「お金持ち」の "キャッシュフロー" 。

 「サバイバル」シリーズの第3弾マーケットは大分変な感じになってきた。日経平均は今日(7/20)前場で一時前年終値=@27,444.17を割り込み、年初来がマイナス圏にビットコイン(BTC)も再度下値抵抗線と見られる@$30,000.-に接近。いずれも保有者は気になる所だ。

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 欧米の株価はまだ余裕がありそうだが、昨日(7/19)もDAXが急落するなど「リパトリ」(Repatriation、損失穴埋めのための資産処理)と思われる動き。相変わらず ”感染状況の悪化” を株価下落の要因にしたいメディアもあるようだが的外れ*頭が重かった市場が耐えきれずに投げた印象だ。

 「インフレ」が取り沙汰されて以降、コアな「お金」は株式市場から流出しており、ジリジリと値は上げていたが市場の活気は低下し続けていた。経験的に言うと、あれはNYダウ@$30,000.-ナスダック@$13,000.-プットオプション(売る権利)の売り手口による上げ方ボラティリティー(変動率)の低下に賭ける戦略だが、 ”玉” が切れて株価が下げ始めると、行使価格に接近するにつれ売りを加速させることが多い。

 株価の下げと同時に米国債金利の低下が加速し10年は一時@1.20%割れ。こうなると ”びっくり金利低下” とも言っていられない。

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 一説にはこの金利低下局面で一部ヘッジファンドが20~30年の米国債ショート(売り。金利上昇方向に賭ける取引)を積み増していたらしい。確かに超長期債は Sensitivity 金利@0.01%当りの収益性)が高いので、 ”儲けの誘惑” に駆られるが、逆目に出た時の ”やられ” も半端ないCPI@5.4%の残像が消えず、 "自信満々" で売りから入ったのかも知れないが、こういう時が危ない相場はいつも理屈通り動く訳ではない

 またもや「リパトリ」「損切り」が吹き荒れる中、頼みのTIPS(物価連動債)も崩れ出した。5年BEI(予想物価上昇率)はまたも@2.50%割れ

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 金利系トレーダーはまさに「サバイバル」の様相を呈しており、絶好調だった2020年と打って変わって2021年は受難の年。理屈っぽい人が多いだけに余り "2020年の栄光" にすがると大火傷をするだろう。

  こうなると鍵になってくるのが「お金持ち」の "キャッシュフロー" 。今も株等を早めに売った「お金」が銀行を中心に滞留しているが、いつ「リスク資産」に戻ってくるのか。おそらく神経を尖らしてるのが「FRBがどう金融引締めに動いてくるのか」

 「インフレ」→FRB利上げのシナリオの中、「お金持ち」の多くは過去の経験則から半ば反射的に株等から降りたと推察されるが、今回「インフレ」と「景気」の関係はかつて無い程複雑であり、判らない部分が多すぎる

 物価の上昇は消費マインドの腰を折ってしまうのか? ↓ (7/17稿)

 これはFRBと「お金持ち」に共通する感覚で、だからこそ両者とも慎重を期している。何とも言えない市場の ”居心地の悪さ” はここから来ている。

 "CPI@5.4%で米国債10年@1.21%とか30年@1.84%とか馬鹿げている!"

 こう思いがちだが、金利が下がっているのは「お金持ち」=コア投資家が「お金」をリスク資産に振向けていない証でもあり、**金利の理屈と言うよりも "キャッシュフロー" によるもの。実際アメリカの銀行預金は増えている(アメリカ人は「貯金大好き」になったのか? ↓  6/4稿)。

 **これは「JGB(日本国債)現象」を思い起こさせる。かつてJGB金利が低すぎるとして「売り」で挑んだ非・日本人トレーダーが数多いたが、ほとんどが「踏み上げ」に合い惨敗。当時邦銀側では大量の預金を抱えており、金利上昇はJGBの絶好の買い場になっただけ「ゼロサム」で売った分買い戻さなければいけないトレーダーに勝ち目はなかった

 欧米には ”Trend is Friend” という相場の格言があるが、こういう時流れに逆らうなという戒めでもあるのだろう。正直筆者も現役ならショートで「踏み上げ」を喰らっていたかも(もっとも「JGB現象」を知る分、逃げ足も早かったかもしれないが。苦笑)。だがCPI@5.4%ではとても米債ロングから入る "勇気" は無い。この辺りが相場の "アヤ” だ。

 あとはFRBがどの時点で金融政策の「方向性」を決めてくるのか中国の不良債権問題も気になるが、FRBもその事は認識しているはず(おそらく日銀ECBとも共有)。パウエル議長の発言が ”優柔不断” と批判されているが、パンデミック同様過去の経験則が通用しない事態だけに「気迷い」が生じるのは当然だ。「過剰流動性の修正」といい検討事項が多すぎる。

 ここは「お金持ち」のみならず、我々小市民もじっくり構えた方が賢明。何が起こるか判らないのだから。おそらく後に経済史に残る出来事になる。

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