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降って湧いた「円高」(続報)。ー "成功体験” の威力。

 ドル円が急激に落ちたことから緊張感を持って相場を見つめていたが、まあ「円売り」がしぶとい、しぶとい@147円台半ばでかなりもみ合っていたが、昨日(11/21)結局「円売り」が勝り@148円台まで戻している。

 やはりこの2年間の "成功体験” の威力は凄まじい。とにかく落ちた所を拾って拾って「キャリートレード」を続けた側が財を成してきた。これは昭和の「不動産神話」然り、「バブル」然り、最近ではビットコイン(BTC)もそうだが、 ”おいしい体験” はそう簡単に忘れられない(もっとも最終的に財を成せるかどうかは中長期的に見る必要はある)。

 テクニカルにいうと、チャートの形は「押し目買い」の上昇波動から「戻り売り」の下降波動に変形しつつある。今回の局面なら@147円半ばで「買い」を仕込んだ向きがどこで売ってくるか。このサイクルが短期化して「利食い幅」が縮小するようだと「売り」転換になる。

 筆者が1つ引っ掛かっているのが「日本金融村」の変節だ。

 10月のYCC柔軟化以降、JGB(日本国債)「売り」に回っていた国内勢がここにきて突如変節、猛烈に買い戻している特に酷いのが20~30年債で主要な買い手である生損保が動いている模様。30年JGBなどは昨年12月にYCC上限を@0.50%に引上げた時より利回りが低い

 この動きは実は先週ぐらいから起き始めており、今回の降って湧いた「円高」のせいではない。やはり解散・選挙の可能性が消滅した影響が大きい

 財務官が「何でもやる」と宣言した通り、現政権を維持したい財務省は「利上げ」+「ドル売り介入」で「円安」を是正する解散戦略を描いていたはず。それが突然の「減税」宣言から蜜月時代は終わり、首相はハシゴを外されてしまった。この辺りの詳細な情報は間違いなく「日本金融村」に伝播しており、現在の猛烈なJGB買いに繋がっている。つまり「利上げ」「介入」の札は一旦取り下げられている可能性が高い。

 輸出企業中心のK団連も「円安」歓迎だし、1,200兆円ものJGBの利払いをしなければいない財務省は「利上げ」を嫌がっている現状維持で困るのは国民であって、彼らトップエリートには何ら問題は無い。そういう人種。

 「日本はアメリカの金融政策に振り回されている」

 某テレビTの解説者が今回の「円高」でこんな事を言い放っていたが認識違いも甚だしい。ユーロやポンド、あるいはウォンと「円」を比較して見ればはっきりするが現在は「円」の独歩安他国は「インフレ」に合わせて「利上げ」しているのに何もしない日銀が犯人なのは明らか。つまり「日本発の円安」だ。2021年2月の「国債無制限指値オペ」に始まり、代った植田総裁が「金融緩和」を連発した事から▼30円以上も「円安」が進んでいる。

 *「円安」という ”黒船” で変化の兆しが見えてきたのは喜ばしいが、例えばこれで選挙をしても何も変わらなかった時はちょっと怖ろしい。真剣に「アルゼンチン化」「トルコ化」を考えなければいけなくなる。

 最近はやっと「社会保障費」「保険料負担」が注目され、本当は何が生活を苦しめているのか、みんな気付き始めている。メディアは「医師会 vs 財務省」という絵を描きたいようだがこれは目眩まし。筆者には身の周りに何人も医療関係者がいるが、彼らは本当に勤勉で大変な仕事を負っている。看護婦さんも含め「お給料」は上げて然るべきだ。問題はそれを国が丸抱えしていて「インフレ」に対応出来ない点。医療費の半分でも自己負担に戻せばその分「値上げ」が出来るようになる、つまり「お給料」を上げられる高齢者という大票田を守りたい政治がここに手を入れないことから様々な所に軋みが生じている。「薬不足問題」も同根だ。

 「結局 ”円高” が ”円安” を呼ぶ」

 20年程前、筆者がロンドンのオフサイトミーティングで「円」についてこういうプレゼンをした。みんなキョトンとしていたが、今なら理解して貰えるだろう。自国製品を他国に輸出すると貿易黒字でどうしても「通貨高」になる。そうすると自国生産が割高になり工場を海外に移す。結果逆に「通貨安」になる。これは欧米も通った道で今の「円安」も全く同じ現象だ。

 「国債無制限指値オペ」は完全に蛇足だったが、いずれにしろ今度は「 ”円安” が ”円高” を呼ぶ」

 思えば「イギリス病」の時のポンドも滅茶苦茶に売られたが、結果として ”鉄の女” サッチャーが登場して大ナタを振るった。政治体制など何かとイギリスを参考にしてきた日本も程度の差こそあれ、これに倣うと筆者は想定している。 "痛み" は伴うが「アルゼンチン化」「トルコ化」よりははるかにマシ。日本人として期待も込めて。

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