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続・「危機」が招く「ドル不足」と「クレジット・クランチ」(信用収縮)。ー 忍び寄る「デフォルト」の足音。

 「危機」が招く「ドル不足」と「クレジット・クランチ」(信用収縮)。|損切丸|note の続編として。

 "スリランカ、「デフォルト」不可避の様相-前日就任の財務相辞任"

 ”7月償還ドル建債は1ドル当たり@59セント-2020年5月以来の安値”
 =金利計算:@164%!(3ヶ月残存。あくまで元金が戻る前提)

 渦中の軍事大国の「デフォルト」(債務不履行)が喧しいが、思わぬ所で "噴火" が起きそう。財務状況が悪い事で知られれていたスリランカである。

 やはり引金は「インフレ」食料品のインフレ率は+25%を超え「お金」のあるなし関係なく日用品は手に入らず、病院は医薬品不足で治療が出来なくなった。物価の高騰、生活必需品の不足、大規模な停電など国民が最低限の生活すら維持できない状況が起こり、反政府の暴動が各地で勃発。4/1に政府が「非常事態宣言」を出すに至っている。大統領、首相を除く26人の閣僚が全員辞任し、財務相についたばかりの大統領の弟もたった1日で辞任。混乱を極めている。

 ここで大事なのが  "「お金」のあるなし関係なく" の部分。ここで言う「お金」とは現地通貨「スリランカ・ルピー」の事であり、真に必要なのは「ドル」中国「一帯一路」で ”高利” のドル融資を受けてきたが2017年に債務返済に行き詰まり、南部ハンバントータ港の権益の大部分を中国側に99年間貸与することで合意した経緯がある。

 このように「デフォルト」スリランカに限らず、*体力の無い小国からドミノ倒しのように起きる。そしていつも問題になるのがFRBの「利上げ」局面で顕在化する「ドル不足」

 過去には1994年の「メキシコ通貨危機」1998年「アジア通貨危機」が代表的だが、直近ではインフレ率が一時+100万%を超えたベネズエラ3月CPIが+61.14%(2月+54.44%)に上昇したトルコ、その他レバノンアルゼンチンなどもスリランカと似た状態と考えていい。「デフォルト」するかどうかは国家体力の差でしかない。

 国家企業も、「デフォルト」の最大要因は「身の丈に合わない借金」いつも足りないのは主要通貨「ドル」であり、特に ”高利” で借りていると破綻が早まる複利カーブ ↓ を見て貰えばわかるが、金利が上がるほど負担は累乗的に増加する。+10%を超える借金ではどんな事業もほとんど回らない。まさに「ウシジマ君」「カイジ」の世界。

 ただ「金利」は、ガン!と何かで叩かれるような衝撃ではなく、毎日少しずつ ”毒” を盛られて弱っていくので、症状の悪化に気が付きにくい。だから余計に質が悪い「悪魔」は静かに忍び寄る。- インフレ編。|損切丸|note ということ。「インフレ」は「お金」を吸い上げる

 さて「デフォルト」騒ぎの渦中にある例の専制国家だが、通貨防衛のために+20%に「利上げ」し、「ドル」の回廊はほとんど塞がれた状態。おまけに戦争でミサイルや戦車とともに兆円単位の「お金」を浪費。かなりしんどいのは間違いない。「ルーブルで決済しろ!」は「ドルが足りない!」と同義に聞こえる。ただ、さすがにGDP世界12位の国なので、そう簡単には ”逝かない” 。今後もあれやこれやと面倒くさいことを言って粘るだろう。

 今回は ”SWIFT攻撃” が ”経済の核兵器” などと揶揄されたが、本当の "破壊兵器" は「ドルの利上げ」だ。今回のスリランカの件もそうだが、その威力は全世界に波及する。その事が判っているからFRBも2021年前半までは「インフレは一時的」などと言い訳をしてグズグズ「利上げ」を遅らせてきたが、いよいよ「インフレ」が真性になりケツに火がついた。火事の消火作業に似ているが、対応が遅れるほど ”鎮火” は難しくなる

 だがここに来て「戦争」が局面を大きく変えつつある「利上げ」が武器として有効に使えるようになったからだ。「覇権争い」のためなら ”毒” の量を遠慮する必要は無い「借金過多」なのは中国も一緒であり、大っぴらに多量の ”毒” を盛れば、不動産会社などいずれ渇水で干上がる

 2021年後半以降現在に至るまでの米国債市場を見ていると、2021前半までは見られた「金利上昇」に対する "ためらい" = 一時的な金利低下、が一切なくなっている。この状況なら5,6月のFOMCでは連続して+0.5%利上げが濃厚立場を同じくする欧州が「利上げ」で足並みを揃えるのは当然欧米の国債金利は猛烈に上昇している。ここで対応を誤れば彼らの覇権は崩れ去ってしまうのだから。

 こうなるとドル金利上昇に伴って市場に流通するドルが減少=「クレジット・クランチ」するため、残念ながらスリランカのように中国から ”高利” の借金をしている国では「デフォルト」が頻発することになるだろう。中国自身、不良債権問題も抱え首が回らなくなっており、もはや他国を援助する余裕はないスリランカの港湾利権同様、取る物を取ったらサヨウナラ

 ある意味「円安」もその被害の一部だが、不思議なのはこれだけ安全保障政策で欧米に同調しているのに、金融政策で "相乗り" しない不自然さ。確かに「円」が必要な国はほとんどないので「武器」にはなり得ないが、「円安」で失われる国益を考慮すれば同調しない理由もない「日銀総裁+財務省」のタッグが必死に抵抗しているように見えるが、与党にも「利上げ」論が浮上しつつあるようだし、案外「変節」は近い。期待も込めて。

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