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「キャリートレード」は万能ではない ー 非情の「ドル円相場」

 降って湧いた「円高」。ー 「キャリートレード」の脆弱性。|損切丸 (note.com)
 
降って湧いた「円高」(続報)。ー "成功体験” の威力。|損切丸 (note.com)

 「ドル円」で非情の相場が続いている。まさに 令和でまたまた復活?「意地の悪い相場」ー 今度はドル円|損切丸 (note.com) の様相。昨日(11/28)も@148.80まで強烈な踏み上げがあったが、その後147円割れ

 きっかけはウォーラーFRB理事の「利下げ」示唆発言だが、中長期的なトレンドの中ではこれは ”為にする理屈” に過ぎない。米国債市場来年以降政策金利が@4%まで下がる事を織り込んでしまったが、「中立金利」≓@4.0~4.5%(筆者推定)を下回れるかどうか、大いに疑問

 テクニカルには(標題  5年チャート参照)@149~150円辺りをダブルトップにして「売り転換」したように映る。ただ、未だに「どうせ@150円に戻る」との声も根強くこの下落過程で買いに回った向きも多い。

 気を付けなければいけないのは、この「売り相場」を仕掛けている側にとってはそれが "狙い所" だという事。既に「損切り」を強いられたトレーダーもいるだろうが、まだ切らずに頑張っている投資家、トレーダーも多い。それだけ年間▼7円にも相当する@5%もの「金利差」の魔力は凄まじく、あきらめきれないのだろう。

 相場というものは面白くて、究極「売り」か「買い」かの2沢。それなのに勝率は5割に届かない。もっと言うと「売りから入るか」「買いから入るか」が重要。例えば上昇相場の時に「買い」から入れば「買い」「利食い」「買い」「利食い」…でドンドン儲かるが、下落相場に転換した後も同じ事を続ければ「買い」「損切り」「買い」「損切り」...の悪循環に陥る。

 ギャンブルを扱った漫画や映画で良く出て来るシーンが「最初はそこそこ儲けさせて後でバッサリ刈り取る」。全てAIに任せればスパッと「損切り」できるのかもしれないが、人間は感情の動物。追い込まれた時の方が間違いを犯しがちで、特に「損を取り返そう」という意識が判断を誤らせる。プロが生き残っているのは「利食いは慎重に、損切りは気軽に」で心をコントロールし、常に「売りか買いか」を客観的に判断するからだ。

 トランプ時代の「過剰流動性相場」がそうであったように 「どうせ戻るでしょ」 相場の終焉。 ー 2年米国債は@1%越え。|損切丸 (note.com) は危険。一種の思考停止であり「ほったらかし投資」や「ガチホ」に筆者は反対だ。毎日相場に向き合うのは疲れるし辛いが、リスクを取るとはそういう事。AIに勝手に「損切り」されて後で愚痴を言うより余程マシ。

 「売りから入るか」「買いから入るか」を考える時に大事なのが大局観。現在筆者の考え方の "土台" になっているのは:

 ①1964年(東京オリンピック)から20年以上に渡る「高度成長期」
 ②1990年代から20年以上続いた「デフレ」
 ③2016年以降世界はインフレ転換、その後20年は「インフレ」時代

 ①「借金」でさんざんいい思いをした「昭和世代」が②同じ事を続けて撃沈。代わりに「預金」でいい思いをした「平成世代」が今③「インフレ」で苦しんでいる「転換点」を間違えると苦しむばかりだ。

 2008年の「リーマンショック」以降中国の台頭で訪れた「ディス・インフレ」時代も、実は1京円近い「借金」で築かれた幻想の城「コロナ危機」を経た反動の結果がFRBによる+5%超の「世紀の利上げ」である。

 筆者も投資や相場で大きく儲かっている訳ではないが、 "土台" のお陰で大きな失敗もない。「預貯金」を極力減らして保険の長期一括支払い等「必要な支出」を前倒ししてきた事が地道に効いている。何も株やFXで派手に斬った張ったをするだけが「投資」ではない

 「円安」修正の流れだが、仮に@130円まで戻っても「インフレ」を終わらせる事にはならない。輸入品が安くなって生活上は一息つけるようになるだろうが、コアCPIが+3%を大きく割り込むことはないだろう。そう言う意味では日経平均は下げても深押しはなさそう

 今の「インフレ」は「戦争」や「円安」によるいわゆる "コストプッシュ" ではなく、あくまで「人手不足」が主因アメリカに2年遅れの日本の「賃上げ」はむしろこれからであり、このトレンドはそう簡単には消えない。モノの値段が50%以上「人件費」(  参照)である以上、「デフレ」期のように「値下げ」を待つばかりでは暮らし向きは改善しない

 モノの「値段」って何だろう? ー 「卵」価格高騰に思う。|損切丸 (note.com)

 ドル円のトレーダーは「金利差」というニンジンを目の前にぶら下げられている状態で、目先の「お金」に惹かれるのもわからないではない。だがそこばかりに気を取られていると掘ってある「穴」に気が付かない。

 ”みんなに聞いて10人中6人が買いなら買うが、8人を超えたら売る”

 あるFXのベテラントレーダーが教えてくれたが言い得て妙。今のドル円は "8人を超えた状態" 。1998年の「ロシアのデフォルト」のような大事件がないので3日で▼25円も急落はしないが、その分相場はかえって厄介「キャリートレード」は万能ではない。まだまだ紆余曲折ありそうだが心してかかりたい。次の事件は日銀の「利上げ」かもしれない。

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