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「分断」に向かう世界 Ⅳ。ー 「上下」に真っ二つに割れる世界。

 「分断」に向かう世界。 ー 為替レートが示唆する ”パラレルワールド” 。|損切丸|note 「分断」に向かう世界 Ⅱ。ー 「新・鉄のカーテン」とマーケットの「二重化」。|損切丸|note 「分断」に向かう世界 Ⅲ。ー 金利から見る「ドルからちぎれた経済圏」。|損切丸|note から続編。

 これまでは「米中断裂」による、いわゆる「東西分断」に焦点を当ててきたが、今回は「インフレ」を起点とする「上下分断」について書いてみる。

 「景気が良くないのに日経平均が上がるのはおかしい!」

 こういう言説をよく目にする。う~ん...。理屈が通っているようで、実は正しくない。それは日経平均 ≠ 日本経済だから。ご存知のように日経平均株価は高い基準を満たしたエリート企業の総合指数NIKKEI 225なら選りすぐりの225社がノミネートされている。日本経済の屋台骨を支えているのは事実だが、その他大勢の零細・中小企業群の状況を象徴する訳ではない

 前稿 アメリカの「インフレ」の正体。|損切丸|note でアメリカの「インフレ」の ”実地調査” について書いたが、1つ感じた事がある

 物価の上昇で一般庶民の生活は苦しくなっており、いつもの景気回復時のようにパーッと「お金」を使うような開放感もなく、観光客もまだまばら。「金利」が上がっているといっても日本同様「回復感」が感じられない「実質賃金」=「賃金上昇」ー「物価上昇」の低下が影を落としており、  ”スタグフレーション” とでも呼べる状況だ。

 だが意外にもアメリカ全体に悲壮感はない。それはなぜか。

 やはり長期に渡る株式投資による膨大な「貯え」が大きい。その額、時価総額で約40兆ドル≓5,500兆円(除.固定株)。加えて*不動産投資では地価の上昇に加え家賃収入が増加「利上げ」のお陰で「お金」にも金利が付くようになった。ドルは他通貨に対して軒並み+10~20%上昇しており、米国の富裕層=「お金持ち」は「インフレ」には備えが出来ているのである。

 *日本では家賃や金利はアメリカほど上昇しておらず、「お金持ち」の懐はそれ程潤っていない。だが、その分「インフレ」は穏やか。株価や地価が上昇していることも考えると、やはり「お金持ち」は安泰だ。表向きそんな事を言いふらせばこの国では「妬み」を買うので黙っているだけ。日本人ほど他人の事が気になって仕方がない人種も珍しい

 つまり「インフレ」は「上下」の分断を助長している「下」に比べ「上」には余裕がある。だから悲壮感は広がらない。

 「世界が100人の村だったら」ではないが、欧米も日本も10%に満たない「お金持ち」が大半の「富」を占有"みんな平等" のはずの「共産・社会主義」国家はもっと極端だ。 "置いてけぼり" の90%に苦難が集中し、世界各地で凶悪犯罪や暴動が増えている。国家レベルならスリランカのように貧困国のデフォルトが頻発、次はエジプトが危ないと言う。これの行き着く最終地点は「上下」をひっくり返す「革命」「戦争」になる。

 だからNYダウ日経平均は日米の経済状況をストレートに反映すると言うよりも、それぞれの「お金持ち」の状況を示していると考えるのが妥当だ。個人レベルで出来るのは、それに ”相乗り” するかどうか。

 本来、この「不公平感」を和らげるのが「金利」による「富」の再分配機能のはず。「インフレ」に見合う「金利」に調整すれば、「上下」に関係なく「金利」は公平に分配される。

 だが、「個人」の権利が重視されるアメリカでガンガン「利上げ」が進むのとは対照的に、日本ではこの「金利」を人為的に低く抑え込んでいるため、本来国民に流れるはずの「金利」が一方的に「国」に独占されている。まさに「理想の社会主義国」。もっとも2桁金利を強いられているブラジルやトルコに比べれば、 ”贅沢な悩み” なのかもしれない。

 とはいえ日本もそれ程余裕があるわけでもない

 「社会主義」的に "激変緩和措置" で電気・ガス等の「値上げ」を抑え込んできたが、これらが今秋から本格化する。我が家にも11月からの「値上げ」通知が届き、電気代が毎月+2,000円以上上がるのは必至欧米のようにエネルギーの価格変動が直接「値上げ」に結び付く仕組みではないので、その分今後は原油価格が急落しても「値下げ」は起きにくくなる。一体どちらがいいのか...。

 「原発については再稼働と新設を検討する」

 現政権も遂にこんな事を言い始めた。余程「利権」があるのだろう。「値上げ」を嫌う世論を着々と醸成していたようでもあるが、今後議論を呼ぶのは間違いない。ただ、地震等による事故リスクに加え、戦争やテロで狙われるリスクを防ぐためのコストも考慮すると、とても経済的リターンがあるとは思えないが...何かあればまた「エネルギー賦課金」のような不明な仕組みで「お金」を取られるのは我々国民であり、それでは当面の電気代は下がってもトータルでは国にむしられるだけ悪しき ”前例踏襲” である。

 やはり日本は「昭和」の「供給サイド」=企業側重視で行くのか…。それではいつまで経っても「個人」の創意工夫を生かすアメリカには追いつけないだろう。一時は ”Rising Sun" とまで呼ばれた日本地力はあるのだから "方向転換" さえ間違えなければ、大袈裟でなく日経平均も@3万円どころか@4万円、5万円も狙えるはずだが...。

 だが現状を見るとまだまだ「シルバーデモクラシー」の壁は厚い「インフレ」で固定給の年金暮らしはキツく、目の前の「お金」に窮して余裕がないのかもしれない。だが本来彼らにとってもかわいい ”孫” の生活を豊かにする "方向転換" は望ましいはずこのままでは本当に「姥捨山」行き「円安」はそのサインでもある。

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