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情報の「読み方」「使い方」。ー 時代は「大手」から「個」へ。

 昨年のトヨタの株主総会での豊田社長の発言:

 (メディアは) "ロバを連れながら老夫婦が歩いていると「ロバが居るのにロバに乗らないのか?」と批判し、
 主人がロバに乗り、奥様が歩いていると「威張った旦那だ!」と批判し、
 奥様が乗っていると「あの旦那は奥さんに頭が上がらない!」と批判し、
 夫婦揃ってロバに乗ると「ロバが可哀想だ!」と批判する"

 エジプト民話 "ゴハおじさんのとんち話" からの引用のようだが、『言論の自由』の名のもとに何をやっても批判する大手メディアを暗に批判。それで自ら「トヨタイムズ」を立ち上げて発信しているという事のようだ。

 これも時代なのだろう。

 「お金」を集めて企業に「融資」していた銀行同様、「情報」を集約して好きなように "加工" して垂れ流していたテレビ等の大手メディア ”変革の波” にさらされている。銀行が株・債券発行による「直接金融」クラウドファンディングに仕事を奪われたように、大手メディアSNS等に取って変わられようとしている。

 皮肉にもどちらも「高給取り」。銀行も今や年収一千万円は難しくなりつつある(インフレで「お金」の価値自体も下落)。*テレビCMを ”高値” で牛耳ってきた大手広告代理店も、最近は今回の東京オリンピックを含め良くないニュースばかりだ。早晩賃金レベルの是正は避けられまい。

 日中家にいてテレビを付けていると「これ、何のCM?」という事が増えた。見たことも聞いたこともないような会社がズラリ。それでなくともテレビCMはIT企業とゲーム会社に占有されつつあるのに、よほど広告料が下がっているのだろう。これをベースに作られる民放番組の質の低下は目を覆わんばかり。安易に同じタレントをひな壇に並べたバラエティ番組は、さすがに「テレビ世代」の筆者でも食傷気味。これでは若年層が見る訳がない。

 これはマーケットも同様。蟻に倒される象 ↓ (1/28稿)も起きつつあり、 ”相場付” もかなり変化株、FX もネット取引が主流になっており、大手の銀行・証券会社がコントロールできる時代は終わりつつある

 「損切丸」は投資銀行での経験から、一般には見え難い「お金持ちの理屈」を紹介する事が多かったが、それもこうやって note. 等個人レベルで共有されるようになると、**もはや象が蟻に必ず勝つとは言い切れない

 **思い出すのは「先物相場」の変遷。筆者が駆出しでドル短期金利先物を手掛けた頃は、ほとんどの邦銀が何度やっても GxxSxx とか MxxSxx とか大手米投資銀行に勝てなかった。今思えば単に怯えていたのだろう。 "見せ板" (売買するつもりもないのに大量の注文を出しておく行為)など、彼らの「手口」を学習するにつれ、米銀が "絶対" ではないことを知る。そうなると今度は邦銀が ”逆襲” し、立場が逆になることも起き始めた。

 「多数決」で決まる場合が多い株や FX では ”蟻の集団” が象を倒すことはままある。そんな中 "異光" を放つのが「金利」だ。マーケットの中で唯一「多数決」が通用しない世界。例え1人対100万人でも1人が勝つことがままある "象" も "蟻" も関係ない

 2つのポイントは:

 ①政策金利を中央銀行が決める

 ②「金利」に「信用リスク」が内包される

 だからや FX と違ってマネーマーケットは e-commerce (電子取引)に移行できなかった。いくら AI が発達してもこの部分はどうしても「泥臭い人間臭さ」が残る。「信用リスク」もマシーンが対応しにくい部分だ。

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 それ故に情報の「読み方」「使い方」は「金利」において決定的に重要になる。特に①中央銀行の政策金利決定については「どれだけ "同じ考え" を共有できるか」が勝敗の分かれ目*** ”読み違え” は致命傷になる。

 ***よく金利相場でありがちな "失敗" が「中央銀行は間違っている」という勝手な思い込み。勘違いしてはいけないのは、どんな指標が出ようと政策金利を決定するのは中銀であってトレーダーではないこと。最近なら「米CPIが@+5.4%で商品市場が高騰しているのだからFRBは利上げすべき」と "決めつけて" 米国債ショートで入ったが、パウエル議長がぐずぐずしているうちに買い戻しを迫られたケース。いくら「パウエル議長は間違ってる!」と叫んだところで決めるのは彼。どれだけ議長の考えに寄り添えるか。それが勝負の分かれ目になる。

 不確実姓が増す中、様々なトレーダーが「金利」を重視するのは、この「多数決」でない「絶対感」。だから「損切丸」でも ”読み違え” がないよう、極力FRBや日銀に "寄り添って"「情報」を読み解くよう心掛けている

 今後も少しでも「絶対感」が伝えられれば良いのだが。自戒も込めて。

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