見出し画像

“一体感” なき「熱狂」ー 相次ぐ「危機」は人に「行動変容」をもたらすか。

 NYダウナスダック指数を後追いするようにドイツのDAX指数も過去最高値を更新 ↑(標題添付チャート)。33年間で@+1,247.57%=年率@37.8%運用成績」は文句の付けようがない

 だがこれだけの株の高騰にも関わらず「熱狂」を感じない。 "投資銀行村" 「ボーナスが増えた」など浮かれた話もなく “一体感” に欠ける

 なぜなのだろう。

 元・金利トレーダーとして殊更に思うのはやはり金利が上がらないから。今 "マーケット最大の謎" と化している「米国債金利の低下」が原因。

画像1

 市場間の「資金移動」を考えるとこれだけ株が上がれば「米国債」→「株式市場」で金利は上がるはず。だが3月以降株価上昇にも関わらず「米国債」にも資金流入が続く。アメリカで銀行預金が増えているというデータもあり( ↓ ご参照)、今までに無い ”変化” が起きている。

 「損切丸」では2つの "仮説" を立ててみた:

 1.相次ぐ「危機」による「行動変容」

 まずは「危機」の先輩である日本について。①「山一証券破綻」等に端を発した金融危機を経て「お金」がなくなる恐怖を味わった。これが「預金」を溜込む「行動変容」のきっかけとなり「デフレ」の起点になった。

 その後も②リーマンショック③東北大震災「危機」が続き、今回の④「コロナ危機」。特別融資を受けても安易に使わず、ひたすら「お金」を溜込む「行動様式」は今も続く7月末時点で優に500兆円を上回る「日銀当座預金」 ↓ がこれを証明している。

画像2

 実際「無担保コールO/N金利」は低下基調に転じており ↓ これでは日本国債の金利は上がりようがない

画像3

 ではアメリカはどうか?古くは1929年の「世界恐慌」から「ブラックマンデー」「リーマンショック」相次ぐ金融危機が株価の暴落を招いたが、その度に力強く復活。現在の「株帝国・アメリカ」を築いてきた。

 だが今回の「コロナ危機」は勝手が違う過去の株価暴落は基本 ”銀行危機” であり、FRBが金融政策で対応すれば修復出来た。

 だが感染症に「お金」は効かない

 実際61万人もの命が奪われ、加えて経済が強制的に止まり「お金がなくなる恐怖」が多くの米国民に強く刷り込まれた中・低所得層中心に「預金」を溜め込む「行動変容」が起きても不思議ではない。

 *日本では政府が「中等症患者の自宅療養」を発表して大騒ぎになっているが、国民皆保険ではないアメリカやイギリスでは既に過酷な ”トリアージ” =「お金」のない層の切り捨てが行われていた。宗教など死生観の違いもあろうが、数十万人が亡くなるというのは「医療崩壊」そのものだ。

 2.株価の「高値恐怖症」

 いかに「株帝国・アメリカ」とはいえ、10年で5倍になった株価はさすがに行き過ぎの感もある。FRBがテーパリングに踏み出さないため「金余り」が続き、株と米国債を同時に持ち上げる "ミニ・流動性相場" が起きている。「お金持ち」を中心に株価の「高値恐怖症」が出て当然で、NYダウは「フェニックス(不死鳥)」なのか、それとも「イカロスの翼」か。↓ (7/24稿)迷いが生じている。

 中・低所得層は「預金」を溜込み「お金持ち」は動かない ー このままだと商売にならないファンドや投資銀行は「相場」作りに躍起余った「お金」をビットコイン、木材、銅、原油等に次々と投入 ”ミニ・バブル” を生み出した。だが所詮流動性の低いニッチ(隙間)市場。本流にはなり得ない。カジノではないが、ここでは「損する人」を創り出すのが主目的だ。

 やむを得ず「余り金」が米国債に向かっているのが現状トレーダーは段々やれることがなくなってきているはずで、いくら株が上がっても "先" が見通せない。(筆者同様)**「何ともやりきれない気持ち」だろう。

 **何かに似た感情だと思ったが、今の「無観客の東京オリンピック」、あるいは「配信ライブ」。いかに「運用成績」≓「競技」「演奏」が素晴らしくても心から喜べない感じだ。市場参加者 ≓ 競技者、演者が浮かれないのも “一体感” が得られないからだろう。

 「貧富の差」BLM(Black Lives Matter)や「コロナ危機」で更に "分断" 「本土」を初めて攻撃された「9・11」に続く今回の「コロナ敗戦」ベトナム戦争後のような「自信喪失」を米国民にもたらした。今までのような  「U.S.A.!U.S.A.!」 の “一体感” は生まれず、「日本化」≓「預金」溜込みの「行動変容」を促しているのかもしれない。

 量的に「お金」>「物」=「インフレ」見通しは 変わらない***マーケット全体を覆うこの「やりきれなさ」「投資」に理屈や計算は必要だが、所詮市場売買は人が行うものAIも人がプログラムしている以上、実は「人の気持ち」が一番大事だったりする。

 「低下する米国債金利」は「イカロスの翼」の象徴なのか...

 改めてその事を思い直している。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?