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アメリカの「インフレ」の正体。

 日本の「インフレ」の正体。|損切丸|note のカウンター note. 

  "夏休みの自由研究"アメリカの「インフレ」の ”実地調査” (?)をしていて、すっかり「損切丸」をサボってしまった。その間にマーケットが株も為替も何だか凄いことになっている!

  ドル ≓ ユーロ ≓ ポンド > 円に?|損切丸|note どころかユーロは遂にパリティ(1ドル=1ユーロ)割れドル円より安いユーロ円を見るのはとても変な気分だし、昨日(8/26)はNYダウが▼1,000ドル超の下落。タイミングが良いというか、間が悪いというか...。

 「ガソリンの値段は3倍。今は1日16時間運転してるよ」

 アメリカのタクシーの運ちゃんとの会話だ。日本ではレギュラーガソリンが@120円から@170円に ”急騰” したと大騒ぎだが、そんなレベルじゃない。@120円が@400円になっちゃった、ていう話。そりゃータクシー代金も上がるわけで、40㎞ちょっとで$140≓@19,000円取られた。日本より+25%ぐらい割高だろうか。「円安」もかなり痛い

 だから16時間運転しないと生活が成り立たず、2つ、3つ仕事の掛け持ちもあるらしい。だがここにはアメリカらしい「インフレ」要因が存在する。

 チップ(TIP)制度である。

 苦手な日本人も多いが、タクシーや飲食店では+15~20%ぐらいが相場。   
  のタクシー代自体は$120だが、重い荷物を持って貰ったりすれば+$20は当たり前。利用者にしてみれば+20%の税金を追加で払わされているのと一緒で金額が大きくなる程負担=「インフレ」が増す

 だがここで税金とチップの大きな違いに気付く。前者では「お金」が国に入るのに対し、後者は労働者の "懐" に入る。そこには*"どんな「労働」にも必ず「対価」が発生する" という米国流の「お金」の哲学を感じる。

  "Is everything OK? " (お料理大丈夫ですか?)アメリカでそれなりのレストランで食事をすると、しつこいほどこう声をかけられる。これは何も店員の愛想がいいとかいう問題ではない。自分達のサービス対価を上げて、結果としてチップの額を上げようという立派な仕事だ。「スマイルはタダ」なんてCMが日本にはあったが、アメリカは「有料」ということ。

 今回のドライバーはフィリピンからの出稼ぎだったが、「なるほど」と思ったのは「円安」ほどではないにしろペソに対しても「ドル高」が進んでいるわけで、アメリカでドルをガッポリ稼いで本国の家族に仕送りしてやればかなり喜ばれる16時間も働けるという事は、それだけ仕事があるということであり、非常に合理的な選択だ。

 これが今の「ドル高」の実態。よく「FRBの利上げで "金利差" が開いてドル高」と言うが、実は正しくない「金利」はあくまで「物価」との兼ね合い、つまり「金利 ー 物価=実質金利」を評価する。その観点からは、10年JGB(日本国債)の「実質金利」はアメリカ、ドイツより遙かに高い

 では今の「ドル高」の原動力は何か。それは「需要の強さ」であり、その根底にある「人手不足」に尽きる何せアメリカはベビーブーマー▼4,000万人の引退という ”大穴” が開いたまま。だからフィリピンなど国外から出稼ぎが殺到する。これが今の「ドル高」の正体である。

 この話は「円安」で苦しむ日本人にも1つのヒントを与えてくれる。例えば「英国のトラックドライバーの年収は1,500万円以上」なんて話があったが、**「日本は30年間の給料が上がらなくて酷い!」と嘆くならイギリスに行ってトラックを運転すればいい。英語もそれ程必要ではなかろう。

 **日本でも上位大学の卒業生が外資系のコンサルなどに殺到するのも事情は同じ。欧米の大手企業なら大学新卒で年収$10万≓1,400万円なんてのはザラ。向こうも1,000万円ぐらいで優秀な若手を獲得できるなら悪くない「お金」が全てではない外資系が全てバラ色という訳ではないが(経験談。苦笑)、自分の「適正価値」を計るには有効な方法の1つだ。

 「お金」については 買い向かう「日本人」の「円安デモクラシー」 Ⅱ。ー 「円安は投機」の嘘。|損切丸|note という note. も書いたが、「人」についても同じ事が言える

 日銀が「金融緩和を継続」なんて生ぬるいことを言っていられるのは、まだまだ「お金」「人」の ”脱・日本” が進まないから。実は本邦企業も政府・財務省もこの ”脱・日本” を怖れている。もしそうなれば「みんな仲良く+3%の賃上げ」などと言っていられなくなるアメリカ程ではないにしろ、日本も「団塊」▼800万人という ”穴” が開いているのだから。

 「日本は給料が上がらない」「政府は何とかしろ!」

 こういう ”愚痴” ばかりを垂れ流すメディアに同調するのは、むしろ彼らの思う壺 ”愚痴” を言う」は「依存している」と同義語周りを変えたければまず自分が変るしかないオバマ前・大統領"Change!" と言っていたが、その点は民主主義の先輩・アメリカに習うことも多い。さて「理想の社会主義国」日本よ、一体どこへ行く...。

 アメリカに話を戻すと、パウエル議長や他のFRB理事からもようやく ”まともな発言” が出始めた。曰く「4%以上の金利が必要」。今回の ”実地調査” の結果も踏まえ、筆者も全く同感だ。***3%程度の金利で今の「インフレ」を抑え込むのは無理NYダウが▼1,000ドル下落したといってもまだ2020年の終値を上回る「利上げ」を止める理由にはなるまい

 ***1990年代「ソ連崩壊」→「デタント」(東西融和)で中国を中心としたグローバリゼーションが進み、アメリカの潜在成長率 ≓ 物価上昇率は@3.5%から@2.0~2.5%に低下。その果実として「ディス・インフレ」「低金利経済」を謳歌してきた。だが今起きている事はその真逆。加えて人口動態による「人手不足」が加われば、いわゆる中立金利が@4.0~4.5%というのは極めて合理的な見立てだろう。我々は今その渦中にある。

 筆者の認識では、有力投資家≓「お金持ち」ほど「金利」が上がり始めた2020~2021年にかけて株を売却して手元現金を増やしていた。だから「インフレ」も実は痛くも痒くもない。むしろ不動産投資の家賃や国債・社債金利の上昇で「収入」は増加しており "お釣り" がくるくらいだ。

 日本人の話をすれば、海外や外資系で働くには向き不向きもあり、「インフレ」「賃金上昇」が日本に向かうのを待つのも1つの手ではある。ただその場合でも政府や企業に要求ばかりするのは止めて、自分で出来る事から手掛けていくのが大事。そうすれば ”愚痴” は減る

 国の形を変える方法は「選挙」だけではない今までの ”逆回転” を ”順回転” に変えるには、実は一人一人の「行動変化」が必要アメリカと敵対して欧米で職を得るのが難しくなっている国々に比べれば、「円安」等日本人の「条件」はかなり良い。実はチャンスはその辺にゴロゴロ転がっているのだが、多くの人は見えていないか、見ようとしていないだけなのである。


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