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やっぱり "不気味" な中国国債Ⅱ - また上がり始めた国債と社債金利。

 やっぱり不気味な中国国債の金利低下(5/21 ↓ )だが、10年は@3.08%辺りを底に再び@3.14%まで上昇。根拠が不明で気持ち悪い。

 やはり気になるのは2018年以降急増している社債のデフォルト ↓ 

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 中国本土では今後1年間の社債償還額が実に約1.3兆ドル(約142兆円)に及ぶ。アメリカを+30%、欧州を+63%も上回る巨額である。 ↓ 

中国社債償還

 そして気掛かりなのがその ”中身” デフォルトを警戒して投資家が期間の長い債券を嫌っている事もあるようだが、社債の平均デュレーション(Duration、償還期間)が急速に短期化している。 ↓

中国社債償還期日

 社債の発行体としては、自社が ”やばい” 時は多少コストがかかっても長期資金を調達するのが「資金繰り」の鉄則。ところが "危ない会社" ほど目先の利益にこだわってコストの安い「短期調達」に傾斜する 投資家の立場で考えれば明白だが "危ない会社" からはいつでも逃げられるようにしておきたいもの。はっきりいって*「資金繰りの短期化」は危険な兆候だ。

 *リーマンショック前の大手欧米銀がこの「短期調達」に極端に傾斜。もっともこれは ”やばい” からではなく、単純に「儲け」を増やすため自ら行ったもの。結果的に自分達のデフォルトリスクを高めてしまった。その後金融当局から「長期調達」を強制され(筆者もサムライ債発行などの実務で直面)、各行年間数千億円にも及ぶ「保険料」を払う結果となった。

 注目が集まっている中国国有の不良債権受け皿会社「華融資産管理」は、中国工商銀行の支援を受けて4/27にようやくオフショアの6億シンガポール・ドル(約490億円)を償還したが、まだまだ綱渡りの状態。社債は激しくアップダウンを繰り返している ↓ 

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 「中国の "バブル崩壊" の話は聞き飽きたよ」

 ごもっとも(笑)。だが「悪魔」は静かに忍び寄る。(2020.12.02. ↓ )

 社債期間の短期化のグラフ ↑ を見ると、2016年以降5年かけてじわじわと事態が悪化していることがわかる。2000年台の邦銀の「金融危機」の時も1990年台から既に「資金繰り」担当者、特にドル等の外貨には危機感があったし(筆者も実際に担当)、リーマンショックの時も2006年頃からマーケットでは異常が見られた。一般企業もそうだが「資金繰り」が悪化しても数ヶ月で倒産、なんてことにはならない。大概数年はもがくものだ。

 そもそも為替市場で人民元高が進む中、国債金利が再度上昇するのは理屈としては矛盾する。資本が海外に流出している訳でもなく、少なくとも輸出が増えてドルの蓄積が国内で進んでいるなら「資金繰り」が改善して金利は下がるのが道理だ。そこで "嫌な想定" が頭をかすめる:

 「それでもお金が足りないんじゃないのか...」

 中国人民銀行や国内の民間銀行が社債の償還を支援といっても、ああいう体制の国だから「お財布」は一緒のはず「資金繰り」が立たなくなれば、取り得る方法は2択:

 ①社債償還はせずにデフォルトさせる

 ②「インフレ」覚悟で通貨をガンガン発行して「資金繰り」を回す

 オフショア投資家の中国社債保有額が限定的であることを踏まえると、負担はほとんど中国国民に向かう今年7/1に中国共産党創立100年、来年に北京オリンピック開催を控えている事を考えると、現状①の選択はまず考えられない。最低でも来年以降に先延ばしにするだろう。”面子" を重んじるお国柄長期政権を目論んでいる事に鑑みれば、やはり②が有力だ。

 今回の中国国債金利の再上昇が②の ”プロローグ(序章)” だとするとかなり気持ち悪い。マーケットで懸念される「急変動」は:

 ①人民元金利の急騰(インフレ)

 ②FXでの極端な人民元高(金利上昇)あるいは人民元安(インフレ)

 ③中国株の暴落(人民元高・人民元安どちらでも)

 筆者も推理小説を最後の方から読んでしまうせっかちな人間だが(笑)、この件はもう少し腰を落としてじっくり見ていきたい。何かと情報の精度が問われる市場ではあるが「金利」は嘘をつかない。事態の進捗に合わせて「事実」を伝えてくれるはず。そして* ”終わり” は突然訪れるだろう。

 *「クラッシュ」を想定すると、どうしても映画「タイタニック」を思い出してしまう。圧巻だったのは船の沈没シーン船の真ん中がバキッと折れて沈み始める時、一度船首と船尾が上に上がる。これがどうも株などの「ラストラリー」と印象が被る。結局最後に船は全部海に沈む世界恐慌の時も大暴落の前は長い買い相場だった。「インフレ」=「タイタニック」とすると、今回はどんなシーンになるのか。一大 "スペクタクル" である。

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